リヴァックスコラム

第27回 「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」について聞いてみよう その3

長岡 文明氏

リヴァックスコラム愛読者の「むつご」さんからのご質問を受けて、再資源高度化法を取り上げています。
この法律は5月22日に無事に国会で承認されたようです。

ただ、附則には「施行期日」として、「この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」となっています。このような附則がある時は、いくら「超えない範囲内」という規定だからと言って「明日から施行」「来月から施行」ということはありません。

令和6年5月から1年半後となりますと、令和7年の年末頃になりますねぇ。
実際には、区切りよく令和7年10月1日といった日になるのではないでしょうか。いずれにしてもまだ1年以上の期間があり、その間に政令、省令等を整備しパブコメもやってとなると思いますので、まぁ、まだ「余裕」はあります。急ぐ必要は無いと思いますので、今回は前回の「その2」からの継続で、法律条文を確認していきましょう。

なお、条文の原文は長いのでネット等でご確認下さい。「BUNさん流簡略表現」になることをご了解下さい。

再資源高度化法逐条確認(第6条~第11条)

(廃棄物処分業者の責務)

第六条 廃棄物処分業者は、その再資源化事業等の高度化及び再資源化の実施に必要な措置を講ずるよう努めるとともに、再資源化の実施の状況の開示に努めなければならない。

廃棄物処理法の規定では、最終処分場を所有しているときなどは情報開示の義務があります。

また、廃棄物処理業者は行政から報告を求められたとき、実績等を報告する義務が規定されています。しかし、「再資源化の実施の状況」については「開示」の義務はありません。再資源高度化法ではこの状況について「開示」を規定しました。ただ、条文ではあくまでも「努めなければならない」という文言ですから、罰則までは設けないようです。

そうは言っても、法律で「開示」を規定した訳ですので、許可を取得してリサイクル等を行っている業者は今後は積極的な情報開示を求められていくことになると思われます。

(事業者の責務)

第七条 事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を分別して排出するとともに、その再資源化を実施するよう努めなければならない。

(第2項、第3項 略)

省略しました2項、3項も含めて、第7条の「事業者の責務」は、いわゆる「3R、5Rの推進」的な規定で具体的なことは不明です。

第8条からは第三章になります。

第三章 資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化
第一節 廃棄物処分業者による資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化の促進

ここからがいよいよ、制度設計者(法律を作った人)がこの法律で具体的に「やりたいこと」が登場するようです。

(廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項)

第八条 環境大臣は、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化を促進するため、環境省令で、次に掲げる事項に関し、廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定めるものとする。

法律学者以外は、とてもわかりにくい条文構成だと思います。私も唐突に「廃棄物処分業者の判断の基準」と登場したものですから、「何について判断されるのか?」面食らいました。

素人(私)なりに短絡的に言わせて頂けば、この条文は後に登場する条文から読んだ方が理解できると思いました。

「許可不要制度」に特化しての視点ではありますが、
第13条→第11条→第8条の順に取り上げるといいかと思います。

第13条、認定取れれば廃棄物処理法で規定している処理業の許可、処理施設設置の許可が不要になりますよ。
第11条、認定を取るためには「高度化事業計画」を策定して申請しなければなりませんよ。
第8条、その「高度化」とは、こういう事項について、こう言ったことを求めるのですよ。その事項と基準を決めますよ。

もっと他の要因や関係する規定もあるかとは思いますが、上述のような視点で条文を眺めると理解しやすいように感じました。
さて、その「高度化」と認められるための「事項」と「基準」ですが、これが第8条第1項第1号から第5号として登場します。(相当簡略化して紹介します。厳密ではありませんのでご承知の程。)

一 製造、販売業者の再生資源に対する需給の質と量等
二 再資源化の向上に関する事項
三 実施に用いられる廃棄物処理施設の改良等に関する事項
四 再資源化率の目標
五 その他

なお、これらの詳細は第8条本文に規定しているとおり、「環境省令で定める」とありますから、省令が出てみないと具体的なことは不明です。
ただ、前述の通り、認定を受けるための具体的な基準がこれになると思われますから、これから認定を取ろうと思っている会社にとっては、最注目の条文です。

