リヴァックスコラム

第24回 規制改革通知について(その3)

長岡 文明氏


今回は前回に引き続き、平成18年に発出された規制改革通知を見ていきましょう。
https://www.env.go.jp/hourei/11/000075.html
「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成17年3月25日閣議決定)において平成17年度中に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について

ここでは、1,「先行許可証」、2,「試験研究」、3,「許可申請手続きに係る書類の統一」の3つを掲げています。当コラムでは「試験研究」については、既に取り上げました。(詳しくは第十九回「実験・実証に関する通知について」でご確認ください。) 1,「先行許可証」と3,「許可申請手続きに係る書類の統一」については、ほとんど同じ事になりますので、合わせてコメントしていきたいと思います。

読者の皆さんの多くは、許可業者ではなく、排出事業者の立場であり、このテーマは無関係だと思う方もいるかもしれません。でも、排出事業者でもマニフェストの実績報告や、場外保管届出等で「法律は一つのはずなのに、なんで、行政は窓口毎に言うことが違うんだ。せめて提出書類位同じもので勘弁してよ。」って思われたことはありませんか?
これは、この「先行許可証」、「書類の統一」と共通するテーマなんです。

まぁ、国は度々、「国民の利便を図るため」「業務の軽減」ということで、「この業務は自治体に任せたよ」と言いながら、「法令で決まっているんだから」と自治体に押しつけてくる時がありますね。
まぁ、自治体も可能な限りは、その要望に応えようとはしているんです。ただ、自治体にも自治体の都合というものがあるんですね。
その一番は自治体の条例と指導要綱です。
法律は完璧ではありません。地方には地方にあった昔からのルールがあるんですね。たとえば、県外産廃搬入の事前協議や処理施設設置事前協議、法律では廃止された特管産廃責任者の届出、処理業、処理施設の年間処理実績報告、こういったルールがある。
そうなると、必要最低限のところは法律で規定されていても、「プラスアルファ」の書類が必要になる訳です。
このプラスアルファが、要求される側にとっては「余計なこと」「邪魔くさいこと」と感じるんだと思います。

また、その書類にはその書類特有の事情がある場合もあります。
たとえば、先行許可証ですが、典型的な要因としては「欠格要件」があります。
前の許可申請の時は欠格者じゃなかったかもしれないけど、次の申請の時まで、悪いことしていないとは限らない。だから、前の許可証を見せられただけで、あとは何も要らないし、審査もしないって訳にはいかない。
ちなみに、先行許可証というのは、現在はこの通知の時点よりも、さらに細かく省令で規定されたのですが、次のような制度です。

<先行許可証とは>
廃棄物処理法の「許可」は一つではない。収集運搬の許可、中間処理の許可。さらに「普通の」産業廃棄物の許可、特管産廃の許可。処理施設設置の許可に、都道府県が変われば、都道府県の許可。特に、処理業の許可は5年ごとの更新。何回も、何回も同じ書類を出して、何回も、何回も同じ審査を受けるのは無駄じゃないか。それだったら、既に許可を取得するときに、同じ書類を出して審査を受けて許可を取っているんだから、その許可証を次の許可申請の時に提示すればいいだけのことじゃないか。という趣旨の制度です。

ところがですよ、現在の「先行許可証」に関する規定がこちらなんです。

省令第9条の2第5項 5  都道府県知事は、申請者が法第十四条第一項 若しくは第六項 、第十四条の二第一項、第十四条の四第一項若しくは第六項、第十四条の五第一項、第十五条第一項又は第十五条の二の六第一項の規定による許可(平成十二年十月一日以降に受けた許可であつて、当該許可の日から起算して五年を経過しないもの(この項(第十条の九第二項、第十条の十二第二項及び第十条の二十二第二項において準用する場合を含む。)、第十条の四第五項(第十条の九第三項、第十条の十六第二項及び第十条の二十二第三項において準用する場合を含む。)及び第十一条第八項(第十二条の九第四項、第十二条の十一の十二第三項、第十二条の十一の十三第三項及び第十二条の十二第三項において準用する場合を含む。)の規定により別に受けた許可に係る許可証を提出して受けた許可を除く。)に限る。)を受けている場合は、第二項の規定にかかわらず、同項第九号から第十四号までに掲げる書類の全部又は一部に代えて、当該許可に係る許可証(許可の更新の申請の場合にあつては、当該許可に係るものを除く。)を提出させることができる。


どういう許可申請で、どういう状態なら「先行許可証でよい」かわかりますか?
しかも、この規定は「できる」規定なんです。つまり、都道府県が、「いや、うちは申請時点で本当に許可するに相応しい人物かどうかを、責任持って独自に審査するんだ。」と言えばそれまでなんです。

「書類の統一」にしても同じ事で、許可申請時には「事業計画」や「業務を適確に遂行できる能力」等の書類も添付書類として義務づけられています。A県の事業計画とB県の事業計画が同じとは限りませんし、ましてや「業務を適確に遂行できる能力」などは「何をして適確にできるか」の判断は、本来的には許可権限者の判断なるでしょう。それを「統一しなさい」という方が無理というものでしょうね。
それであれば、そもそも、廃棄物の許可制度を自治体毎とせずに「国一本」でやればよい話なのです。
まぁ、前回も書きましたが、「通知による運用で済ます」ということは、法令改正までは不必要ということで対処する、ということですから。
自治体も、許可業者さんや排出事業者さんを、わざと困らせてやろうと思って、やっている訳じゃないんです。是非、ご理解をってとこでしょうか。

最後になります。
「規制改革推進のための3か年計画(改定)」(平成20年3月25日閣議決定)において平成19年度に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について
平成二〇年三月三一日 環廃産発第〇八〇三三一〇〇一号


これは、日環センターの「廃棄物処理法の解説」でないと探せませんでした。
でも、わざわざ探して読むほどのことは、ありません。前述の「先行許可証」と「書類の統一」が進まないことから、再度、申し立てられ、環境省は、再度、自治体に対して申し入れをしたって形です。
それから以降も省令改正したり、会議の度に申し入れしているのですが、皆さまご存じの現状です。

さて、これで2年にわたりお付き合いいただいた「通知を読む」シリーズは終了です。
いかがでしたか?「通知って重要なんだ」と感じましたか?
それとも、「やっぱり、通知は通知。法律や政省令の比じゃないよ」と感じましたか?
結局のところ、根本はやはり法令です。法令に根拠を置かない「運用」は、やがて歪みが出てきて、たいていは長続きしません。
しかし、その「法令」をどのように「運用」したらよいのか、というレベルになると、途端に「通知」は威力を発揮します。
そして、最後の通知でも感じられたかと思いますが、実際に「運用」するのは、現場を預かる自治体です。自治体が納得しない「通知」は、いくら国が発出しても、大きな動きにはなりません。
法律はそう度々改正する訳にはいきません。小回りが利いて、不都合が起きないように、現状に合わせた「運用」が大切です。
皆さんも、これを機会に国や自治体が発出する「通知」に注目していただければと思います。
では、また、お目にかかる日まで。シーユーアゲイン(^.^)/~~~

 

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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