リヴァックスコラム

第4回 ペットボトル通知を読む その2

長岡 文明氏

「BUNさんに聞いてみよう」のコーナー。「ペットボトル通知を読む」その2

※ペットボトル通知… 平成28年1月8日付けで環境省から発出された「店頭回収された廃ペットボトル等の再生利用の促進について(通知)




前回は平成28年1月に発出された「ペットボトル通知」を読み解いています。

今回はいよいよ通知の「本文」です。じゃ、センセ、お願いします。

はい、ここからは引用が多くなりますが、ご承知おきくださいね。

第1 店頭回収された廃ペットボトル等の廃棄物処理法上の法的取扱いの明確化
1 背景
 スーパーマーケットの小売事業者による、使用済みの容器包装を回収するボックスの店頭への設置は、遅くとも、容器包装リサイクル法の制定された平成7年頃から確認できているが、当時より、店頭回収された廃ペットボトル等の取扱いについては、小売販売を業として行う者が自ら処理を行う場合と一般廃棄物収集運搬業者に収集運搬を委託する場合とに分かれている。このことから、それぞれの場合について、店頭回収された廃ペットボトル等の廃棄物処理法上の法的取扱いを以下のとおりとする。

ちょっと待って下さい。

「小売販売を業として行う者が自ら処理を行う場合」とありますが、この表現はいかにも「小売業者が排出者ですよ。だから小売業者が行うことは自ら処理にあたり許可不要ですよ」を前提にしちゃっていませんか?

ところが、次に「一般廃棄物収集運搬業者に収集運搬を委託する場合とに分かれている」と書いている。前号で議論検討したけど、ペットボトルは性状としては廃プラスチック類に該当し、どのような事業所から排出されても産業廃棄物になる。一般廃棄物になるということは、「事業活動を伴わない」家庭生活、すなわち一般国民、一般消費者が排出者だって言うことでしょ。

矛盾していませんか?

そうだねぇ。BUNさんもこの理論展開は「苦しいなぁ」と感じている。

それを如実に表しているのが次の段落なんだ。

2 小売販売を業として行う者が自ら処理を行う場合(廃ペットボトル等が産業廃棄物として扱われる場合)
(1) 店頭回収された廃ペットボトル等の産業廃棄物への該当性
 廃棄物処理法において、同法第2条第4項第1号の規定により、産業廃棄物とは、「事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物」とされており、同法第2条第2項の規定により、一般廃棄物とは、「産業廃棄物以外の廃棄物」とされている。
 市民の消費活動によって排出された廃ペットボトル等は、本来一般廃棄物であるが、店頭回収された廃ペットボトル等が、下記2(2)に掲げる要件を充足し、「事業活動に伴って生じた廃棄物」と認められる場合においては、産業廃棄物であると解釈して差し支えない。

苦しい。これは苦しすぎる…。

だって、「市民の消費活動によって排出された廃ペットボトル等は、本来一般廃棄物であるが、」って言ってるよ。
それなのに「産業廃棄物であると解釈して差し支えない。」なんてあり得ない。

そうだねぇ。

廃棄物処理法の基礎をしっかりと勉強してきたリヴさんのお怒りはごもっともとして、とりあえずその「産業廃棄物であると解釈して差し支えない」要件をみてみようか。長いので短く区切っていくよ。

(2) 事業活動性
 廃ペットボトル等については、そのリサイクル技術が確立し店頭回収等による回収ルートの多様化により再生利用促進が期待される状況に鑑み、本体事業がペットボトル及びプラスチック製の食品用トレイの販売事業である小売事業者が、当該製品の販売後に廃ペットボトル等の回収を行うことについて、以下の要件を充足する場合に限り、当該回収行為は事業活動と回収対象物に密接な関連性があるとして「事業活動の一環として行う付随的活動」であると認められ、廃棄物処理法第2条第4項第1号に規定する「事業活動」と解釈して差し支えない。ただし下記3に掲げる場合を除く。

