リヴァックスコラム

第6回 「処理業変更許可」

長岡 文明氏

前回は、「許可証の書き換え」を例に、処理業の変更届出について説明しました。
今回は、「処理業変更許可」について考えてみましょう。

通知の題名は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について 」であり、この題名の通知は、法令が改正される度に発出されていますから、同じ題名の通知は数多く存在しています。よって、探すときは、発出年月日や文書番号を手がかりとします。
このメルマガは「通知」をテーマにお送りしていますので、ちょうどいい機会ですから、先に「文書番号」について書いてみます。


1.文書名と文書番号

環境省からの公文書の文書番号は、平成15年以降は西暦の下2桁+月日+3桁番号の形式を取っていますから、文書番号を見ただけで発出年月日はすぐわかります。
たとえば、西暦2014年12月27日に発出したB担当課の3つめの文書なら、B発第141227003号のように付けているようです。平成15年以前は、年度を通して番号を振っていました。

今回の通知は「環計第37号」という文書番号でして、短くて格好はいいのですが、「環計第37号」という文書は毎年ある訳で、ましてや、今回の通知のように同じ題名が数多くあると、探すのに一苦労でした。地方自治体は、現在でも通年番号制のところが多いようですね。
最近は、インターネットでキーワードを入れれば、検索できるので、文書を探す苦労も昔話になっていくのかもしれませんね。
では、今回のテーマの方へ戻ります。

今回の通知は、次のアドレスで原文を見ることが出来ます。
http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=11000500(環境省ホームページへリンク)
公布日:昭和52年03月26日、 環計37号、[改定] 平成12年12月28日 生衛発第1904号


2.処理業変更許可とは

処理業の許可を取得している方々は、十分承知していると思います「変更許可」。
変更許可を受けずにそのまま「商売をする(業を営む)」行為は、廃棄物処理法の中では不法投棄や不法焼却、無許可と同じく、最も重い罰則である第25条、最高刑懲役5年(正確に言えば、「五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」)が適用されます。ちなみに、排出事業者が変更許可を受けていない処理業者に委託した場合は、罰則第26条で最高刑懲役3年ですので、マニフェストを守らないときよりはるかに重い罪になります。

ですから、排出事業者の立場でも「処理業の変更許可」とはどんな行為かを知っておくことは重要です。

それでは、どんな時に「処理業変更許可」は必要になるのでしょうか?該当条文を見てみましょう。

(変更の許可等)
第十四条の二  産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。

廃棄物処理法がスタートした昭和46年当時は、「変更許可」という概念はなく、現在の変更許可に該当するような事態になったときは、それまでの許可を一旦廃止して、改めて新規で許可を取り直すと言うことをやっていたようですが、数年経った昭和52年の改正時に、現在の表現と同様の条文が第14条第5項として制定されました。

その時から課題になったのが、「どんな時に変更許可は必要か」です。


3.「事業の範囲を変更」

条文からは明確ですね。「事業の範囲を変更しようとするとき」です。ところが、この「事業の範囲」というものは、なんなのかがどうもよくわからない。
産業廃棄物に関して廃棄物処理法で条文上「事業の範囲」という文言が最初に登場するのは、この第14条の2第1項なのです。だから、法律では「事業の範囲」は定義していないんです。

じゃ、政令や省令には登場するかと言うと、許可申請について規定した省令第9条の2に登場します。
(※ 最初に登場するのは委託契約書の事項を定めた第八条の四(委託契約書に添付すべき書面) のところですが、ここでは「許可証の写しの添付」を定めているだけです。時系列的に言えば、まず、許可申請し、許可証を入手してから、排出者と契約を締結し、その時に許可証の写しを添付する、となりますので、例示の条文としては申請時を提示しました。)

(産業廃棄物収集運搬業の許可の申請)
第九条の二  法第十四条第一項の規定により産業廃棄物収集運搬業の許可を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した様式第六号による申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

一  氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二  事業の範囲
三  事務所及び事業場の所在地
(以下、略)

たったこれだけです。
許可申請に行き、「申請書に<事業の範囲>について記載してください」と言われても、何を書いていいかわからないですよね。それに、一旦書いて許可になった以降は、その「範囲」を勝手に変えれば、「無許可変更、最高刑懲役5年」になっちゃうってことですから、不用意に書くわけにはいかないですよね。

そこで、登場したのが「通知」です。

第4回に書いたとおり、法律でも政省令でも規定していない事項を、「上手く行くように」と親心で示しているのが「通知」でしたね。(参照:コラムVol,4)

