リヴァックスコラム

第26回 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」について聞いてみよう その2

長岡 文明氏

いつもリヴァックスコラム楽しみにしています。

前回の「その1」で新たに誕生する廃棄物処理法許可不要制度を紹介していただいたのですが、具体的にどうもピンと来ません。実際にはどのような事業展開が推察できるのでしょうか。

はい、いつも熱心にお付き合いいただきありがとうございます。
前回も書きましたとおり、執筆時点では「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案」はまだ成立もしておらず政省令案も提示されていないので詳細は私も判らない状態です。

ただ、法律条文案とともに「法律案の概要」が環境省HPに提示されていますので、これらを参考に推測していきたいと思います。

1.前置き。許可不要制度の復習。予備知識。

なお、法律名が長いので、以降「再資源高度化法」と略させていただきます。
前回、再資源高度化法で新たに「廃棄物処理業の許可不要」制度として「高度再資源化事業計画認定」と「高度分離・回収事業計画認定」の2つが登場したことまで紹介しました。

「廃棄物処理業の許可不要」制度については、拙著「許可不要制度」に詳しく述べていまして、この本には許可不要の系統図も掲載しています。

制度を作った人は「抜本的な制度であり、このような概念、範疇、系統では無い」と主張されるかもしれませんが、廃棄物処理業の許可不要という視点に立てば、この系統図で考えた方が整理しやすいと思います。

なお、認定の名称も長いので以降は、「高度再資源化事業計画認定」は「再資源化認定」と「高度分離・回収事業計画認定」は「分離・回収認定」と略させていただきます。

再資源高度化法は単なる「リサイクル法」では無いと思いますが、「廃棄物処理法以外の法令」と言うことなどから、「許可不要」という視点では、「各種リサイクル法」の一つとして考えてよいと思います。

ここで、もっとも近年成立、施行されているのが、プラ資源循環法ですが、プラ資源循環法でも、廃棄物処理法の処理業許可不要制度として容リ法変形、製造者等自主回収、排出事業者再資源化という3つが制度化されました。
再資源高度化法では、再資源化認定と分離回収認定という2つが追加されるということになります。

ここで、今更の話ですが、もし、既存の制度で世の中が十分上手く機能しているのであれば、新たな制度は不要ですよね。しかも、3年前にプラ資源循環法で3つの制度が追加されている訳ですから、今回の新たな2つの制度は今までの制度には無いなんらかのポイント、メリットがある筈です。
別の言い方をするのであれば、それ程良い制度なら、既存の制度を廃止し、新たな制度に包含しても良いはずです。それをやらずに、既存の制度を温存したままで、新たな制度を追加したと言うことは「新たな制度では包含しきれない」なんらかの利点が既存制度にはある。
端的に言えば、既存、新設、どちらの制度にも長所、短所があるはず、ということになります。

既存制度で一例を示します。

各種リサイクル法のひとつに家電リサイクル法が有り、その中で「家電販売店は家電4品目については収集運搬業の許可不要」を規定しています。これは拡大生産者責任の理念の下で廃棄物となる家電を生産した生産者が廃棄物となった時にも責任を持ちリサイクルを行う。販売した販売者が責任を持って回収する、ということで、すっかり社会に馴染みました。
しかし、これが可能なのは家電4品目(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン+α)だけです。それ以外の家電については、(おそらく4品目ほどには生産者や販売者の理解が得られなかったからとは思いますが、)対象になっていません。
すなわち、家電リサイクル法では4品目は扱えるがそれ以外の廃家電は扱えない、という短所があるとも言えます。

家電リサイクル法施行から10年後、「小型家電リサイクル法」が施行されましたが、これは家電販売店の回収義務は設定されておらず、よって、家電販売店の許可不要制度はありません。小型家電リサイクル法では、回収事業を行いたい「者」が申請し、小型家電リサイクル法の大臣認定を受けなければならないという仕組みです。

もっとも近年成立、施行されたプラ資源循環法でも認定を取れれば、日本全国で許可不要(認定計画の範囲でですが)となりますが、当然ながら、対象物は廃プラスチック類に限定されます。

また、別の課題も出てきます。それは「複数の許可制度、どちらを使ってもよいのか」という点です。もちろん、前述の通り、プラスチック製品で無い物をプラ資源循環法で認定する訳にはいかないのですが、たとえば「マットレス」などはどうでしょう。
マットレスには金属等も使用しているとは思いますが、多くの部分はプラスチックでしょう。では、マットレスメーカーが回収業務を行うために「許可不要」を求めた場合、プラ資源循環法の認定を申請できるのでしょうか?それとも、大臣広域認定制度なのでしょうか?どっちでもいいのでしょうか。

このように理念としては崇高な法令であったとしても、現実には「対象物」「対象者」「対象行為」がどうしても限定されてしまうのです。

2.再資源高度化法逐条ごと、概略を確認してみましょう。

漠然と眺めると焦点を絞れなくなります。あくまでも、「許可不要制度」という視点で逐条を俯瞰してみましょう。なお、条文の原文はネット等でご確認下さい。「BUNさん流簡略表現」になることをご了解下さい。

(目的)
第一条 この法律は、効率的な再資源化の実施、・・・による温室効果ガスの排出の量の削減の効果が高い資源循環の促進を図るため、再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業並びに再資源化の実施に用いられる技術及び設備の高度化を促進するための措置等を講ずることにより、・・・。

BUNさんの注目点は「温室効果ガスの排出の量の削減の効果が高い資源循環の促進」です。このフレーズ、頭の片隅にとどめておいて下さい。

(定義)
第二条この法律において「再資源化」とは、廃棄物処理法に規定する廃棄物の全部又は一部を部品又は原材料その他製品の一部として利用することができる状態にすることをいう。

まぁ、これは今までの概念と同じなので、皆さんもすんなりと読めると思います。

注目はこの第2項です。
前回(その1)でも述べた許可不要となる認定制度に「高度再資源化事業」があります。現時点では対象物が何になるのかは条文からは判りません。

第十一条 需要に応じた資源循環のために実施する再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業(以下「高度再資源化事業」という。)

とあるだけです。ただ、これに先んずる第2条第2項では次のように規定しています。

第2条第2項「再資源化事業等の高度化」とは、次の各号のいずれかに該当する措置を講ずることにより、再資源化の実施に伴う温室効果ガスの排出(略)の量の削減の効果が増大することをいう。

つまり、今までの単純な「廃棄物の処理」は言うに及ばず、リサイクルがなされていたとしても温室効果ガスが削減されないような方法は該当しないとなります。
なお、第3条から第5条までは基本方針、国の責務、自治体の責務規定です。こういう規定は将来の大きな動きには影響しますが、補助金や予算の確保等に関わる人以外は実務にはダイレクトには響いてきません。

そしていよいよ、第六条で「廃棄物処分業者の責務」、第七条で「事業者の責務」と続くのですが、長くなりましたので、今回はここまでといたしましょう。

今回(その2)のまとめ

  • 「廃棄物処理業の許可不要」制度として「高度再資源化事業計画認定」と「高度分離・回収事業計画認定」の2つが登場した。
  • 現在までも多くの許可不要制度があるが、それぞれに長所、短所はある。
  • 「再資源化認定」も「分離回収認定」も現時点で具体的な対象物、対象者等は不明確。
  • 再資源高度化法の目的に「温室効果ガス削減」がある。
  • 「再資源化認定」も「分離回収認定」も「温室効果ガス削減」が無いと認定されない(と推察)

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