リヴァックスコラム

第20回 廃プラ処理の円滑化通知を読む その3

長岡 文明氏

前々回から令和元年に発出された「廃プラ処理の円滑化通知」を読んでみて、現在の日本の廃プラスチック類の状況を改めて見直しをしています。

プラ資源循環法も施行され1年が経過し、ようやく「製造・販売者自主回収認定」や「排出事業者自主回収認定」も行われたようなので、いい機会かなぁと思います。
前回は、廃プラスチック類の排出や処理の状況やそのトレンドなどを見てきています。

さて、BUNさん、今回はどんなお話しなんですか?

5.廃プラスチック類の受け皿

はい、今回は「通知」の次の部分を確認していきましょう。

これらの影響として、国内で処理される廃プラスチック類等の量が増大したことにより、国内の廃棄物処理施設が逼迫し、廃プラスチック類及び関連する廃棄物の処理に支障が生じているとの声が多くの産業廃棄物処理業者(以下「処理業者」という。)から寄せられている。

前回、国民一人当たりに換算すると日に200グラム程度の排出。
大した事ないんじゃないの?ってとこまででしたね。実際はどうなんですか?

前回は「大げさに捉えて、パニックになってもしょうがない」と思って、「国民一人当たり」って話はしましたが、そうは言っても国内で700万トンの廃プラスチック類が排出されている訳ですから、これを受け入れるための処理施設がなければ、世の中に廃プラスチック類が溢れてしまうことになる訳です。

リヴさんは日本国内に廃プラスチック類を受け入れる処理施設として、どんなものがどの程度あるか知ってるかな。

廃プラスチック類の処理施設となると、パッと思い浮かぶのは、やはり焼却炉かなぁ。でも、前回教わったけど、「減量」は23%しかなく、65%は「再生」だったよね。

廃プラスチック類で「再生」となると、洗浄後に破砕してペレットにするとか溶かし直して整形してパレットにする、なんて処理施設でしょうね。
それに「最終処分」は埋立ですよね。

正解。

廃プラスチック類に限ったことでは無いけど、廃棄物は中間処理、この中間処理を大きく分けるとリサイクル(再生)と焼却(減量)で、中間処理後の残渣物や中間処理出来ない物が最終処分、すなわち埋立に行くことになる。

ただ、統計上難しいのは処理施設によっては「廃プラスチック類」を処理しているのか「木くず」や「紙くず」も処理しているのかよく分からないものも多い。

たとえば?

焼却炉や最終処分場なんかそうだね。全処理能力を廃プラスチック類にあてている訳じゃ無い。でも、ある程度は推察できる。

どうやって?

これも同じく環境省の調査で毎年、処理施設の数、能力を公表しているんだ。
https://www.env.go.jp/content/000038862.pdf(令和2年度実績)

まず直接「廃プラスチック類」と明示している処理施設は次のものがある。
廃プラスチック類の破砕施設→2162施設
廃プラスチック類の焼却施設→692施設
廃プラスチック類以外の産業廃棄物も受け入れているが、
安定型処分場→952施設、管理型処分場→628施設といったところかな。

施設数がわかっても、これらの施設では受け入れ可能な量はわからないんじゃない?

正確なところはわからないけど、推察はできる。と言うのは、この施設は「要許可施設」だから小規模の施設は計上されていない。
廃プラスチック類の破砕施設で許可が必要になるのは、一日当たり5トン以上。
よって、最低でも5トン×2162施設×365日≓395万トン

へぇ、一年中休み無しで稼働している訳じゃ無いだろうけど、一方で、「5トン」は最小で見積もった能力。10トンで200日稼働としても同じ程度の量になるってことだね。

そうだねぇ。実際に稼働している処理施設を見ると大抵は20トン/日程度の能力は兼ね備えているようだね。

と言うことは、20トン×200日×2000施設=800万トンよね。
排出量700万トンあったとしても破砕施設だけで対応可能ってことにならない?

単純な計算、推計としては「そのとおり」。
実際にも、心配はしたけれども、日本国内に廃プラスチック類が溢れるって事態にはならなかった。でも、それは結果論で有り、後述するけど不安要素はあったんですよ。

気になるね。その「不安要素」は現在でも継続しているの?

