リヴァックスコラム

第16回 多量排出事業者通知

長岡 文明氏

今回取り上げる通知は「多量排出事業者」に関する通知です。
平成22年の廃棄物処理法改正から罰則が規定されたことでも、注目されましたので、ご存じの方も多いと思います。
一方で、「うちはそんなに多量の廃棄物は出ないから関係無いや」と最初から興味を持たない方も、ちょっと待ってください。
あまり量的には排出しない事業所にとっても、結構役に立つことも書いてあるので、まぁ、一度は目を通してみてもよいのでは。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について
そして、実質的な 「策定マニュアル」です。
さて、「そもそも」ですが、この「多量」という概念は、廃棄物処理法スタート当時からあったのですが、条文に登場するのは一般廃棄物の方だけだったんです。これは条項と表現は多少変わりましたが、今でもそのままの表現です。
 

第6条の2第5項  市町村長は、その区域内において事業活動に伴い多量の一般廃棄物を生ずる土地又は建物の占有者に対し、(当該一般廃棄物の減量に関する計画の作成、)当該一般廃棄物を運搬すべき場所及びその運搬の方法(その他必要な事項)を指示することができる。


ちなみに、現在の条文から括弧書きの部分を削除すると、昭和45年のスタート時の条文になります。
一般廃棄物に関しては、統括的には市町村の責務としていることから、受け皿となる市町村としては『多量のごみを出されちゃ困る』ということで、最初から条文に入っていたんでしょうね。
一方、産業廃棄物は、「排出者処理原則」ですから、「多くて困ったのなら、出す側が受け皿を整備するなり、自分たちで考える課題であり、法律で規定することではあるまい」との建て前があったのかもしれませんね。
ところが、日本全国で廃棄物が増えすぎ、溢れてしまって、国民全体の課題になってしまった。そこで、平成3年の廃棄物処理法大改正の時に、法律第1条「目的」を改正し、「排出の抑制」を追加し、併せて産業廃棄物排出者の責務を規定した第12条第5項(当時)に「知事は、事業活動に伴い多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者に対し、事業者に対して処理に関する計画を作成するよう指示することができる」、さらに平成9年の改正でこの文言に「産業廃棄物の減量」という文言を追加しました。
この平成9年改正の時の通知がこれです。長い通知ですが、この第2の2をご覧下さい。
http://www.env.go.jp/hourei/11/000496.html
この時点では、「多量」の定義もありませんし、計画策定は「法定」ではありません。
この通知の時期、平成の一桁台から10年代にかけての時期は日本全国で、不適正事案が相次ぎ、また、ダイオキシン騒動も加熱した時期です。そのため、多くの自治体では、その対応に追われ、とてもじゃないが「やってもいいし、やらなくてもいい」「やったほうがいい」レベルの「多量排出計画策定」の指導などは後回しにされ、策定している事業者はまだまだ少ない状況でした。

ただ長い目で見れば、廃棄物の総量を減らすことは、とても重要な課題でしたので、平成12年の法改正で、ついに現在の条文に改正されました。
この改正により「多量排出事業者」として、必ず計画を策定しなければならないレベルを、普通の産業廃棄物では年間1000トン以上、特管産廃では50トン以上と規定しました。
そして前回、平成22年の改正で、この法定計画を策定し報告しない「多量排出事業者」に対しての罰則として「20万円以下の過料」が新たに設けられました。
ちなみに、一般廃棄物の方は前述の通り「多量」の定義や、「法定計画」としての策定、報告などは法律では規定されていません。これは、一般廃棄物については市町村の自治事務であり、個々の市町村の置かれている状況が大きく違うことから、必要なら市町村が条例で規定すればいいでしょう、というスタンスだと思われます。
経緯を整理すると次のようになります。

昭和45年~平成3年  一般廃棄物にだけ「多量」の文言有り。
平成3年~平成9年   行政指導による任意の計画。
平成9年~平成12年  任意計画であるが、内容に「減量化」を盛り込むこと。
平成13~平成22年  法定計画。ただし、罰則無し。
平成23年~      法定計画。無策定・無報告は罰則の対象。

