リヴァックスコラム

第八回 「廃棄物処理制度専門委員会」について

尾上 雅典氏

廃棄物処理法の問題点を抽出し、法改正を含めて、それへ国としてどう対処していくべきかを検討するために、概ね5年ごとに「中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会(以下「専門委」)」が設置されます。
その名のとおり、中央環境審議会の循環型社会部会に設置された、廃棄物処理制度に関する専門委員会となります。

前回の専門委は2008年から2009年にかけて12回開催されました(法改正後にあと1回追加開催があったので、それを入れると全13回)。今回は、第1回が2016年5月19日に、その後概ね1月に1回程度開催され、2016年10月28日に第6回が終わったところです。

部会長及び事務方のコメントによると、「第6回の専門委で個別の論点がすべて出尽くしたので、第7回は専門委からの報告書全体の議論に入る」とのことでした。前回の専門委の開催数等と比べると、今回の専門委は、議論にかけた時間がいささか短すぎる感じがします。

深い議論が行われないまま、報告書の完成を目指すという拙速さに大きな不安が残りますが、「出尽くした」とされる論点は下記の13個です。

1.産業廃棄物の処理状況の透明性の向上
2.マニフェストの活用
3.廃棄物を排出する事業者の責任の徹底
4.廃棄物の不適正な取扱いに対する対応の強化
5.廃棄物処理における有害物質管理の在り方
6.廃棄物の適正処理の更なる推進に関するその他の論点
7.廃棄物等の越境移動の適正化に向けた取組
8.優良な循環産業の更なる育成
9.廃棄物等の健全な再生利用・排出抑制等の推進に向けた取組
10.廃棄物処理分野における地球温暖化対策の強化
11.廃棄物処理法に基づく各種規制措置等の見直し
12.地方公共団体の運用
13.少子高齢化・人口減少社会を見据えた対応

さて、上記の13個の論点がどのような形で報告書として結実するかはわかりませんが、ほぼ確実に実務に影響してきそうなのは、5の「廃棄物処理における有害物質管理の在り方」です。第1回の専門委の開催に先立つ2016年5月13日付で、環境省は「産業廃棄物処理委託基準の検討業務」を入札の対象として公開していますので、予算をかけて外注を使う以上、その成果物を活用しないとは考えにくい状況です。

同業務は、「情報伝達義務をかける必要性が高い有害物質の抽出」と「有害物質を含有する廃棄物の処理における留意すべき事項の整理」を目的とするものです。具体的には、労働安全衛生法その他の全9法律で規定される有害物質(約1250種類)の中から、産業廃棄物処理業者に情報提供する必要性が高い物をピックアップさせるという、作業としては膨大な業務量になりそうです。
そうして抽出された有害物質については、「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」等で具体的な情報提供方法が明示されることになりそうです。可能性としては、WDS(廃棄物データシート)の「特別注意事項」で、具体的な有害物質を明示し、取扱い上の注意点等を挙げる、などの詳細な情報提供が要求されるようになることが考えられます。

アーカイブ