その件は次に取り置きしておいて、とりあえず破砕施設以外の「受け皿」も確認しておきましょう。

えっと、じゃあ、焼却炉ですね。
焼却炉は692施設ってことだけど、この処理能力はどの程度なのかな。

許可対象の廃プラスチック類焼却施設の能力は「100キログラム以上」。0.1トンです。
ただ、現実的には廃プラスチック類専焼炉は少なく、たいていは木くずや紙くずなども一緒に燃やしている。また、廃棄物焼却炉はダイオキシン対策や排ガス測定等が義務付けられていて、こんなに小規模では採算が取れない。
そのため、実際に稼働している焼却炉は50トン以上のものが多いでしょうね。

50トンのうち2割だけ廃プラスチック類を焼却しているとすれば10トンね。
となると10トン×692施設×200日稼働≓140万トンといったところかな。

いい線だと思うよ。
前回示した環境省の統計データでも廃プラスチック類の処理のうち「減量」は排出量の23%だった。廃プラスチック類の「減量」と言えば、ほとんどは「焼却」だと思われる。
排出量が700万トンの23%は161万トン。ほぼほぼ合ってるね。

最後に最終処分だけど、これはさすがにわからないよ。

そうだねぇ。
最終処分場の能力は「重量」よりも「体積」が問題になる訳だし、どの程度圧縮されて埋め立てられているのかもわからないから「廃プラスチック類についての処理能力」と言われても推察することも難しいかも。
ただ、これも統計データで示しているんだけど
現在最終処分場の残存容量は安定型は5500万㎥、管理型は9900万㎥ってなってる。

廃プラスチック類の排出量は700万トンで最終処分の実績値は16%でしたよね。
あと、令和2年の時点では112万トン。「トン」と「㎥」の違いはあるし、廃プラスチック類の比重は軽い(小さい)とは思うけど、さすがに「余裕」だよね。

最終処分場は廃プラスチック類だけ受け入れている訳じゃ無いけど、
まぁ、明日明日どうなるってもんじゃないことはわかるね。

だとすると、さっきの話に戻るけど、いくら中国が輸入禁止したとしても、そんなに心配するほどのことはなかったんじゃない?

それでは、いよいよその話に移りますか。

6.受け皿の能力はあるのになぜ心配したのか

「通知」は、ここまで見てきた部分以降、いよいよ本題の「記」となって「第一 広域的な処理の円滑化のための手続等の合理化について」等、いろいろな懸念要素やその対応、協力要請等の話になるんだけど、そこはこのシリーズの「その1」で概要を見ましたね。

今回は「第六 使用済プラスチックの廃棄物該当性」について深入りして見てみよう。

第六 使用済プラスチックの廃棄物該当性
これまで有価物として輸出されてきた使用済プラスチックについても、外国政府の輸入規制の影響等により搬出先が確保できず、野積みの状態が継続している場合等においては、「行政処分の指針について」(平成30 年3月30 日付け環循規発第1803328 号環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課長通知)に基づき、廃棄物該当性を適正に判断されたいこと。
また、有価物と称して使用済プラスチックを搬入し、プラスチック原料等を製造している事業者がいる場合についても、当該製造工程が廃棄物の処理に当たらないか否かを改めて確認し、適切に対応されたいこと。

「これまで有価物として輸出されてきた使用済プラスチック」って書いてるから、前回検討したとおり、輸出されていたプラスチックは「有価物」であることが明白だね。

ところが、次に「野積みの状態が継続している場合等」は「適正に判断」しなさいって書いてある。これで、今までは有価物として扱ってきた「物」であっても、今後は廃棄物になる・・・かもしれないよってことだよね。

この問題を考えるとき、BUNさんはいつもこの図を使って説明しているんだ。

この図はリヴァックスコラムでも何回か見たね。

10円で原料を買ってきて手を加えて100円で出してやる。差額が90円有るから商売にはなる。しかし、これを「リサイクル」とは言わないだろう。これは単なる「加工業」。

じゃ、100円の処理料金をいただいて、たとえば木くずを持ってくる。焼却炉で燃やす。量はぐっと減る。でも、灰は残る。その灰を最終処分業者に引き取って貰う。量が減っているので10円で済んだ。差額が90円有るから商売にはなる。しかし、これは単なる「廃棄物処理業」であり、リサイクルとは言わない。

では、リサイクルとは?たとえば、40円の処理料金を頂き動植物性残渣を引き取ってくる。途中で発酵させて堆肥にして50円で売ってやる。

これこそリサイクルであるっていうBUNさんの「十八番(おはこ)」でしょ。

すごいね。よく覚えていたね。まぁ、それで「リサイクル」に注目すると判ることがある。

それも覚えているよ。リサイクルという限りは必須要件が2つある。
一つはインプットが廃棄物であること。
もう一つはアウトプットは有価物であること。
でしたね。

大正解。「通知」の廃プラスチック類問題もこの要因がとても大きかったんだ。

どういうこと?

それは・・・・長くなったので、それは次回のお楽しみってことにしましょうか。

<今回のまとめ>

  1. 現在(令和2年実績)日本国内には、廃プラスチック類の破砕施設→2162施設、廃プラスチック類の焼却施設→692施設設置されている。
  2. 廃プラスチック類の破砕施設の処理能力は、ざっと推察するに年間800万トン。
  3. 廃プラスチック類の排出量は年間700万トンであることから、計算上は、現存の破砕施設だけでも十分受け入れ可能と思われる。
  4. 加えて焼却施設や最終処分場でも廃プラスチック類は受け入れ可能なはず。
  5. ところが、「通知」では「外国政府での輸入規制」を心配している。