リヴァックスコラム

第18回 石綿廃棄物に関する通知について

長岡 文明氏

石綿廃棄物ほど、今の廃棄物処理法の規定上、宙ぶらりんな廃棄物は無いと感じています。
このコラムの読者の方は、産業廃棄物は何種類あるかご存じですよね。
「廃棄物の種類」は、処理業許可や委託契約の時の基礎知識ですから、たぶん、どういうテキストでも、まず最初に出てくるでしょう。
廃棄物処理法の条文でも、1条の「目的」の次、すなわち第2条の「定義」に登場します。産業廃棄物についてはこの第4項ですね。
法律で、燃え殻、汚泥等6種類、法律を受けた政令で紙くずや木くず等14種類、計20種類を規定しています。
じゃ、本日のテーマである「石綿廃棄物」って、この20種類のどれに該当するのでしょうか?
即答できた方は、相当、廃棄物処理法にお詳しい方ですね。実は、「石綿廃棄物」というのは、前述産廃20種類のうち、その状況、状態によっていろいろなものになってしまうんです。
とりあえず、現時点で石綿廃棄物に関して、もっとも詳細な通知を紹介しましょう。

石綿含有廃棄物等の適正処理について(通知)



と言われても、なかなか、読み切れませんよね。この石綿含有廃棄物等処理マニュアルは78頁もあるんですから。

この「1.2.1.2」(マニュアル8頁)に、このような文章がありますね。
「石綿含有成形板が廃棄物となったものは、主に産業廃棄物の「工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物」(がれき類)(令第2 条第9 号)又は「ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものを除く。)及び陶磁器くず」(令第2 条第7 号)に該当する。」

この文章で例示しているだけでも「がれき類」、「ガラス陶磁器くず」の2種類あります。
そして、これはあくまで例示であることから「主に」と書いています。ということは、「もっとある」ということなんですね。
あまりいい喩えでは無いかもしれませんが、「石綿廃棄物」の「石綿」というのは、「水銀が含有した汚泥」「PCBが付着した木くず」「血液が付着した注射針」といった表現における「水銀」「PCB」「血液」に相当する、いわば「形容詞」的な扱いなんです。
ですから、「石綿が含有したスレート板」といった時は、「スレート板」の方に注目して、「これは産廃20種類の区分ではガラス陶磁器くずだ」とか「がれき類だ」となる訳ですね。
したがって、昔の製品で、プラスチック床タイルの中にも一部石綿が含有しているものもあるらしいのですが、これなどは廃プラスチック類ということになります。
ちなみに、このことは平成25年3月29日付けの次の通知でもわかります。

産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)

これは産業廃棄物関係の許可をどのように扱うかという通知の最新版なのですが、この第1の「10 許可証の交付」には次のような記述がなされています。(※下線はBUNさんによる)
「(1) 産業廃棄物収集運搬業及び産業廃棄物処分業の許可証(中略)の「事業の範囲」の欄に記載する産業廃棄物の種類の具体的記載については、処理業者が関係者に対し、取り扱う産業廃棄物の種類を明確に示すことができるように、次の例により行うこと。なお、当該産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合は、その旨を明記すること。
① 燃え殻の場合(後略)」
皆さんと取引がある産業廃棄物処理業者さんの許可証を見てください。まず、ほとんどの許可証には「石綿含有産業廃棄物を含む」か「含まない」とわざわざ書いているでしょ。
これでお分かりのとおり、「石綿」は産業廃棄物20種類そのものの表現ではなく、形容詞的な扱いなんだ、ということです。

なお、特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」は、法令的には「鉱さい」に位置づけられるようですね。(詳細は後述)
石綿、アスベストに関しては、昔から有害性はわかっていたようなのですが、一方で便利な素材であることや、水銀、カドミといった金属有害物やトリクロロエチレンといった有機性廃溶剤対策が優先され、どうしても後手後手に廻ってしまったようです。
でも、過去の通知を見てみると、既に昭和62年10月26日付けで「アスベスト(石綿)廃棄物の処理について」が発出されています。

