リヴァックスコラム

第4回 「そもそも通知とは」

長岡 文明氏

「通知の背景と理解」ということで、いままでに「HMT通知」「0円回収通知」「手元マイナス通知」と3回にわたりお付き合いしてきていただいています。

今回は、「そもそも」に立ち返り、この「通知」というものについて、確認してみたいと思います。
そもそも、この国からの「通知」というものに、私たち国民は、どの程度従わなければならないものでしょうか?
「通知」は、いくら国の偉い役職の人が発出したものであっても、制度上は大臣告示として官報に載った訳でもないし、閣議決定された訳でも、ましてや国会で決議されたわけでもありません。
その制度に携わっている単なる一公務員が「こんなふうにやってね」とお手紙を出したってことなんです。したがって、国の公式な制度としては認められている訳ではなく、だから極めて「脆弱な制度」と言えるでしょうねぇ。
では、その程度の「お知らせ」なのに、どうして世の中全体がその「通知」のとおりに動くのでしょうか?
BUNさんは、次のように考えています。

<見解>
役所の「通知」は、役所の中では「それなりに」偉い人が発出する。皆さんの会社でも、社長さんの言うことを社員さんは聞くでしょ。社長の指示に従わなかったら、お給料もらえないし、へたすりゃクビにされちゃう訳ですから。
と言うことは、部長さんの言うことも、課長さんのいうことも、係長さんの言うことにも従うってことになりますよね。
まぁ、時々は無視することもあるかもしれないけど、少なくとも建て前としては「上司の言うこと」には従う。
それは、単に「偉い」ってことだけじゃなく、組織としての意志であったり、経験が豊富な先輩の言葉として、その通りやった方が間違いは少ないって事もあるからだと思うんです。
国をはじめとする役所の「通知」も、それと似たようなもんだと思えば、割と理解できます。
広く国民全体に対しては、強制力はないとしても、上司の出した「通知」には「部下」は従わなくちゃならない。役所の偉い人の通知なら、その人より下の人は、その「通知」に従う。役所は、法律を動かすところ。実際に、その法律を運用する第一線の行政マンが、上司から「こういうふうに運用しなさい」と指示が出されていたら、普通はそのとおりに法律を運用する。ここが、民間の一企業の「通知」と、役所の「通知」の違いと言ってもいいかもしれませんね。
つまり、一企業の「通知」は、その企業の社員にしか強制力はないけど、役所の「通知」は「役所の内部にしか強制力がない」通知であっても、その通知に従って行政指導されたら、たいていの国民はそれに従う、ということになる。
現在、いろんな分野・事柄で登場する「マニュアル」「ガイドライン」「指針」なども、たいていは「通知」という形で、行政のかなり上の役職の人の名前で発出されます。
でも、法律ではないのですから、このとおりにやらないからといって、「法律違反」ということにはなりません。
しかしたいていは、こういった「マニュアル」「ガイドライン」「指針」などは、法律そのものを作った人が、その法律をうまく動かせるように、わかりやすいように書いてくれています。
ですから、まさに、前述の「先輩、経験者からのアドバイス」と同じように、尊重した方がなにかと得になることがほとんどでしょう。
では、そういったものに従わないとどうなるのでしょうか?
前述の通り普通は、行政では「偉い人」の方針通りにやらせる方が、(やってもらう方が)なにかとトラブルも少なくうまくいきます。だから、「そういうふうにやってくれませんか」と行政指導を行います。
昔は「強力な行政指導」をやった分野もありましたが、最近は行政手続法の規定も整備されてきたので、同意を得られない行政指導はあまりやらなくなりました。まぁ、そのうえで、争議になれば裁判で決着付けましょうという時代だってことです。
たいていの人は裁判まではやりたくありませんから、無難な道を選択したい。何も苦労して茨の道を進みたくない。結局、たいていの場合は、「通知」どおりに世の中は動いていくってことになります。
まぁ、「通知」が間違った方向なら困りますけど、国や役所が出している「通知」は、「よかれ」と判断して発出しているものですから、それはそれでいいんではないでしょうか。
繰り返しになりますが、「通知」は、制度上は国民の総意である「法律」ではありませんし、「告示」でもありません。

