リヴァックスコラム

第25回 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」について聞いてみよう その1

長岡 文明氏

いつもリヴァックスコラム楽しみにしています。伺いたいことが出ました。
3月15日に環境省のHPにて
「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について」という発表がありました。

https://www.env.go.jp/press/press_02916.html

資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について | 環境省

概要をみてみると、脱炭素や再生資源の質と量の確保等の資源循環の取組を促進するため法律で、
・基本方針の策定
・再資源化実施状況の報告・公表
・国の一括認定の制度
 (産廃業の許可手続きの特例)
のようなの措置事項が書いてありました。

資源循環をテーマに事業を展開する我々にとって大きな関わりがある法律かと思いますが、現実的にはどのような影響が想定されますか?

ご質問ありがとうございます。
当法律はご紹介あった環境省HPにもあるとおり、執筆時点では令和6年3月15日に閣議決定され「本法律案は、第213回通常国会に提出する予定」のものです。したがいまして、本会議で修正が行われたり、最悪、否決される可能性もありますが、閣議決定された法令ですので、おそらくは、ほぼ、原案で成立するものと思われます。

ただ、それでも「法律」しか示されておらず、政令、省令は不明の状態です。したがって、数週間後、数ヶ月後には「見当違いであった」、「間違いであった」ということもあり得ることを承知でお読みください。

このような状況ではありますが、法律条文(案)を見た限りで想定できる「廃棄物処理法から見て大きな点」を紹介していきたいと思います。

まず、廃棄物処理法上最大の点は「許可不要制度」が新たに誕生する、ということです。
しかも、1つでは無く、詳細に見ていくと、5つかそれ以上の「許可不要制度」が誕生するようです。

(1)高度再資源化事業計画認定事業者
「高度再資源化事業計画」自体、法律条文だけでは、まだよく判りません。条文としては第11条に次のように規定しています。

第十一条 需要に応じた資源循環のために実施する再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業(以下「高度再資源化事業」という。)・・・・

と言うことで、一時流行した「安全、安心」のような抽象的な「感じ」しか判りません。
今後、政省令やマニュアル、ガイドライン等により、対象になる廃棄物の種類や数量、再資源化率等を示してくるものと思われます。

思われますが、それをクリアして環境大臣の認定を受ければ次のように規定されています。

(廃棄物処理法の特例)
第十三条 認定高度再資源化事業者は、廃棄物処理法第七条第一項若しくは第六項又は第十四条第一項若しくは第六項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度再資源化事業計画に従って行う再資源化に必要な行為(一般廃棄物(廃棄物処理法第二条第二項に規定する一般廃棄物をいう。以下同じ。)又は産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分に該当するものに限る。第三項において同じ。)を業として実施することができる。

皆さん、ご存じの通りですが・・・
法第七条第一項→一般廃棄物収集運搬業許可
    第六項→一般廃棄物処分業許可
第十四条第一項→産業廃棄物収集運搬業許可
    第六項→産業廃棄物処分業許可

つまり、特別管理産業廃棄物処理業以外は、この認定を取れれば日本全国で処理業が行えることになります。

次に、この第3項です。

3 認定高度再資源化事業者の委託を受けて再資源化に必要な行為を業として実施する者(認定高度再資源化事業計画に記載された第十一条第二項第六号に規定する者に限る。)は、廃棄物処理法第七条第一項若しくは第六項又は第十四条第一項若しくは第六項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度再資源化事業計画に従って行う再資源化に必要な行為を業として実施することができる。

このように、認定を受けた人物だけで無く、その認定者から委託を受けた人物(受託者)も認定者と同様に一般廃棄物、産業廃棄物ともに業許可不要で扱えることになります。ただし、それは当然ながら「事業計画に記載された」人物が「事業計画に記載された」行為に限定されます。

次に、この第9項です。

9 第十一条第二項第九号に掲げる事項が記載された高度再資源化事業計画について同条第一項の認定を受けた認定高度再資源化事業者は、廃棄物処理法第八条第一項又は第十五条第一項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度再資源化事業計画に記載された当該廃棄物処理施設を設置することができる。