アスベスト(石綿)廃棄物の処理について

今からかれこれ、30年ほど前の通知なのですが、この通知の中に「アスベストの飛散を防止するため、当該物を湿潤化させる等の措置を講じた後、十分な強度を有するプラスチック袋で二重にこん包し、又は堅ろうな容器に密封して保管すること。」という、現在の処理基準とほとんど同じ内容が記載されています。
ただ、当時の社会的認識としては、それほどリスクの高いものだ、という意識は無かったと思います。既に保健所に勤務していたBUNさんでさえ、ビル管理の立入検査でボイラー室に入ると、壁に吹き付けられたアスベストに指を突っ込んで「プクプクして気持ちいいね」なんてことをやった記憶があります。
時代はこの通知よりさらに数年遡りますが、昭和50年代に、BUNさんが使用していた「公害」に関する文言約2200語を掲載している「最新 公害辞典(日本工業新聞社刊行)」にすら、「アスベスト」「石綿」という言葉は出てこないことからも、まだまだ世間的には石綿に関するリスク認識は低かったものと思われます。
ただ、前述の通知から数年後の平成3年に、廃棄物処理法大改正があり、この改正から新たなカテゴリーとして「特別管理」というものが規定されました。
この時、特別管理産業廃棄物の一つとして「廃石綿等」が位置づけられました。
話は少し飛躍してしまいますが、この辺から、廃棄物処理法は訳がわからなくなっていきます。訳がわからなくしている1つの要因が、この「特別管理」というカテゴリーの位置づけなんです。
世界的にはバーゼル条約という有害な廃棄物を規制するルールがあり、日本もこの条約に加盟しています。
この「バーゼル条約の有害な廃棄物」というカテゴリーを導入したかったようなのですが、日本には廃棄物処理法が昭和45年から存在し、既に一般廃棄物、産業廃棄物という棲み分けが定着していました。ここに無理矢理「バーゼル条約の有害な廃棄物」という類型を押し込んだために、制度全体がいびつになってしまったように感じています。(あくまでも、BUNさんの感想)
この時点で、わりきっちゃって、特管物を産業廃棄物20種類から切り離せばわかりやすかったと思うんですね。ところが、廃棄物処理法では既に、一般廃棄物と産業廃棄物の大分類がある。そのために、産業廃棄物の中で特に管理に注意を要する<物>を特別管理産業廃棄物と位置づけた。だから、特別管理産業廃棄物はあくまでも産業廃棄物なんですね。
(ちなみに、特別管理産業廃棄物以外の産業廃棄物を指し示す適当な言葉がないために、法令用語ではないのですが、この業界では「普通の」産業廃棄物と呼称していますね。)
産業廃棄物は冒頭でも書いたとおり、法律と政令で20種類と決めている。したがって、特別管理産業廃棄物はあくまでも、産業廃棄物ですから、特別管理産業廃棄物も産業廃棄物20種のどれかにあてはめないと筋が合わないってことになるんです。
それで、「石綿廃棄物」というのは、「石綿(アスベスト)を含んだ、付着した○○」と、なってしまう訳です。
ここで、基礎知識ですが、なぜ石綿が危ないのか?アスベストのリスクはどこにあるのか?ってことですが、それはアスベストの形状に由来しています。

アスベストは、ストローの両端をカッターで斜めに切ったような形で、大きさは髪の毛の5000分の1程度と言われています。

中空の管状のため、一旦巻き上がると空中を浮遊し、なかなか沈降しない。しかも、小さいために人が吸い込むと、肺の奥まで入っていって肺胞に突き刺さる。そして、10年20年の長い潜伏期間の後に、中皮腫等肺がんを引き起こす、と言われています

