リヴァックスコラム

第1回 「HMT通知」『情報伝達不足は委託基準違反!』

長岡 文明氏

みなさん、こんにちは。BUNさんと言います。平成25年11月にリヴァックスさんの研修会をやらせていただいたご縁で、コラムを担当することになりました。お付き合いいただければと存じます。

当面のテーマは表題の「環境省の通知の背景と内容解説」などをやってみようかと思います。通知って実は、グレーな廃棄物処理法を詳細に定めていたりするかなり重要な部分なのですが、読みづらく、そもそも通知の存在を知らない方も意外と多く見受けられます。また、その通知がでた背景を知らないと、まったくもって何のことなのかもわかりづらいところです。そのようなところを、取り上げていければと思っております。

第一回目は、平成24年9月に発出された「ヘキサメチレンテトラミンを含有する産業廃棄物の処理委託等に係る留意事項について(通知)」(以下、「HMT通知」と記載します。)を見てみましょう。
原文をお持ちでない方は、アドレスをご覧下さい。
http://www.env.go.jp/hourei/add/k042.pdf
(環境省ホームページへリンク)

おっと、その前に、「そもそも、こういう通知、通達の存在をはどうしたら知ることができるのか?」をご存じない方のために。
今は、環境省のホームページを注意深く検索するのが、もっとも早いと思いますが、それほど急がないが、過去の通知を系統立って見ていきたいって方は、なんといっても日本環境衛生センター刊「廃棄物処理法の解説」をお勧めします。この17年版、24年版は、編集にBUNさんも参画させていただきましたので、自信を持ってお勧めします。
なお、重要通知(ただ、なにをもって「重要」と判断するかという点は残りますが)は、毎年刊行される日本産業廃棄物処理振興センター、前述の日環センターの三段対象廃棄物処理法の中にも掲載されています。
閑話休題
さて、この「HMT通知」、簡単に結論を言えば、「処理業者は訳のわからない産廃を受け取るのはやめましょう」、「排出事業者は自分の出す産廃の性状は、委託業者にちゃんと伝えましょう」という極めて常識的なことです。
では、なぜ、こんな当たり前のことを今更通知しなければならなかったのでしょうか?
回りくどくなりますが、次の事例は廃棄物処理法に抵触するか考えてみてください。


<参考(フィクション)>

収集運搬業者甲は、排出事業者乙から「A地点からB地点まで産廃を運ぶように。」の委託を受けた。
ところが、甲はA地点からC地点に運んだ。
なお、甲はA地点、B地点、C地点ともに収集運搬の許可を有している。

現実問題として、乙の要望には全く応えていない訳だし、これでは乙が委託した処分業者に産廃が届きませんから、マニフェストも返ってきませんので、すぐに気がつく事案でしょう。
また、契約不履行は明白です。
ところが、廃棄物処理法の条項には引っかかるものが、無いんですね。
と、言うのは、廃棄物処理法の委託契約は排出事業者には法令上の責務がありますが、受け手側の許可業者には、そもそも締結の義務がかけられていないのです。
そのため、処理業者は委託契約のとおりにやらなくても、廃棄物処理法違反にはならないのです。(ただし、当然、民事上の契約違反にはなりますし、状況によっては他の条項に抵触するケースも出てきますから注意してくださいね。)
では、このことは「廃棄物処理法の不備」と言えるでしょうか?
BUNさんは一概にそうは言えないと感じています。なぜ、そう思うのかを、この通知発出の原因となった事件の概要を少しデフォルメして紹介しながら説明します。
説明しやすいように真実とは違う部分もありますから、フィクションと思っていただいた方がいいですね。

<通知の発端となった事件の概要>

G県のT市に所在する中間処理業者T工業は廃酸廃アルカリの中和の許可を有し、処理後の水は河川に放流している。この河川は下流で水道の原水として利用されている。
S県に所在するD社は、HMT(有機性化学薬品の一つ)を含む廃液をT工業に処理を委託した。
いつものように、T工業は中和処理をして放流したが、処理されなかったHMTを含む河川水が、浄水場で汲み上げられ、消毒剤の塩素と化合し、ホルムアルデヒドが生成され、給水停止という事態に至った。
(以降は多少フィクション)一方、同じ処理委託を受けていた別の処理業者X社は、HMT廃液を焼却処理していた。