「ただし」書きまで、一文よね。形容詞が長すぎてわかりにくいね。

そうだね。

まず最後の「廃棄物処理法第2条第4項第1号に規定する「事業活動」と解釈して差し支えない。」という箇所は、廃棄物処理法の産業廃棄物の定義として出てくる箇所。実は廃棄物処理法そのものでは「事業活動」を定義していない。廃棄物処理法スタート時の「廃棄物処理法の解説」という当時の厚生省の担当者が執筆した中に国や自治体の行動も「事業活動だ」としている。

だから、廃棄物処理法でいう「事業活動」という概念はとても広くて、まぁ、平常状態であれば家庭生活以外は全て事業活動と捉えていいと思う。

そうなら、なぜ、ここでわざわざ「事業活動」について述べなければならなかったのかな。

その苦悩は次に出てくるよ。

なお、「事業活動の一環として行う付随的活動」の解釈をむやみに拡げ、自社廃棄物と扱い得る範囲を拡大することは、許可制度の形骸化や不適正処理につながるおそれがあることから、廃ペットボトル等の店頭回収が「事業活動の一環として行う付随的活動」に該当するか否かについては、具体的な状況等に照らして適切に判断されたい。

なるほど。

「これは私の事業活動ですよ。だから、この廃棄物は私の廃棄物です。だから許可は要りませんよね。」という理屈がどこでも通るなら、収集運搬業務も「事業活動」だね。

だったら、これは私の廃棄物だから許可は不要ですよね。となってしまって、世の中の廃棄物処理は全て「自ら処理」となってしまう。それじゃ、廃棄物処理法の中で許可制度を採用している意味がなくなる。

よって、「事業活動の一環として行う付随的活動」だという解釈をむやみに拡大解釈してはだめだよ。

と書いている訳ですね。

そうだね。たぶん、この通知を起案した担当者も自分で起案しながらも、「こんな理屈がまかり通ったら廃棄物処理法が根幹から揺らいでしまう」という思いがあったんでしょうね。

そこで、「以下の要件を充足する場合に限り」として5つの条件を設定した。

① 主体
販売事業を行う者と同一の法人格を有する者が回収を行う場合に限られること。

② 対象
再生利用に適した廃ペットボトル等で、かつ、販売製品と化学的、物理学的に同一程度の性状を保っている廃ペットボトル等に限られること。
再生利用に適した廃ペットボトル等であるか否かは、第2の2(2)個別指定の対象における記載を参照されたい。

③ 回収の場所
販売事業を行う場所と近接した場所で回収が行われる場合に限られること。

④ 管理意図及び管理能力
販売製品の販売から回収までの一連の行為について管理する意思があり、かつ適切な管理が可能であること。

⑤ 一環性及び付随性
本体事業活動の便益向上を図るために、当該事業活動に密接に関連するものとして付随的かつ一環として行う行為に限られること。

この5つの条件を見ると、まさに前回BUNさんと私が想定したようなケースに限定しているってことになりますね。

自販機の隣に、自販機の設置者が設置したペットボトルの回収箱に回収される、その自販機で売られているペットボトルを回収するものであって適正にリサイクルされている場合は…ってことですね。

そうだね。

苦しい論法だけど、本来は消費者が排出する一般廃棄物であるペットボトルではあるが、こういう状態で適正にリサイクルルートに乗っているペットボトルについてだけは、排出時点をずらして、販売者を排出者として、扱ってもいいよ。

とせざるを得ないってことでしょうね。

(3) 処理責任の所在
店頭回収された廃ペットボトル等が、産業廃棄物として扱われる場合、その処理責任は排出事業者である小売事業者等が有することに留意すること。

ここまで理屈を進めたら
「小売事業者が排出者であり、物は産業廃棄物。したがって、小売事業者が廃棄物処理法で規定している排出事業者責任を果たして下さいよ。」ってことですね。

そうだね。排出時点を回収後、すなわち消費者が回収ボックスに投入する時点では無く、「回収ボックス入った時点」にすり替えたからこのような理屈になる。

実はBUNさんは四半世紀前からこの理屈を「ごみ箱理論」として主張していたんだ。

なんか「後出しじゃんけん」みたいだけど、披露してみて。

たとえば、デパートの売り場やエレベーターホール、トイレなどにごみ箱が置かれていたとする。買い物客が連れていた子供がキャラメルを食べて、その包み紙をごみ箱に捨てたとする。

さてその要らなくなった包み紙の排出者は誰ですか?