さて、罰則も盛り込まれた「多量排出事業者計画」ですが、オフィシャルな内容は前述の「策定マニュアル」のとおりです。今回はちょっと「ここだけの話」など。
と言っても、この計画を策定した方は、おそらく皆さん感じていることだけだと思います。
まず、この計画の対象(普通産廃1000トン、特管産廃50トン)になるのは「排出量である。」ということなんですね。
実は、この「排出量」ってわかっているようで、わからないことが多いんです。
たとえば、コンクリート殻などは、判りやすいですね。ビル1棟解体したら、300トンとかの話ですから、正確に○○キログラムなんてレベルまではわからないとしても、そんなに見当違いなことにはならない。
ところが、汚泥を排出する事業所は困るんです。たいてい汚泥を排出する事業所では、脱水機を設置していて、業者に処理委託するのは「脱水汚泥」なんです。
そりゃそうですよね。水分だぶだぶの状態じゃ、扱いにくいし、量だって膨大になる。だから「脱水」して処理を委託する。
でも、考えてみると「脱水」って、既に廃棄物の中間処理ですよね。
この「多量排出事業者計画」で記載しなければいけないのは、まずは「排出量」ですし、法律の規制を受ける「年間1000トン」という量も「排出量」なんです。
だから、「うちは業者への委託量は年間800トンで1000トン未満だから法定計画の対象外だな」などと思っていると、とんでもないことになるんですね。
今の汚泥の例なら、「排出量」は「脱水」という自社による中間処理を行う前の量、すなわち、脱水機にかける直前の量なんです。先ほどの表現を使うなら「水分だぶだぶの状態」、これが「排出量」になるんです。
これは公害防止管理者などの環境系の試験にもよく出る「問題」なのですが・・・・

問題 業者に委託した「脱水汚泥」は水分70%で800トンであった。脱水機にかける前の汚泥は水分97%である。では、排出量はいくらか?

わかりましたか?(^O^)
これは、水分ではなく固形分に注目すると理解しやすいんです。
水分70%、ということは固形分は30%。ということは、800トン×0.3=240トン。この240トンの固形分が、水分97%の汚泥の場合は3%に相当している訳ですよね。240トンが3%→240÷3×100=8000トン。アッ\(◎o◎)/!
そうなんです。いくら委託量が1000トン未満でも、排出量は1000トンを超える場合があるんですね。
今回の水分97%の汚泥を水分70%の「脱水汚泥にして委託する」、という例では、委託量は年間わずかに100トンでも法定計画策定義務がある事業所ってことになる訳です。
もし、この脱水前の汚泥の水分量が99パーセントなら、この1/3、すなわち委託量34トンでも対象になるってことですから注意しなくてはなりませんね。
でも、脱水機に掛ける前の汚泥の水分量なんて、「神のみぞ知る」って領域ですよね。
今回は、汚泥の含水量を例に取り説明しましたが、報告様式の記載欄にある「認定熱回収業者以外の熱回収を行う業者への処理委託量」なんて項目も、わかったようでわからない内容なんですよね。
「認定熱回収業者」なら、これは明確に判ります。しかし、「認定熱回収業者以外の熱回収を行う業者」って、どういう業者なんでしょうか?さすがに、焼却炉の上に薬缶をのせていて、沸かせたお湯でお茶を飲んでいれば、これに該当するって訳にもいかないでしょう。
このように、実は「多量排出事業者計画」って、突っ込みどころ満載なんです。
まぁ、罰則までできちゃった手前、「適当に」って言う訳にもいきませんが、この計画に対する姿勢は、まさに「策定マニュアル」の「5. 実施状況の報告」の章に記載している、次の文章につきるかなぁと思っています。

「創意工夫のある取組に対しては住民や関係者から高い評価を受けることも予想される。事業者においても、公表された情報の内容を踏まえて、今後より高いレベルの処理計画を策定していくことにより、廃棄物の総合的な減量及びその適正な処理が一層推進される。」 まさに、計画は「神のみぞ知る」の世界であるとすれば、「神」とは、三波春夫先生のお言葉を借りるなら「お客様」、すなわち、国民。国民の目から見て賞賛される計画こそ、理想の「多量排出事業者計画」ってことになんでしょうね。

 

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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