BUNさんが調べた限りでは、「事業の範囲」について具体的、詳細に述べたのは冒頭で紹介した昭和52年の通知からで、この表現、言い回しは、現在の平成25年3月の通知と根本的なところでは変わっていません。
ちょっと長いですが、関係箇所を抜粋してみましょう。

1.一般廃棄物処理業に関する事項
(1)(前略)・・・事業の範囲とは、取り扱う一般廃棄物の種類(例えば、ごみ、し尿等)並びに収集、運搬及び処分(焼却、脱水等の中間処分の種類並びに埋立処分及び海洋投入処分の最終処分の種類ごとに区分すること。)の別ごとに定めるものであること。
4.産業廃棄物処理業に関する事項
(3)産業廃棄物処理業の事業の範囲は、一般廃棄物処理業の事業の範囲に準じて取り扱うこと。なお、産業廃棄物の種類は、有害な産業廃棄物である場合には、これに含まれる有害物質の種類ごとに細分した産業廃棄物の種類(例えば、水銀を含む汚でい等)とするほか、必要に応じ産業廃棄物の性状に応じた区分(例えば、有機性の汚でい等)を行つて差し支えないこと。

この通知により、『事業の範囲』とは、「廃棄物の種類」と「処理の種類」である、となりました。

<参考例>
中間処理業を例に取れば、「木くずの焼却」の許可を取っている者が、「紙くずの焼却もしたい」というときは、「廃棄物の種類」が変わりますから、「事業範囲の変更」となり、変更許可が必要です。

また、「木くずの焼却」の許可を取っている者が、「木くずの破砕をしたい」というときは、「処理の種類」が変わりますから、「事業範囲の変更」となり、変更許可が必要です。

しかし、「木くずの焼却」の許可を取っている者が、「焼却施設を増設したい」という時は、「廃棄物の種類」も「処理の種類」も変わりませんので、「事業範囲の変更」とはならず、変更許可は不要です。なお、平成4年以降は、収集運搬と処分は別許可としていますから、「木くずの収集運搬」の許可を持っている者が、「木くずの焼却もしたい」という時は、変更許可ではなく、収集運搬の許可はそのままに、処分業の許可を別個に新たに取得することになります。また、普通の産業廃棄物と特別管理産業廃棄物も平成4年以降は別許可となっています。


4.変更許可と変更届出

「3.」で書いたとおり、変更許可は「事業範囲」とされる「廃棄物の種類」と「処理の種類」に限定されます。
これ以外の事項の変更は、前回取り上げた「変更届出」となります。具体的には変更許可申請は省令第10条の9、変更届出は第10条の10を参照してみてください。
この変更許可と変更届出、大きく違う点が2つあります。

一つは手続きの時期です。変更許可は「あらかじめ」、変更届出は「変更後(10日以内)」。

もう一つは、罰則が大きく違います。変更許可違反は最高刑懲役5年、変更届出違反は最高刑でも罰金30万円です。まぁ、罰金だからかまわないっていうことではありませんが。 収集運搬業を例にすれば、品目の追加は「あらかじめ」、車両や法人役員の変更は「変更後」となりますね。


5.「事業の範囲」と「許可条件」

この話は前回の「許可の取り扱い通知」も併せて見ていただきたいのですが、「事業の範囲」と「許可条件」は違います。 (参照:コラムVol.5)
「許可条件」は生活環境保全上必要な事項について付けるものであり、それ以外の要因では付けることが出来ないとされています。(「許可の取り扱い通知」6 許可の条件参照)

一方、「事業の範囲」は前述の通り、「産業廃棄物の種類は、有害な産業廃棄物である場合には、これに含まれる有害物質の種類ごとに細分した産業廃棄物の種類(例えば、水銀を含む汚でい等)とするほか、必要に応じ産業廃棄物の性状に応じた区分(例えば、有機性の汚でい等)を行つて差し支えないこと。」としています。
特別管理産業廃棄物処理業の許可証が、とても詳細に限定的に記載してあるのを見たことがある方も大勢いらっしゃるでしょう。普通の産業廃棄物処理業の許可証でも、「石綿含有廃棄物を除く」とか「自動車等破砕物(シュレッダーダスト)を含む」とかの記載もよく見受けられます。

これは「事業の範囲」の範疇なので、これに違反すると、「無許可変更」となってしまうということですね。 改めて、ご自分の会社の許可証、ご自分の会社の委託契約書に添付されている許可証の写しを見てみるのも面白いかと思いますよ。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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