リヴァックスコラム
第14回 野焼きについて
廃棄物処理法のセミナーをやっていまして、質問の多い事項の一つに「野焼き」(※注1)があります。一般的に「野焼き」と称している「不法焼却」は、不法投棄や無許可と並んで、廃棄物処理法の中では最も重い罰則が規定されているのですが、不法投棄は例外規定が一切無いのに、野焼きは例外規定が結構多くて、判断に迷われるという方が多いからかと思います。
今回ご紹介するのは、この「野焼き」に関して解説した「通知」です。
まず、通知そのものを紹介しましょう。次のアドレスでご覧になれます。
https://www.env.go.jp/hourei/11/000398.html
(※注2「野焼き」に関する箇所だけ、末尾に転載しています。参照しながら読み進めてください)
これをご覧になった皆さんは、「あれ?」と思われたんじゃないですか?
通知の題名に「野焼き」とか「不法焼却」とか書いてないですよね。そうなんです。「野焼き」についての通知は、平成12年に行われた廃棄物処理法の改正に関わる事項の1つとして、他のいろんな改正事項と併せて通知されているんです。
そのため、通知の題名からは、なかなか探しにくくなってしまっていることも、質問が多い原因の一つかなぁと思います。
この通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律の一部を改正する法律の施行について」の12番目に記載していることが、「廃棄物の焼却禁止」についてのものです。
この通知は、条文そのものと併せて見ていかないと、言っている意味が、ほとんど伝わらないと思いますから、「通知」の前に条文を確認しておきましょう。
<条文>
(焼却禁止)
法律 第十六条の二 何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。
一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの
(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
政令 第十四条 法第十六条の二第三号 の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの
ね(*_*)、「例外規定」がとても多くて、「やっていいのか」「悪いのか」迷ってしまうっていうのも理解できますね。
不法投棄は例外規定を作っていないのに、なぜ、「野焼き」は例外規定が多いのかについて、「通知」では最初に記載しています。
『罰則の対象とすることに馴染まないものについて、例外を設けていること。』
つまり、この「法律 第十六条の二」野焼きの規制は「悪質な産業廃棄物処理業者や無許可業者による廃棄物の焼却に対して、これらを罰則の対象とする」ことが、当初の制定目的だったわけですね。
ただ、この制定時のダイオキシン騒動や昨今のPM2.5騒動もあり、また、この条文が世の中に浸透してきたということもあるかと思いますが、近年では、ちょっとした「野焼き」でも検挙される人も少なくないようです。
<法の解釈>
次に法律の第一号に「基準合わない焼却」を規定しているのですが、普通に読むと「あたりまえじゃないか」と思われると思います。これについて「通知」では「焼却禁止の例外とされる廃棄物の焼却についても、処理基準を遵守しない焼却として改善命令、措置命令等の行政処分及び行政指導を行うことは可能である」と書いています。
ここまで読むと、かえって「ん?何言っているの?」となるかもしれませんねぇ。ここはなかなか難しいんです。
世の中には廃棄物の処理基準が適用にならない「人物」が存在するんです。一例を示しましょう。
典型的な存在は、「一般廃棄物における国民」です。そして、改善命令という行政処分は、「基準を守りなさい」という命令なんですね。と言うことは、基準が適用にならない人物には改善命令はかけられない、という仕組みなんですね。だから、一般国民には一般廃棄物の改善命令はかけられない、となります。
そこで、法律の第一号で言っていることを逆読みすれば「基準が適用にならない人物であっても、基準として規定しているやりかたをやっていないのであれば、野焼きとして捕まえるよ」という趣旨なんですね。
そして、通知で言っていることは、「16条の2違反にはならない例外的な焼却であっても、処理基準が適用になる人物が、基準に合わない焼却をやっている場合は、改善命令の対象になるよ」、もちろん、「行政指導もしていいんだよ」という趣旨なんですね。
次に、法律では「他法令」と出てきます。でも、法律の専門家以外、「他法令」と言われても、数多い法令のどんな条文に、「廃棄物の焼却」に関する規定があるかなんて、わかりませんよね。そこで通知では、家畜伝染病予防法、森林病害虫等防除法を例示しています。
皆さんは、鳥インフルエンザが流行ったときに、殺処分した鶏を鶏舎付近で黒煙を上げながら焼却しているのをテレビ等でご覧になったことありませんか?
