リヴァックスコラム

第20回 立入検査に関する通知について

長岡 文明氏

皆さんは、行政の立入検査を受けたことがありますか?立入検査は、なにも法律違反をしている事業者や業者ばかりを対象にしている訳ではありません。

とは言うものの、できれば受けたくはないし、万一立入検査を受けることになった場合は、どんなことを聞かれて、どんなことを検査されるのか気になりますよね。
また、昨今は、排出事業者が委託先の処理業者を「現地確認」するという機会も増えているようです。この通知は、「現地確認」の際も参考となりますので、是非、ご一読。

産業廃棄物に関わる立入検査及び指導の強化について(通知)

どういう訳か、環境省のHPには掲載していないようなので、石川県庁でアップしているものを拝借しました。

「産業廃棄物に関する立入検査及び指導の強化について」環境省HPより

立入検査については、現在の通知は昔の通知を踏襲し、時代の変遷に合わせ必要な事項を追加してきているようなので、最新の平成20年の通知で見ていきましょう。

この通知では、まず「1」で、年間計画を立てろ、と言っていますが、この時「(2)ア」で、「新たな規制等が適用される事業者」、「前年度行政処分を受けた処理業者の事業場」、「過去の立入検査において改善事項が多岐にわたる事業場」、「周辺住民から苦情が寄せられる事業場」等を対象とすること。と書いています。
次の(3)にも書いていますが、検査を行う行政側だって、人員や予算に余裕がある訳ではありません。まぁ常識的にも、問題が何もない事業所よりは、問題がある事業所を重点的に検査しろよってことですね。
ちなみに、「新たな規制等が適用される事業者」とあります。世の中の人間全てが廃棄物処理法に注目している訳ではありません。「法律は知らない国民の方が悪い。国民なら法律を知ってて当然。」とたてまえでは言うものの、数多い法律を知っている国民の方が少ないわけで、したがって、廃棄物処理法も法令の改正等があれば、改正に関係する事業所は啓発の意味も込めて、検査の対象にする時が多くなります。
(5)には、「年間計画は必要に応じ年度途中において、見直しを行うこと。」との記載があります。正直なところ、こんなことをわざわざ書かれなくても、現場としては、必ずといっていいほど、年度の途中で不法投棄や不適正処理事案が起きてしまいます。そんなとき、「計画があるからそちら優先」なんて言っていられません。立入検査というのは、どうしても時間の制約を受けます。極めて悪質な事業所、業者については、深夜・早朝の検査もおこないますが、そうでなければ、常識的には平常勤務時間、まぁ明るい日中に行います。ですから、担当者がいくらがんばって時間外勤務をして計画通りに検査しようとしても、自ずと無理な場合も多いです。

「2(2)」には、「原則として、複数の人員で行うこと」とあります。これは悪徳業者に検査に行き、閉じ込められて帰って来れなかった、というような犯罪を防ぐ、という面と、「一人の眼」、「一人の記憶」というのは案外、「いいかげん」「あやふや」です。将来、「言った、言わない」の論争にならないためにも、複数での検査は大切だと感じます。
おそらく、排出事業者が行う「現地確認」においても、単独でやっているという会社は少ないと思います。旅費は倍かかってしまいますが、是非、2人以上で行ってください。

「3(3)」では、「 事前連絡をすることなく立ち入ること。」とあります。排出事業者が行う「現地確認」においては、これはまず無理だと思いますし、行政が行う立入検査でも、いわゆる「抜き打ち検査」は、そんなに頻度は高くないと思われます。
もちろん、悪質、常習犯のところは、何度でも抜き打ち検査をやるのですが、そうでは無い、良心的というか、通常の事業者、業者では、当日の朝や前日の夕方あたり、必要最小の期間の中で「お知らせ」してから行くときが多いと思います。

なぜかと言いますと、「抜き打ち検査」は極めて効率が悪いんです。
廃棄物処理法で立入検査をすれば、後半でも紹介しますが、たいていは契約書とかマニフェストとかの書類検査をしますよね。ところが、担当者じゃないと、その書類がどこにあるかもわからない。
また、処理施設の検査をしても、技術管理者や運転担当者がいないと、どこがどうなっているのかもわからない。

また技術的に対応できないケースもあるんです。焼却施設などでは排ガスのサンプリングなどを行うときもあるのですが、そのためには測定口まで昇らなくてはならず、あらかじめ足場を組んでていただかないと物理的にできないんです。

