リヴァックスコラム

第5回 「許可の取り扱い通知」<処理業許可証書換編>

長岡 文明氏

今回は、身近な「許可」に関する通知を取り上げてみました。この通知は正式名を「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて」と言いまして、平成25年3月29日に発出されています。

原文をまだお読みでない方は次のアドレスをご覧下さい。
https://www.env.go.jp/hourei/add/k041.pdf(環境省ホームページへリンク)

第3回で紹介した「手元マイナス規制緩和改訂通知」が同じ日に発出されたことから、こちらの通知はあまり注目されていないように感じますが、許可業者さんはもちろんながら、排出事業者さんにとっても、もっとも基本的で重要な通知の一つです。

発出は平成25年ですが、この通知のルーツは古く、この直前は平成12年、さらに、同じような内容の通知は、平成5年、昭和61年、昭和56年、昭和50年まで遡ることが出来ます。 大きな法令改正がある度に、「許可」に関する「取り扱い」「運用」が変わってきていることの「しるし」とも言えるかも知れませんね。
この通知は全部で24頁にわたる膨大なもので、大きくは「処理業許可」に関する事と「処理施設設置許可」に関することが記載されていて、「処理業許可」についてだけでも

  1. 許可の申請
  2. 許可の性質
  3. 施設に係る基準
  4. 経理的基礎
  5. 欠格要件
  6. 許可の条件
  7. 優良産廃処理業者認定制度
  8. 有価証券報告書の提出
  9. 先行許可証の提出
  10. 許可証の交付
  11. 許可証の書換え
  12. 許可証の返納
  13. 台帳の整備
  14. その他

と14もの見出し項目について説明しています。
個人的には、14事項の全てで重要性が同じかというと、そうでも無いような気もしますので、この中からBUNさんが注目・お気に入りの箇所などを紹介していきたいと思います。

このコラム読者の方には許可業者さんも多いと思います。 その方々には直接関わることですが、どんな時に「許可証の書換え」されてますか?排出事業者さんも、委託契約書を締結するときに、「許可証の写し」を添付してもらっていますよね。

その許可証の写しは、本当は書き換えなくてはいけない状態になっているんじゃありませんか?

なんて、ちょっと驚かしてしまいましたね。

実は、許可証というのは行政法上は、許可処分通知書という意味合いであり、本来は申請があり、「その許可をその日に間違いなくしたよ」という通知書らしいんです。だから、本来は許可証というのは、書き換えや、再交付というのはあまり意味がないらしいんです。
昔は許可証の再交付や書き換え交付ということは行わず、「必要なら許可証明書を発行します」という手続きが多かったです。法律的には現在でも、申請や届出さえしっかりしていれば、再交付や書換交付というのは、「しなければならない」という規定はありません。この辺は運転免許と違うところですね。

でも現在の、廃棄物処理法では、収集運搬の時は許可証の写しを携帯しなければなりませんし(省令第7条の2第3項第3号)、前述の通り委託契約書には写しを添付しておかなければならない規定までありますから、「無くしたけど、許可は取っているんだから構わないよ」とか「許可証の記載事項が変わっているけど、別にいいよね」って訳にもいかないですよね。

そこで、法律では規定していないのですが、「通知」で許可証の書換えについて触れています。該当する箇所を拾い書きしてみましょう。

11 許可証の書換え
産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者は、産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業に係る変更の届出をする場合において、許可証の記載事項に変更があった場合には、当該許可証の書換えを受けることができること。(後略)

ね、「許可証の書換えを受けることができる」って書いてるでしょ。「しなければならない」ではないんです。しなくても法律違反ではないんですね。でも前述の通り、書き換えずに困るのは自分自身(許可業者)なので、大抵の場合は、変更届出提出に合わせて、書き換えてもらっていると思います。

さて、この文章で問題になるのは「変更の届出をする場合において、許可証の記載事項に変更があった場合には」って書いていますよね。
ここ二つほどポイントがあるんです。

<ポイント>

まず、処理業に関して、「変更」が生じたときは「届出」だけではありませんね。そう、「変更許可申請」もあるんです。
ところが、この通知で書き換えるのは「変更の届出をする場合」だけが記載していますよね。なぜでしょう?

