リヴァックスコラム

第17回 廃棄物燃料通知

長岡 文明氏

今回は、「通知」を紹介するまでの「前振り」が長いのですが、この前振りを知らないと、なんで、こんな「通知」が必要であったかがわかりませんので、すみませんが、がまんしてお付き合いください。

さて、今日のテーマ「廃棄物燃料」なのですが「廃棄物燃料」と言っても、なかなかピンと来ない方も多いと思います。むしろ、「RDF」「RPF」という呼び方の方が、馴染みがありますね。
「RDF」はRefuse Derived Fuel、「RPF」はRefuse Paper & Plastic Fuelの略です。

(「RPF」は「RPPF」と略すべきじゃないかとも思うのですが・・・)

BUNさんは英語が大の苦手なので、日本人なら日本語で言ってよ、と言いたいのですが「derived」は「~に由来する、~から導かれる」、「Refuse」は「廃物,ごみ」という意味のようなので、「RDF」は「廃棄物由来燃料」、「RPF」は「紙くず、廃プラスチック類燃料」ということになるのでしょうか。よって、言葉からは「RPF」は「RDF」の中の1つの種類、ということになります。
ただ、実際のこの業界使用例では(BUNさん個人の感覚かもしれませんが)、この2つは別物のように扱っていますね。

「RDF」は家庭から排出される生ゴミ、動植物性残渣、一部汚泥などまで含むもの。
一方、「RPF」はこういった素材はほとんど含まず、言葉通り、紙くずと廃プラスチック類で造られたもの、そういう感じで捉えています。

ご存じの方も多いと思うのですが、どういう経緯でこういった「廃棄物燃料」が世の中に出回ってきたかを復習してみましょう。


昭和の終わり頃、今から30年ほど前から、最終処分場の新たな設置は、特に都市部を中心にとても難しくなりました。そこで、それまで埋め立てていた廃棄物も極力焼却しようという方向にかわってきました。
ところが、一方で、ダイオキシン騒動が巻き起こり、廃棄物焼却炉の規制が強化され、規模の小さな焼却炉では、とてもとても採算が合わない状況になりました。
そこで、スケールメリットを求めて、資金をつぎ込んでも採算の取れるような、規模が大きく高度な技術を備えた焼却施設が必要となったんですね。
しかし、「規模が大きい」ということは、その分、廃棄物を収集するエリアも広くなり、収集運搬にも時間を要することになるわけです。そうなると、生ごみなどは腐敗しますし、体積が大きいいわゆる「かさばる」状態では、運搬コストが嵩んでしまいます。

そこで、登場したのが「RDF」だったのです。「RDF」は、主に家庭から収集した生ゴミ、紙ゴミなどの可燃ごみを破砕・乾燥し、接着剤・石灰などを加えて練り上げ圧縮し、直径1~5cm大の円筒状のペレットや、ソーセージのような感じにします。前述の通り「破砕・乾燥、練り上げ圧縮(この表現が後に関係しますから、頭の片隅に入れててね)」しますから、体積は元のごみの約5分の1になります。単に破砕、圧縮するだけならダイオキシンは発生しませんから、この「破砕・圧縮施設」を小規模に各所に造れば、腐敗防止が図られ、運搬コストも軽減化され、充実した焼却施設で処理される、という予定でした。

ところが、大きな事故が起きてしまったんですね。今から10年以上前ですが、県や多くの市町村が関係していた東海地方のRDF発電プラントで、燃料をストックするサイロから火災が発生し、爆発も伴う大惨事となってしまいました。この原因が、どうもRDFの発酵によるガスではないかと言われています。

また、これとは全く別に、事件も起きたんですね。それは、北関東の某産業廃棄物処理業者が、不法投棄の隠れ蓑とするためにRDFを悪用していたようなんです。この会社は産業廃棄物をRDF(と、自分では称していた物)に加工し、岩手県と青森県の県境に不法投棄していたんですね。この時この会社は、廃棄物処理法違反で警察の捜査を受けた際に「我々は産廃の不法投棄をしているのではなく、有価物のRDFを保管しているだけだ」と主張し、刑事責任を逃れようとしました。

こういった事故や事件があったために、「RDF」「RPF」の製造に関しても、廃棄物処理法の中で、なんらかのルールを規定しなければならない、となった訳です。

誰でも、簡単に手を出せるような「行為」「施設」だからこそ、事故や事件が起きる。「廃棄物燃料」を製造するためには、一定の基準を制定しよう、ということですね。

この流れで、正攻法でいくのであれば、「RDF」「RPF」製造施設を廃棄物処理法第15条の産業廃棄物処理施設、第8条の一般廃棄物処理施設と位置づけて、設置に当たり許可が必要、許可を取るためには構造基準が適用になる、とまぁこのように法律、政令を改正するのが本来の筋だったように思います。
しかし、「RDF」「RPF」製造施設が8条、15条の処理施設として登場することはありませんでした。(おそらく、推察するに、事故や事件が矢継ぎ早に起きてしまい、法律、政令改正の時間がなかったのかもしれませんね)


では、どのように対処したかというと次のような論法と手法だったようです。

そもそも『家庭からの生ごみを処理する』というのなら、これは「1日5トン以上の処理能力」ということで、処理の方式を特定していない「一般廃棄物処理施設」であれば、そちらの審査と基準で対応できる。と言うことは、わざわざ新たな一般廃棄物処理施設を追加する必要は無い。構造基準、維持管理基準の修正(省令改正)だけで対応できるな。

さて、産業廃棄物の方はどうか?

少なくとも、今後の産廃の「廃棄物燃料」は発熱量が出ない、むしろ落ちるような動植物性残渣や汚泥などは原料としては使用しないだろう。やはり、カロリーが期待でき、安全性も高い紙くず、廃プラスチック類が中心、すなわち、「RPF」だろう。「RPF」製造であれば、必ず廃プラスチック類の破砕行為を伴うじゃないか。
で、あれば既に産業廃棄物処理施設として「廃プラスチック類の破砕施設」は規定されている。と言うことは、わざわざ新たな産業廃棄物処理施設を追加する必要は無い。構造基準、維持管理基準の修正(省令改正)だけで対応できるな。

そんな経緯かどうかは定かではありませんが、結局、8条、15条には、「廃プラスチック類の圧縮固化施設」は登場していません。産業廃棄物処理施設で言えば既定の「廃プラスチック類の破砕施設」の構造基準、維持管理基準の追加、という形で対応したようです。
ですので、現在の省令では、第12条の2第9項第2号をご覧になっていただければ、納得していただけると思いますが、廃プラスチック類破砕施設の基準のほとんどは、「破砕機」本体に関することよりも、「圧縮固化」に関する事項の方が圧倒的に多いんです。

お待たせしました。やっと、今回の「通知」の登場です。「法令に登場しない時は通知」でしたね。今回の通知は次のものです。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について

平成16年から平成17年にかけて、政令や省令がいくつか改正されました。この通知は、その改正された事項について、まとめて通知しているものです。
本日のテーマである「廃棄物燃料」については、この通知の「第三 産業廃棄物の廃プラスチック類の圧縮固化を行う破砕施設の構造基準及び維持管理基準の見直しに係る改正」です。

なお、この「通知」に登場する「ごみ固形燃料の製造・利用に関するガイドライン」は次で見ることが出来ます。

ごみ固形燃料適正管理検討会報告書について

と言うことで、今回は「廃棄物燃料」をテーマに、「法律で規定していないからと言って、規制がないとは限らないよ。そう言うときこそ、<通知>までよく読まないとね」ということをお伝えしてみました。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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