その時点なら排出者はその客の子供だよね。

じゃ、ごみ箱に入れられた包み紙が閉店の掃除の時にデパートのごみ集積場に集められた。

さて、その包み紙の排出者は誰?

ん~。そこまでいくと排出者はデパートってなるよね。

ねっ?このように排出時点をずらすことで排出者がすり替えられてしまうことがままあるんですよ。

これを称して「ごみ箱理論」。

ええ?!変なの。「排出時点をすり替える」って他にもあるの?

建設系廃棄物なんかその典型だよね。
リヴさんが今住んでいるお家が古くなったので建て替えようとするね。

この時点で「この古いお家は要らない」って思っている人は?

それは私自身。居住者だよ。

古くなった家を居住者であるリヴさんが建設業者に「この家、解体してちょうだいな」と頼む。そこで建物は解体され、木くずやがれき類になりました。

さて、この木くずやがれき類の排出者は?

あっ!それなら勉強した。
建設系の廃棄物の排出者は廃棄物処理法第21条の3の規定で解体工事の元請だよね。

あれ?そうか。もともと「この家、要らないな」となったのは居住者なのに解体して出てきた廃棄物は工事の元請業者にすり替わっているね。

そうなんだ。建設系廃棄物については、排出時点を「この家要らない」とした時点では無く、「解体工事により廃棄物は発生した」と排出時点を1つずらして、工事の元請業者にしているんだ。

このように「排出時点をずらす」ことにより、排出者をすり替えて、そのために一般廃棄物が産業廃棄物に衣替えしてしまうってことが廃棄物処理法の世界では出てきてしまう。

でも、そんなことをやたらにやられたら制度が崩壊してしまう。

だから「むやみに拡大解釈してはだめだ」と釘を打っている訳ですか。

そうだねぇ。

建設系廃棄物については昭和57年からほぼ現在のような運用がなされてきたんだけど、裁判なんかもあったりして、それで平成22年の改正で法律第21条の2として規定したんだ。
だから、本当は原理原則と違った運用をするのであれば、法律で規定するべきだと思うけどね。

そんなこと言ってもしょうがないので次に進みましょう。

3 一般廃棄物収集運搬業者に収集運搬を委託する場合(廃ペットボトル等が一般廃棄物として扱われる場合)

上記2のような場合であっても、当該店頭回収が開始された当初から、市町村の一般廃棄物処理計画の下で当該市町村から一般廃棄物処理業の許可を受けている事業者と委託契約を締結し、廃ペットボトル等の処理が適正に行われている場合等においては、当該廃ペットボトル等について引き続き一般廃棄物として適正処理が継続されることを妨げるものではない。貴職におかれては、現行の店頭回収の実態も考慮しつつ、当該市町村における既存の適正処理ルートを妨げることがないよう貴管下市町村担当部局との調整を図り、適切に対応されたい。

これこそ廃棄物処理法の原理原則通りの運用だね。

さっき取り上げた「2」で例外な運用を提示したことから、「今までやっているところは、それでいいんですよ。」と明示したってところかな。

そうだよね。本来であれば、消費者が排出したペットボトルなんだから、それは一般廃棄物。一般廃棄物としてその市町村も認知していて、それを一般廃棄物として一般廃棄物処理業の許可業者が扱う。まさに、これが本筋の運用だよね。

ようやくここで「第1」が終了。もう疲れました。
つづきは次回ということにしましょう。