このことでお分かりのことと思いますが、アスベストのリスクは「飛散」することから引き起こされるわけです。そこで、綿状になっていて、「飛散」しやすい状態のアスベストを「廃石綿等」として特管物に規定した訳です。
一方、アスベストは含有しているんだけど、塗り込められていて、通常の状態では「飛散しない」、つまり「非飛散性」の「物」もあり、これは「飛散性」に比較すれば格段にリスクは低いわけです。そこで、この「非飛散性」ながらアスベストを含有している「物」を「石綿含有廃棄物」と位置づけ、こちらは「普通の」産業廃棄物としました。
ただ、この「石綿含有」であっても、収集運搬や中間処理の過程で、「破砕」「切断」等を行うと、塗り込められているアスベストが飛び散る可能性も否定できない、ということで、「特別管理産業廃棄物ではないが、他の廃棄物とは違った処理基準」を設定したんです。
この「石綿含有」に関する改正が平成18年に行われ、その時の通知が次のものです。

石綿含有一般廃棄物及び石綿含有産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法

ちなみに、特別管理産業廃棄物である「廃石綿等」は「はいせきめんとう」と音読み、「石綿含有」は「いしわたがんゆう」と訓読みするようです。どうでもいいことかも知れませんが、辞書や通知を調べるときにはちょっと知っていると便利です。「せ」の欄で調べても出てこないんです。(^O^)

今で言う飛散性のアスベスト(以前は、ボイラー室の壁などに吹き付けられていた灰色の綿状のものがその代表)は、昭和の時代には今で言うところの「がれき類(当時の呼称は「建設廃材)」として安定型最終処分場に埋められている場合もありました。
たしかに、アスベストは腐ったり、汚水を出したりはしませんので、性状的には安定していますし、建物の解体工事からコンクリートに付着して排出される場合が多かったですから。
しかし、特管物と位置づけてからは、管理型最終処分場でなければ埋立が出来ないようにするために、それで平成4年以降は先に記載したとおり、産業廃棄物20種類としては「鉱さい」として扱う場合がほとんどだと思われます。(「鉱さい」は安定型産業廃棄物ではないので、安定型最終処分場に埋め立てることはできない。)

特別管理の制度を取り入れた平成4年の当初から、処理業許可制度も普通の産業廃棄物とは別許可としたのですから、先述の通り産業廃棄物20種類からは切り離した方が判りやすかったと思います。
さらに、平成18年からは「普通産業廃棄物でありながら処理基準だけは別個のもの」、さらに許可証や契約書、マニフェストにも他の産業廃棄物の取り扱いとは別格に「石綿含有を扱うときはその旨」等のルールを規定しています。

産業廃棄物の種類は、昭和45年に廃棄物処理法がスタートした時点では19種類、これ以降40年間で、平成13年の狂牛病騒動の時に「動物系固形不要物」を1種だけ追加しました。これなどは、本来、「動植物性残渣」に含めてもカテゴリー的にはおかしくなかったのではないかと思っています。別の言い方をするならば、「動物系固形不要物」で1種類増やすのなら、許可、委託基準、マニフェスト、処理基準で特別扱いせざるを得ない「石綿廃棄物」は、本来政令を改正し、21番目の種類にしてもおかしくはなかったのではないかとも思います。
まぁ、そうせずにきたからこそ、冒頭で記載したとおり、石綿廃棄物ほど、今の廃棄物処理法上、種類としては、極めて宙ぶらりんな状態になってしまった訳です。(あくまでも、BUNさんの個人的な感想ですが)。
既にアスベストは、新たな販売や使用は禁止されていますが、過去に使用された、特に建物に使用されたものが、建物の老朽化、建て替えにあわせ大量に排出される事が想定されています。
産業廃棄物処理施設の「石綿溶融施設(政令第7条、11号の2)」は既に16施設(H24.4時点)、大臣認定無害化施設も2施設稼働し始めているようなので、今後、後の世代に負の遺産を残さないよう努めていかなければならない分野の一つだと感じています。
 

 

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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