リヴァックスコラム

第3回 ペットボトル通知を読む その1

長岡 文明氏

「BUNさんに聞いてみよう」のコーナー。「ペットボトル通知を読む」その1




前回まではプラスチック資源循環促進法についての話だったのですが、今回はどんな話ですか?

はい、前回までのプラスチック資源循環促進法で新たに制度化された製造者・販売者自主回収認定制度や排出事業者自主回収認定制度をよくよく具体的に突き詰めていくと、「製造者」「販売者」「排出事業者」ってどこで線引きされるんだろう?ってことが判らなくなる。

私も前回までの話を聞いていて、わかったような、わからないような、なんか「モヤ」としたものを感じていたんです。

たぶん、それはこんなことかなぁと思うんです。

たとえば、ペットボトルを例に話してみましょう。
一般消費者がペットボトルのジュースを買って中身のジュースを飲んで、空になったペットボトルを捨てるとしましょう。

ペットボトルの排出者は誰でペットボトルは一般廃棄物ですか?産業廃棄物ですか?

それは一般国民の消費生活から発生していて事業稼働を伴っていないんですから、
排出者は消費者で、ペットボトルは一般廃棄物です。

では、このペットボトルのジュースを自動販売機で購入して、喉が渇いていたので直ちにその場で飲みきって、自動販売機の横に置いていたペットボトル回収箱に捨てた。

ここまで法律違反はありますか?

「捨てた」と言うものの、ちゃんと回収箱にルール通りに投入している訳ですから「みだりに捨てた」訳では無く、不法投棄罪は成立せず、したがって法律違反はありません。

だって、そんなことは誰でもやってる行為で、それを法律違反と言われたら国民のほとんどが犯罪者になっちゃうよ。

そうだねぇ。法律違反では無い。

では、その回収箱に入っているペットボトルの排出者は誰で、そのペットボトルは一般廃棄物?産業廃棄物?

回収箱に入ってからまで、消費者が排出者って言うのはちょっと無理がありそうだね。
回収箱は自動販売機の設置者が設置しているとすれば、排出者は自動販売機の設置者で、回収箱に入った状態ではペットボトルは産業廃棄物かな。

おっ、回収箱に入るまでは一般廃棄物であった「物」が、回収箱に入った瞬間に産業廃棄物に変わっちゃうのかな。

じゃ、続けて、その回収箱に入っているペットボトルを自動販売機の設置者とは違うジュースの販売会社が新品ジュースを卸して空のペットボトルをジュースを積んできた車両で持ち帰るって行為は、収集運搬業の許可は必要か不要か?
その時の許可は一般廃棄物収集運搬業か産業廃棄物収集運搬業か?

うぅ…。混乱してきた。ちょっと整理するよ。

そもそも、自分の廃棄物であれば、これは一般廃棄物、産業廃棄物ともに許可は不要。いわゆる「自ら処理」とか「自社処理」とか言われている形態ですよね。

でも、他者の廃棄物を扱うなら許可が必要。物が一般廃棄物なら一般廃棄物の許可、産業廃棄物なら産業廃棄物の許可じゃないとダメですよね。

もし、自動販売機の設置者が回収箱を設置しているのであれば、設置者が排出者。であれば、設置者が運搬することは「自社運搬」にあたるから許可不要。

でもこのケースでジュースの販売者が運搬することになれば、「他者の廃棄物を運搬」することになるから収集運搬業の許可が必要。

回収箱の設置者がジュースの販売者であれば、排出者が運搬することは「自社運搬」にあたるから許可不要。

回収箱の設置者が自動販売機とは全く無関係の、たとえば公園の管理者が設置している回収箱に集められている状態の物を、他のごみ箱のごみと一緒に集められるなんてことになったら、もう、誰がどんな許可を取ればいいかなんてわからないよ。
なんか目安になるような通知はないの?

目安になるかはわからないけど、次の通知を見てみようか。

平成28年1月8日付けで環境省から発出された
「店頭回収された廃ペットボトル等の再生利用の促進について(通知)」

うわぁ。6頁もあるんですか。大変だな…。




一度に全部理解しようとしたら大変かも知れないけど、この通知は随所にいろんなポイントがある。

そんな訳で、まずは最初から見ていこう。まずは題名から。

「店頭回収された廃ペットボトル等の再生利用の促進について(通知)」

ここでは、「店頭」「回収」「廃ペットボトル等」「再生利用」「通知」この位ポイントがある。

なにそれ。全部じゃないですか。

まず、「店頭」と書いてるね。
だから、ここでは容器包装リサイクル法の制度に従って各家庭から回収するような形態や工場で製造過程から発生してしまった不良品のペットボトルを対象にしている訳ではないってことがわかる。

当然のことじゃないですか。そんなこと重要なことなんですか。

廃棄物処理法上とても重要なことだね。
と言うのは、容器包装リサイクル法で集められるペットボトルは一般廃棄物と決まっている。そして、工場から排出されるとなれば、これは「事業活動を伴って排出される廃プラスチック類」だから産業廃棄物に間違いない。

なるほど。そんな風な見方をするのか。

次に「回収」と書いているね。
後の「再生利用」とも関連することになるけど、「回収」と聞いて「中間処分」を思い浮かべますか?

