リヴァックスコラム

第十回 「廃棄物処理制度専門委員会報告書」について

尾上 雅典氏

平成28年12月20日から平成29年1月19日にかけて、「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案)」に対するパブリックコメントの募集が行われています。
パブリックコメントの募集終了後にまとめられる最終的な報告書は、次の廃棄物処理法改正の指針として重要なものになります。

 さて、同報告書(案)では、「マニフェストの活用」というテーマが挙げられていましたが、これは「マニフェストに関して今まで以上に普及啓発していきます」という生ぬるいものではなく、「一部の排出事業者や処理業者への電子マニフェスト運用の義務づけ」や「マニフェストの虚偽記載への罰則強化」まで視野に入った、昨今の規制緩和の潮流とは逆の規制強化につながる可能性が示されました。

 パブリックコメント募集の段階では、電子マニフェスト運用が義務化される具体的な対象は明示されていませんが、一つの可能性としては「一定規模以上の特別管理産業廃棄物を排出する事業者」と「特別管理産業廃棄物の処理を受託する産業廃棄物処理業者」への義務化が例示されています。
この例示を前提とすると、排出事業者の場合は、「一定規模以上の排出量」という縛りがあるため、どの規模の排出事業者が対象になるのか不明確ですが、産業廃棄物処理業者の場合は、「特別管理産業廃棄物処理業者」は自動的に電子マニフェスト運用が義務化されることになるのかもしれません。
念のためにお断りしておきますが、現時点では、電子マニフェスト運用が義務化されるかどうかも決まっていませんので、あくまでも報告書(案)の例示を元にした考察となります。
もっとも、特別管理産業廃棄物処理業者の場合は、現状でもほとんどの企業が電子マニフェストを導入済みと思われますので、義務化されたとしてもそれほど大きな影響は無さそうです。

 排出事業者の場合は、「親子会社間における自ら処理の拡大」に注目している方が多いことでしょう。分社化等により、それ以前は自ら処理できていた産業廃棄物が他者物となり、企業グループ内で業許可なしに処理できなくなった不都合を解消しようとするものです。
排出企業側としては、是非とも実現してほしいテーマであろうと思いますが、業許可の要否は廃棄物処理法の根幹に関わる重要なポイントですので、それが認められる要件や条件の定義は慎重に行っていただきたいものです。
報告書(案)には、このテーマを実現させる上での課題として、「親子会社間における排出事業者責任の共有」「親子会社内外の廃棄物について明確化すること」「親子会社に関する廃棄物のみを扱う場合に限る」「その状況が継続していることを定期的に確認すること」等が具体的に挙げられています。

 その他、当コラム(vol,8)にて既に紹介済みですが、「廃棄物処理における有害物質管理の在り方」の一つで「情報提供」というテーマが挙げられており、WDS(廃棄物データシート)などでより細かい情報提供をしていくことが必要になりそうです。

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