あれは、これ以上伝染病が拡大しないように家畜伝染病予防法で「患畜の移動禁止」が規定されていて、「その場で焼却や埋却」を義務づけているんです。
このように他の法律で、その法律の目的達成のために法令で「廃棄物の焼却」が規定されている場合は、廃棄物処理法第16条の2は適用しないよってことですね。
次に法律では、「公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却」としているのですが、これはあまりにも範囲が広すぎる、判断する人物によって程度が変わってくるので、そこで「政令で定める」として、対象を絞り込んでいる訳です。
具体的な規定は既に掲載したとおりなのですが、この政令の規定でも、まだまだわかりにくい。そこで、通知ではさらに踏み込んで、これらを解説しています。
まず、「国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却」とは、「河川管理者による河川管理を行うための伐採した草木等の焼却、海岸管理者による海岸の管理を行うための漂着物等の焼却など」としており、多くの自治体では、例示の行為に限定として運用しているところも少なくありません。
なお、本末転倒してしまうといけないので、ここで再確認しておきますが、そもそも、この「政令で定める罰則の対象にしない焼却行為」は、法律で「公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却」でしたね。
ですから、「やむを得ない」「影響が軽微」が前提なんだということを忘れてはいけません。
<震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害について>
通知では「凍霜害防止のための稲わらの焼却、災害時における木くず等の焼却、道路管理のために剪定した枝条等の焼却など」としており、「生活環境の保全上著しい支障を生ずる廃タイヤの焼却は、これに含まれるものではない」と前述のことを念押ししています。
次の「風俗慣習上又は宗教上の行事」「農業、林業又は漁業」に関しても、ほぼ同様のことを通知しています。
最後の「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」これは、この条文が制定された以降、各地で何度も論争になったところです。
行政や警察が「野焼きだろう」と言うと、「いや、たき火だ」と抗弁するんですね。
通知では「たき火、キャンプファイヤーなどを行う際の木くず等の焼却」を例示しています。
時折、真夏なのに「たき火だ」、塩化ビニールを燃やし塩化水素が発生、緑色の煙を上げながら「キャンプファイヤーだ」と主張する輩(人たち)もいますが、どう考えてもこれらの行為は「日常生活を営む上で通常行われる」「軽微」とは考えられませんね。
今回は「野焼き」について紹介しましたが、このように通知の題名としては、「・・法律の施行について」として、その時新たに制定された制度、改訂された制度について解説しているものがありますから、題名に留まらず、是非、中味まで一度は目を通してみてくださいね。
BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/
※注1)
本来の「野焼き」の意味は、春先のまだ草本の新芽が出ない時期に、野山の枯れ草を焼く事で、山焼きとも呼ばれます。奈良の春日山や各地のワラビ園などで行われる「野焼き」は春の風物詩です。
本文でも論じているとおり、こういった行為はけして法令違反ではなく、慣習として昔から行われてきた行為でもあります。そのため、廃棄物を意図的に焼却処分する行為と区別するために数多くの「例外規定」を制定している訳です。
廃棄物処理の世界では「焼却禁止行為」「不法焼却」が正しい呼称かと思いますが、一般的に使用されている「野焼き」という文言を使って書きました。
※注2)通知抜粋
第一二 廃棄物の焼却禁止
一 焼却禁止の規定は、これまで行政処分では適切な取締りが困難であった悪質な産業廃棄物処理業者や無許可業者による廃棄物の焼却に対して、これらを罰則の対象とすることにより取締りの実効を上げるためのものであることから、罰則の対象とすることに馴染まないものについて、例外を設けていること。したがって、焼却禁止の例外とされる廃棄物の焼却についても、処理基準を遵守しない焼却として改善命令、措置命令等の行政処分及び行政指導を行うことは可能であること。
二 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従って行う廃棄物の焼却とは、これらの廃棄物の処理基準を遵守して焼却されることをいうものであって、焼却を行った者に処理基準が適用されるか否かは何ら関係ないものであること。
三 他の法令又はこれに基づく処分により行う焼却としては、家畜伝染病予防法(昭和二六年法律第一六六号)に基づく患畜又は擬似患畜の死体の焼却、森林病害虫等防除法(昭和二五年法律第五三号)による駆除命令に基づく森林病害虫の付着している枝条又は樹皮の焼却などが考えられること。
四 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却としては、河川管理者による河川管理を行うための伐採した草木等の焼却、海岸管理者による海岸の管理を行うための漂着物等の焼却などが考えられること。
五 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却としては、凍霜害防止のための稲わらの焼却、災害時における木くず等の焼却、道路管理のために剪定した枝条等の焼却などが考えられること。
なお、凍霜害防止のためであっても、生活環境の保全上著しい支障を生ずる廃タイヤの焼却は、これに含まれるものではないこと。
六 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却としては、どんと焼き等の地域の行事における不要となった門松、しめ縄等の焼却が考えられること。
七 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却としては、農業者が行う稲わら等の焼却、林業者が行う伐採した枝条等の焼却、漁業者が行う漁網に付着した海産物の焼却などが考えられること。
なお、生活環境の保全上著しい支障を生ずる廃ビニールの焼却はこれに含まれるものではないこと。
八 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であって軽微なものとしては、たき火、キャンプファイヤーなどを行う際の木くず等の焼却が考えられること。