リヴァックスコラム

第九回 「水銀廃棄物に関する施行規則改正案」について

尾上 雅典氏

パブリックコメントの募集自体は11月10日で終了していますが、「水銀に関する水俣条約」を踏まえた法令改正が近々行われる予定になっています。

水銀廃棄物の規制に関しては、平成27年11月に廃棄物処理法施行令改正が行われたところですが、次は、その規制内容をさらに具体化させる廃棄物処理法施行規則の改正が行われる予定になっています。

先述したとおりパブリックコメントの募集は既に終了していますので、早ければ年内に、遅くとも年明け早々には、パブリックコメントの募集結果と、施行規則改正の詳細が明らかになりそうです。

少し気が早いかも知れませんが、今回は施行規則改正案の内容を踏まえ、水銀が含まれる産業廃棄物の管理ルールがどう変わる予定なのかを見ておきましょう。

施行規則改正案に挙げられた36項目のうち、実務的に影響が大きいと考えられるテーマは下記の6つです。

1.廃水銀等の処理方法
2.廃水銀等処理施設の維持管理基準
3.水銀使用製品産業廃棄物の定義
4.水銀回収を義務付ける水銀使用製品産業廃棄物の対象及び水銀回収方法
5.契約書やマニフェストその他の法定記載事項の追加
6.産業廃棄物保管基準の追加

このうち、実務的にもっとも大きな影響が出そうなのは、上記の「3」の「水銀使用製品産業廃棄物の定義」です。

水銀使用製品産業廃棄物に該当する廃棄物については、「6」の
『保管の場所には、水銀使用製品産業廃棄物がその他の物と混合するおそれのないように、仕切りを設ける等必要な措置を講ずること』という、新たな保管基準が追加適用されることになります。
この保管基準自体はさして難しいものではありませんが、「水銀使用製品産業廃棄物」という新しい産業廃棄物の品目ができあがるため、その処理委託をする際には、契約書や委託先処理業者の許可内容他をよく確認する必要が生じます。

では肝心の「水銀使用製品産業廃棄物の定義」についでですが、
詳細は(施行規則改正案)を見ていただくとして、
ほとんどすべての企業が排出事業者となり得るという意味で、実務的な影響が大きいのは『4) 蛍光ランプ(冷陰極蛍光ランプ及び外部電極蛍光ランプを含む。)』です。

改正される施行規則の施行は「平成29(2017)年10月1日から」ですが、来年の9月下旬に慌てて分別保管を周知しても遅すぎますので、現在から時間をかけて分別保管のルールを周知徹底する必要があります。

なお、廃水銀とは異なり、水銀使用製品産業廃棄物の具体的な処理方法自体は法令で規定されていませんので、処理業者の業許可や施設許可については、地方自治体が個別に判断していくことになります。

また、蛍光ランプ自体は、水銀回収の義務付け対象から外れる予定ですので、ばい焼設備での処理が義務付けられるわけではありません。
しかしながら、蛍光ランプをそのまま直接管理型最終処分場で埋立処分することもできず、事前に水銀が大気中に飛散流出させないための処理を中間処理業者に委託する必要が生じます。
以上のように、改正される施行規則の詳細はまだ明らかにはなっていませんが、平成29年10月1日より、蛍光ランプの保管及び処理(委託)方法がより細かくなるのはほぼ確実な状況です。