そう、経験のある方はすぐお分かりになったと思いますが、変更許可申請は、条文も異なり、別の許可と考えるんです。(普通の産業廃棄物の収集運搬業なら第14条の2) 書き換えじゃないんです。だから、書き換えは「変更届出」の時だけとなるんです。

さて次に、「許可証の記載事項に変更があった場合には」とありますね。と言うことは、変更届出に該当する変更があったからと言って、必ずしも許可証の書き換えには繋がらないってことです。一例としては、収集運搬業許可における車両の変更などがこれにあたります。
収集運搬業にとって、収集運搬車両は「事業の用に供する施設」にあたるので、変更届出は必要です。(省令第10条の10第1項第4号)でも、収集運搬業の許可証には、具体的な車両の型式とかナンバーとかは記載してないですよね。だから、「許可証の記載事項」には変更がないので、許可証を書き換える必要は無いわけです。
法人の取締役の変更もそうですね。平取締役一人一人の名前は許可証には記載していません。変更届出は欠格要件の審査の関係もあり必要なのですが、許可証の書き換えは不要となる訳です。

ちょっと、難しいのは代表取締役の交代です。

<代表取締役交代の場合>

普通に考えれば、社長さんが代わるってことは、会社としては一大事なのですが、廃棄物処理法的には次のようになります。

法人で許可を取得しているのであれば、社長が代わろうと、許可そのものは継続します。これが、個人経営とは大きく違うところですね。
A商店で経営者はAさんという個人なら、たとえAさんの息子さんのBであろうと、経営者がAからBに代わるなら、これは許可の取り直しになります。Aさんの許可は、あくまでもAさんが経営しているときにのみ有効です。許可はAさんに対して与えられたものだからです。
一方、株式会社Xの代表取締役のY社長が、血筋的には赤の他人のZさんに社長の椅子を譲ったとしても、許可は株式会社Xという法人に与えられているものなので、許可は継続します。
ただし、法人の役員が変わるときは変更届が必要です。(省令第10条の10第1項第2号ロ)

ここで、マニアックなのが次のようなケースです。


<事例>

株式会社Cの代表取締役のD社長から、今まで専務取締役であったEさんに社長の椅子を譲るが、Dさんは引き続き、平取締役として会社に残る。
さぁこの時、許可証の書き換えは行うでしょうか?

答えは、「この通知どおりの運用をするのであれば、書き換えは行わない」です。

現在、多くの自治体の許可証は法人の場合は、その代表取締役の個人名まで記載しているものが多いと思います。省令様式第7号他も書くように規定していますし。しかし、前述のケースの場合、法人役員自体に変更はありません。代表権が移っただけで、取締役自体には変更は無いのです。この時、実は変更届出の対象にはしていないんです。

先ほどから書いてある処理業変更届出を規定した省令第10条の10を見てください。役員の変更は届出の対象なのですが、代表者の変更は届出の対象にはしていないんです。
(もちろん、社長を引退すると同時に、役員からも外れるというパターンや、新社長は今まで平取締役にもなっていなかった人物、という時は「役員」が変わりますから変更届出は必要になりますよ。)

よって、社長は交代するが法人の役員に変更は無いという時は変更届出の対象にはならない。そうなると先ほどの通知、「処理業に係る変更の届出をする場合において、」とありますね。変更届出が無いので、よって、許可証の書き換えもしない、となってしまいます。

とは言うものの、許可証には代表取締役の個人名が記載してある訳なので、なにかと不都合もあるでしょう。
前述の通り、そもそも「許可証の書き換えは法定事項ではない」、いわば「行政サービス」ですから、たいていの自治体では代表取締役が替わったときは、許可証の書き換えには応じてくれるものと思います。
この辺が、法令ではない通知の融通性というものなのかもしれませんね。

この通知は、前述の通り、「許可」に関するいろんなことが記載してあります。
今回は、「許可証の書き換え」ということをテーマに、業の「変更」ということを取り上げてみました。 次回は、「変更許可」や処理施設の変更についても、取り上げてみます。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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