第9条は「指導及び助言」、第10条は「勧告及び命令」規定なので、ほとんどの方には当面関係しないでしょう。

いよいよ、「許可不要制度」という視点からは重要条文に入ります。

(高度再資源化事業計画の認定)

第十一条 需要に応じた資源循環のために実施する再資源化のための廃棄物の収集、運搬及び処分の事業(以下「高度再資源化事業」という。)を行おうとする者は、環境省令で定めるところにより、高度再資源化事業の実施に関する計画(以下「高度再資源化事業計画」という。)を作成し、環境大臣の認定を申請することができる。

前述の通り、なぜ、認定申請をするかと言えば、許可不要になるから、でしたね。

廃棄物処理法では「他者の廃棄物を扱うときは、許可を受けなければならない」でしたが、この「認定」は、「やりたい人がやる」スタンスなので、あくまでも「認定を申請することができる」という規定です。ただ、後の条文に登場するのですが、認定を取った限りは、いろんな事柄について「許可業者とみなす」規定があり、様々な義務が派生してきます。

第2項以降は、処理業許可申請と同じような必要書類等の規定が続きます。BUNさんが注目する条項のみ紹介していきましょう。

3 廃棄物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。

環境アセスですね。

4 環境大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その申請に係る高度再資源化事業計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。

いわゆる「認定基準」です。2項、3項で申請者から書類を提出させて、それを環境省が審査する。「各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。」と言うことは、「適合しなければ認定しない」となりますから、これが審査基準となる訳です。

二 事業の内容が、再資源化により得られる再生資源がその供給を受ける者の需要に適合していると認められること、第二項第四号に規定する指標からみて当該再生部品又は再生資源の大部分が当該者に対して供給されると認められることその他の環境省令で定める基準に適合するものであること。

これは面白いですね。

悪徳リサイクラーは時折「これはとても大切な有価物だ。社会にとって必要なものだ」と主張し、世間から見れば廃棄物である「物」を大量にばらまいて、結果として不法投棄として捕まる。こんなケースが山ほどありました。再資源高度化法では、「需要」を大きなポイントにしているんですね。需要が無い「物」など、世の中は求めていない。世の中が求めるからこそ「需要」なんでしょうけど。

だから、本人だけが「有価物だ」などと主張する「物」を作り出していても、それは「認定」の対象にはならない訳ですね。これは良い視点だと思います。

9 環境大臣は、第一項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該認定に係る第二項第五号に掲げる区域を管轄する都道府県知事及び市町村長に通知しなければならない。

これは当然ですね。産業廃棄物については都道府県、一般廃棄物については市町村が処理業許可を担当しています。

「認定」が取れれば個々の許可は不要になります。自分の自治体で許可を出していないので無許可として告発したところ「認定」を取っていたでは話になりません。そこで、国は認定をした場合は、関係自治体に通知するって規定です。

文章で書けばこれだけの話ですが、実はこれは通知する方の国も、通知を受け取る方の自治体も結構大変なんです。

たとえば、大臣広域認定も同じような手続きをしているのですが、廃消火器は認定を取っている消火器工業会の傘下に5000社ほどの「許可不要者」が存在します。その名簿を国は通知しなければならないし、それを受け取った自治体も「許可に替わるもの」として台帳等を整備しておかなくてはならない。大変な業務量なんですよ。

第12条は「認定」の変更時の手続き、第13条は「認定」を受けた時の「廃棄物処理法の特例」と続きますが、「許可不要制度」という点では重要な規定となりますので、続きは次回としましょう。

今回(その3)のまとめ

  1. 再資源化をやっている処分業者はの実施の状況の開示が求められる。
  2. 1.は努力義務で罰則は無い。
  3. 「事業者の責務」は、いわゆる「3R、5Rの推進」的な規定で具体的なことは不明。
  4. 第13条、認定取れば処理業の許可、処理施設設置の許可が不要。
  5. 第11条、認定を取るためには「高度化事業計画」を策定して申請。
  6. 第8条、「高度化」の事項と基準。
  7. 「認定」の基準の一つに「需要」。
  8. 手続きは「許可」と同様かそれ以上。

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