それに数時間と言わず、1日2日前にお知らせしたところで、帳尻を合わせられる、いわゆる泥縄が可能なことって、そんなには無いんです。
「明日立入検査しますよ」と予告されても、一晩で現場を整理整頓して、必要な書類を整備して(逆に、辻褄が合うように隠蔽して)、なんて、そうそうできるもんじゃありません。行政の検査官(これは第20条に規定している「環境衛生指導員」の資格を持っている担当者が任命されることが多いのですが)は、ベテランになりますと、そういった付け焼き刃の行為はなんとなくわかるものです。したがって、「怪しいなぁ」と感じられた時は、何回も立入検査に行けばよいだけですから。

(4)以降も、具体的に参考になることが記載していますが、特に「3(4)」「立入検査票は保存し、立入検査等の継続的な実施や年間計画の作成のための資料、許可更新のための審査資料等として活用すること。」これは「現地確認」の時もお勧めです。

1回だけの検査では見抜けない違反も、何回も繰り返し確認することで、発見できることもあります。その典型的な手法は「写真」です。特に最終処分場においては時系列の「写真」はとても参考になります。昨年度なかったところに「山」が出来ている、程度は搬入がなされますから、「あり得る」ことですが、その「山」の出来方が異常に早い。
たとえば、3年前までは年間「一山」程度しか増えていなかったのが、ここ半年で「山が三つも出来た」となると、「経営状態が悪化して、その場限りの搬入をしはじめたのではないか」といった懸念があります。また、逆に「去年平坦であった場所に大きな穴が掘られていた」などという時は、最終処分場の延命化のために、表面上は最終処分場に搬入しておき、人の見ていない深夜に掘削し、非合法な場所に搬出している、などということもあり得る訳です。

最終処分場以外の処理施設でも、昨年無かった場所に「保管」が増えている、となれば、処理が計画的に行っていないのではないか、ということも見抜けます。

折角、旅費や手間暇掛けて行う「現地確認」ですから、自分一代かぎりの成果とせずに、是非、後輩・後任の方にも引き継いでいっていただきたい財産です。

この「通知」でもっともありがたいのは、具体的な「立入検査票」が付いていることです。
行政の検査官が行う立入検査がこの検査票をもとに行われるということは、自分の会社が立入検査の対象になった時は、基本的にはこの検査票に記載されている項目について検査されるってことですよね。
と、言うことは、日頃の自主管理においても、この検査項目を活用していれば、いつ行政の抜き打ち検査が行われても「対処可能」ということです。
また、冒頭で書いたとおり、排出事業者として実施する「現地確認」においても、この検査票をもとに行っていれば、最低限の必要事項は確認してくることができると思います。
ただし当然ながら、この検査票を活用するためには、それなりの基礎知識や勉強は必要です。

たとえば、収集運搬業者の検査票の項目として「積替え保管の保管状況(掲示板、保管量、高さ)」とありますよね。
さぁ、収集運搬業者に許されている積替保管数量はどの程度でしたか?法的に義務づけられている掲示板に記載しておかなければならない事項はなんでしたか?こういった知識が無いと、「適・否」の評価ができないですね。

と言うことで、「現場確認」に行く前に、あらかじめ検査票に記載してある検査項目は勉強してから行きましょう。
今回は「立入検査」ということで、行政側の行動に関する「通知」でしたので、冒頭で記載したように、「これを民間で活用するとしたら」という項目を最後にまとめにました。


  1. 立入検査票が示されているので基本的な検査項目はこの項目となる。したがって、ご自分の会社の立場にあった検査票で、自社のチェックができる。
  2. 排出事業者はこの検査票や「通知」の事項を、「現地確認」の時に活用可能。
  3. 検査は計画的に。しかし、状況によっては臨機応変に。無理はしなくてよい。
  4. 現地確認は複数人で。
  5. 検査記録は会社の財産。特に写真と検査票は継続的な保管を。
  6. 検査票項目の「適否」が判断できる知識を身につける。

行政は検査の結果、違法状態であれば、指導・改善命令等の行政処分等をする必要が出てきますが、「現地確認」をやる立場の排出事業者は、その責務・任務は求められていません。「あやしいな」と感じれば、取引を中止すればよいだけのことです。

リヴァックスでは、いつでも工場視察の受入れをおこなっているようですので、そういった機会を活用し、廃棄物処理の現場の知識も充実させていってください。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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