<政令と省令について>
ついでなので、政令と省令についても触れておきたいと思います。(なお、BUNさんは、法律学者ではないので、専門に法律を専攻した方から見るとおかしな言い回しがあるかもしれません。まぁ、30年間廃棄物処理法と付き合ってきて、こういうふうに考えるとわかりやすいよってレベルで聞いて下さい)
皆さんは、どうして法律に従うのですか?従わないと罰せられるから?従っていると褒められるから?それもあるかもしれませんが、そもそも法律とは、みんなで決めた「ルール」な訳です。
たとえば、「1+1=2」のような宇宙の真理とも言うようなルールは、特段、人間が決めなくても、一向に構いませんよね。 ところが、「右側を歩くか?左側を歩くか?」は、本来であれば、どっちでもいいことです。しかし、狭い道で、みんながバラバラに「俺は右を歩く、私は左を歩く」とやりだしたら、衝突が起きて、とても歩きにくいですよね。
そこで、宇宙の真理ではないけれど、お互い同士の「ルール」として、「道を歩くときには右側を歩きましょう」とルールを決める訳です。


このルールはみんなで決めたルールですよね。じゃ、ルールに従わなければどうなりますか?そうです。自分も不便だし、他の人たちにも迷惑をかける。そして最後には「あいつはみんなで決めたルールに従わないのだから、私たちの仲間には入れないようにしよう」となってしまう訳です。つまり、「みんなで決めたことはみんなで守ろう」これが、ルールであり、それを守れない人は「仲間から仕打ちを受けたり」「仲間はずれにされたり」ということになります。
国民みんなのルールが「法律」と言う訳です。だから、法律は国民の代表である国会でなければ制定することはできないですね。そして、そのルールに従わなかった時の「制裁」も国民の総意である「法律」でなければ原則的に制定できない訳です。(ここが、民主主義の日本のいいところですよね。どこかのお国のように将軍様の機嫌一つで処刑される、なんてことはない「罪刑法定主義」の社会です。)
よって、罰則は法律でないと規定されない。
ちなみに、政令とは「閣議決定」する「ルール」で「特に法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
(憲法第73条第6号ただし書)」「法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない(内閣法第11条)」という規定があります。
省令とは各所管大臣の命令であり、その大臣の決裁で制定することができます。「省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(国家行政組織法第12条第3項)。」という規定があります。
このように政令や省令は法律ではありませんから、罰則をかけることはできないということになります。
こうなると、不心得者などは「どうせこんなルール守らなくても罰則無いんでしょ」と思っちゃいますよね。
そこで、たいていの政省令(政令と省令をあわせて表現する文言)では、「法第○条第△項に規定する○○については、次のとおりとする」のように規定するんですね。
つまり、政省令に罰則は無いけれど、その規定を守らないってことは、法律の「第○条第△項」に違反していることになる、と規定する訳です。これで間接的に「政省令違反は法律違反」となるように作るわけです。

さて、今回のテーマの「通知」もほとんどの場合、政省令と同じような「作り」にしています。すなわち、「このガイドラインは廃棄物処理法第△条第◇項第○号で規定する○○基準について示すものである」のようにして発出されています。
まぁ、法令はいろんな制限があり、わかりにくい文章表現しかとれない場合もあります。
たとえば、法令の中に挿絵が入ったのを見たことある人いませんよね。
昔から、「百聞は一見にしかず」という諺がある位なので、何百文字の文章より、たった一つの絵の方が判りやすい場合は多々あります。
最終処分場基準省令を読まれた方も大勢いらっしゃると思いますが、あれを文章で読んだだけで理解できる人物はおそらく世の中に存在しないと言えるでしょう。
でも、通知や「維持管理マニュアル」に登場する挿絵やフロー図を見れば、概略理解することができます。

<まとめ>
では、今回の確認と復習をしてみましょうか。
そもそも「通知」とは、国や自治体の「偉い役職の人」が組織内の部下に対して発出した文書である。
だから、組織内の人間には強制力・支配力はあるが、組織外の人間には強制力はない。
行政組織で発出された「通知」は、行政担当者には支配力があるから、行政担当者は「通知」に従って行政指導を行う。
行政指導を受ける民間も自ずと、その方向で行動する。
結果として「通知」は広く世の中で「そのとおり」に運用される。
そもそも「通知」は、その多くは制度を作った立場の人が、法令ではわかりにくい表現、箇所を解説したものが多いから、多くの場合、「通知」に従った方が民間も得になる。
政省令とは、法律とは違って、国会が決めたものではない。よって、罰則は規定できない。
しかし、たいていの政省令は、法律を受けた形で制定されていて、政省令に違反する行為は、間接的に法律に違反すると判断される場合が多い。

と言うことで、法律はもとより、政省令や通知も安易に発出しているものではありません。自分だけの目先の事柄だけ見て判断するのではなく、その政省令が出された通知が、発出された背景や経緯なども考えて、上手くお付き合いしていくことが大事かな、と思います。
BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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