法第八条第一項→一般廃棄物処理施設設置許可
第十五条第一項→産業廃棄物処理施設設置許可

すなわち、認定事業者は処理施設設置許可も不要となります。

処理施設設置許可は廃棄物処理法の中でも最難関の一つで、各種リサイクル法でも「業許可不要」としていても「処理施設設置許可不要」という制度はありませんでした。処理施設設置許可まで不要としていたのは、環境大臣の再生利用認定と無害化認定のみです。これは大きな改正(追加された制度)と言えるでしょう。
ただし、具体的な手続きである「環境影響調査(アセス)」や(処理施設の種類によっては、)告示縦覧等まで省略できるということではなさそうです。

(2)高度分離・回収事業計画認定事業者
「高度分離・回収事業計画」も、それ自体、法律条文だけでは、まだよく判りません。条文としては第16条に次のように規定しています。

(高度分離・回収事業計画の認定)
第十六条 廃棄物(中略)から高度な技術を用いた有用なものの分離及び再生部品又は再生資源の回収を行う再資源化のための廃棄物の処分の事業(以下「高度分離・回収事業」という。)を行おうとする者は、環境省令で定めるところにより、高度分離・回収事業の実施に関する計画(以下「高度分離・回収事業計画」という。)を作成し、環境大臣の認定を申請することができる。

それで、この高度分離・回収事業計画認定事業者も許可不要制度が規定されています。

(廃棄物処理法の特例)
第十八条 認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第七条第六項又は第十四条第六項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に従って行う再資源化に必要な行為(一般廃棄物又は産業廃棄物の処分に該当するものに限る。)を業として実施することができる。

ただし、条文でおわかりのとおり
法第七条第六項→一般廃棄物処分業許可
第十四条第六項→産業廃棄物処分業許可
だけであり、第一項の一般廃棄物収集運搬業許可、産業廃棄物収集運搬業許可の不要制度は規定されていないようです。

私の見落としでは無いと思うのですが、なぜ、収集運搬を除いているかは不明です。
推察するに、この「分離・回収事業」というのは「収集運搬を伴わない」で出来る行為であるから、または、収集運搬もやるなら正規に収集運搬業の許可を取得しなさい、ということか、はたまた前述の「再資源化事業」と組み合わせて実施するからか・・・。この辺は施行時には明確になると思います。

さらに、「再資源化事業」にはあった「受託者も不要」は規定されておらず、「分離・回収事業」はリサイクラー本人だけが想定されている感じです。
処理施設設置許可については第5項に不要制度が規定されています。

5 第十六条第二項第七号に掲げる事項が記載された高度分離・回収事業計画について同条第一項の認定を受けた認定高度分離・回収事業者は、廃棄物処理法第八条第一項又は第十五条第一項の規定にかかわらず、これらの規定による許可を受けないで、認定高度分離・回収事業計画に記載された当該廃棄物処理施設を設置することができる。

法第八条第一項→一般廃棄物処理施設設置許可
第十五条第一項→産業廃棄物処理施設設置許可

すなわち、認定事業者は処理施設設置許可も不要となります。    

この他に既に処理施設設置許可を受けている処理施設設置者が再資源化工程高度化計画の認定を受けた場合は、第9条第1項、第15条の2の6第1項の、いわゆる「処理施設の変更許可」は不要という規定もあるようです。

まだまだ雲を掴むような話で申し訳ありませんが、この制度が容易に認定されるなら、廃棄物処理法の許可制度や各種リサイクル法で規定している「廃棄物処理法許可不要制度」自体「不要」になるかもしれないオールマイティのような制度です。
今回は廃棄物処理法の「許可」に注目してコメントしてみました。この法案はその他色々な事項も規定しているようです。今後どのように成立、施行、運用されていくか注目していきたい「法律案」です。

なお、公式見解は前述の環境省HPをご覧下さい。

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