皆さん、産廃は法令上は何種類あるかご存じですよね。
そうです。20種類です。では、この20種の中で液体は何種類ですか?
廃油、廃酸、廃アルカリの3つしかないんです。このうち廃油は油が廃棄物になったものですから、油以外の液体が廃棄物になった場合は、廃酸か廃アルカリしかありません。
そして、「廃酸、廃アルカリの処理」と言われたら、どんな処理が思い浮かびますか?
そうですよねぇ。酸、アルカリって言われたら、「中和」ですよね。
でも、ちょっと化学を専攻した方ならおわかりと思いますが、有機性の廃液を中和したって処理される訳は無いんです。ジュースや蜂蜜のPHを7.0にしたってなんの処理にもならないってわかりますよね。
ところが、このT工業は、「自分が持っている許可は、廃酸廃アルカリの中和だから」って言うことで、○○正直に中和して放流しちゃったんですね。
一方、処理業者X社は、廃酸廃アルカリの中和の許可も持っていたけど、廃酸廃アルカリの<焼却>の許可も持っていた。委託は「中和」だったけど、「焼却」処理した。
排出事業者D社、処理業者T工業、処理業者X社、廃棄物処理法違反条項はありますか?
では、皆さんは、どちらが「正しい」と思いますか?

実際の事件にあっては、D社の所在県であるS県も、T工業の所在県であるG県、政令市T市もD社、T工業に対して、行政処分することはしませんでした。また、刑事事件としても取り上げられませんでした。まぁ、違反する法令が無いんだから当然と言えば当然かもしれません。
しかし、現在、給水停止に陥った水道事業者とD社では、民事上の損害賠償が提起されているようです。

<BUNさん所感>

さて、ここでです。これほど世間を騒がせてしまった事案であったのに、なんら法令違反を問えないのは法令の不備ではないか、、、、皆さんはそう思いますか?
BUNさんはそうは思いたくないのです。
と、言うのは、廃棄物処理法上の産廃の種類は20種。しかし、現実には物質は数限りなく存在します。
と、言うことは、その処理の方法も数限りなく存在すると言ってもいいと思います。そのいろんな手法をことごとく法令で規定することは可能でしょうか?
それでなくとも、訳のわからない廃棄物処理法をこれ以上事細かなルールでがんじがらめにすることが、正しい方向だとはBUNさんは思えないのです。
だからこそ、処理業の許可にあたって、業者に求められている資質は「適確に遂行できる能力」なはずです。
許可業者は、専門家のはずです。素人はできないからこそ、許可制度を採用していて、許可を取った限りは、その道のプロであるべきだと思うんです。
プロには、一定の裁量権、フリーハンドを与えていていいと思うんです。
自分の持てる知識、技術をフルに生かして、もっとも適確な処理を行う、それがプロである許可業者だと思うんですね。
だから、それが上手く行かなかったら、プロとして責任を負わなければならない。ある意味「結果責任」でしょう。
そういう目で見れば、前述の事例では、T工業はプロとして資格がない。X社は素人である排出事業所が「中和」で委託したとしても、より正しい対処は「焼却」と判断し、焼却処理した。BUNさんはX社こそ許可業者としてふさわしいと思うんですね。
まぁ、国もBUNさんのような思いもあったのかもしれません。
そこで、法令改正というがんじがらめの手段を講ずるよりも、「通知」という手法で対処したのかなぁと思います。
なお、この通知では「当該物質を有効に処理できる処理業者を選択するとともに、委託契約書にその含有についての情報に係る条項を含める必要があり、その情報が含まれていない場合には、規則第8条の4の2第6号ヘに違反したものと捉え得ること」との文言により、排出事業者が処理業者に正しい情報等を伝えなかった場合は、「契約書不備」すなわち「委託基準違反」となる、ということまで言及しています。
前述の通り、委託契約は排出事業者の責務です。受託業者が、適確に処理しているかまで、きっちり見ておく必要があるってことになりますね。
今回は、受託業者側は行政処分も刑事処分も受けなかった訳ですが、BUNさん個人の見解としては、受け手側のT工業は許可業者として「適確に遂行できる能力」が備わっていたかと言えば、決してそうではなかったと思います。
その意味では、許可業者としては失格であり、許可取消や、一定期間の事業停止処分はあってもしかるべきものであった考えられます。

<まとめ>

当コラムの読者の皆さんは、排出事業者でしょうか?許可業者でしょうか?
排出事業者であれば、自分が排出している産業廃棄物の情報を受託業者に適確に伝え、そして、契約が忠実に守られているか、注意していくことが重要です。
許可業者であれば、処理できない産廃については、いくらお客様を逃そうとも、できないものはできないと拒絶する勇気も必要です。また、いくら契約の義務がないと言っても、排出事業者が承知しない手法を独断で行うことは、お勧めできません。コミュニケーションを図ることが、信頼に繋がることと思います。プロとしての自覚を持ち、知識と技術の研鑽に努めていきましょう。

と、いうことでコラム第1号を書いてみましたが、最後はちょっと説教臭くなっちゃいましたね。二回目からは、皆様のリクエストに添えるようがんばってみますので、是非、ご感想をお寄せくださいね。
BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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