それは無いよね。普通「回収」と言ったら「収集運搬」の概念じゃないんですか。

そうだね。だから、まずは「収集運搬」行為について言っているんだ、とわかる。

次に、「廃ペットボトル等」と言ってるね。「廃ペットボトル」と限定しているのではなく「等」が入っていることから、ペットボトルは当然ながら、類似の「空き缶」とか「発泡トレー」なんかにも通じる理論かも知れない、と言う要素もある。

そこは通知の中身を見てみないとはっきりとはわからないけど「含みを持たせている」ってことだね。

次に「再生利用」。すなわち「埋立」に行ってしまう処理ルートの物は対象外だとわかるし、最近ではサーマルリサイクル、すなわち「熱利用」は「再生活用」などと使い分けするときも多いので、いわゆる「単純処理」はこの通知では想定していないことがわかる。

最後に「通知」だね。

これは勉強したよ。
前々回のリヴックスコラムの「BUNさんシリーズ」は「重要通知と法令対応」だったよね。

たしか、「通知」というのは法律でも政省令でも無いから、法律上は強制力は持たない。
だから、「そのとおり」やらなくても法律違反にはならない。でも、たいていは法律を制定した役所が発出しているものだから、「そのとおりやった方がなにかとお得」ってレベルの物でしたね。

よく勉強したね。今回の「通知」も国の課長さんが、都道府県(政令市を含む)の部長さんに「技術的助言」、つまり「アドバイスするよ」って位置付け。

だから、この通知どおりにやるかやらないかは最終的には都道府県の考え次第ってことだね。

そうは言っても前述の通り「そのとおりやった方がお得」なんだから、たいていの自治体では「そのとおり」やってるんでしょ。

まぁ、多くの「通知」はそうなんだけど、この「ペットボトル通知」に関しては、いろんな状況があり通知通りには運用していない自治体も多いねぇ。
それ程、課題の多い、難しい要因を含んでいる通知なんだ。

それじゃ、いよいよ本文に入って下さい。




使用済みのペットボトル及びプラスチック製の食品用トレイ(以下「廃ペットボトル等」という。

まず、この箇所で先ほどの「等」が解決。

この通知でテーマにしている「廃ペットボトル等」と言のは
「使用済みのペットボトル」と「プラスチック製の食品用トレイ」だけであり、「空き缶」や「空きビン」は対象外ということだね。

ペットボトル等の販売を行う事業者による自主的な回収・リサイクルの取組等により再商品化されることが一般的となってきている。

そうだね。

特に発泡トレーなんかはスーパーマーケットの店頭に回収箱が設置されていることが「あたりまえ」のようになってきたよね。それがなにか?

さっきも話したけど、この消費者から排出される発泡トレーって一般廃棄物ですよね。
それを「他人(排出者ではない)」が集めるときに、許可は要らないのかなぁ。

地球に優しいリサイクルに水を差すようなことを言うよね。
出す方も受け取る方も、みんな「よかれ」と思ってやっているんだからいいんじゃないんですか?

じゃ、リサイクルに結びつくなら誰がどんなことをやってもいいの?
反社が金儲けのためにやっててもいいの?

またまた、そういう極端な例を持ち出す。嫌な性格。

でも、そう言われればそうだね。ちゃんとしたスーパーマーケットがやってくれるのはいいけど、ろくな施設や適正にやるための知識が無い人達にやられたら困るよね。

だから「廃棄物処理法の許可制度」があるんですよ。

なにも「やるな」と言っている訳じゃない。
「やるんだったら、ちゃんと許可を受けてやってください」というのが許可制度なんですよ。

そうか。だからこそリヴックスでも苦労してちゃんと許可を取ってやっているんだね。

でも、そうなると店頭回収しているスーパーマーケットは「無許可」行為をやっているってなるのかな。それともちゃんと許可とっているんだろうか?

そんなことを

循環型社会形成の推進のためには、生活環境の保全上支障が生ずるおそれのないことを確保した上で、こうした廃棄物の適正な再生利用を推進していくことが望ましい。

と言ってる訳だよ。

なるほど。世の中にとって「いいこと」と感じられることと法律の規制のギャップが出てきてしまったってことかな。

そうだね。だから

廃棄物処理法上の法的取扱い、再生利用指定制度の趣旨、手続の流れ、指定要件の明確化及び一般指定制度の活用

などについて明確化して欲しい、という社会の要請がある。

だからこの通知を発出するんだってことだね。

でも、その合間に「リサイクルは必要だけど、ぞんざいに扱われて生活環境保全上の支障が出てはいけない」とリサイクル推進と適正処理の狭間で揺れ動く気持ちを書かざるを得ないって状態だったのかな。

ようやく通知の読み方背景が判ってきたところだけど、残念。頭が疲れてきました。続きは次回に取っておきましょう。

じゃ、またね。

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