リヴァックスコラム
第七回 「鉱さい不法投棄事件」について
大阪の業者が排出事業者から処理を委託された「鉱さい」を岡山県倉敷市の造成地に不法投棄する、という事件が発生しました。
鉱さい自体は腐敗しませんが、そのまま土中に埋めると、鉱さいに含まれる有害物質が水等に溶出する可能性があるため、管理型最終処分場での埋立しか認められていません。
鉱さいの一般的な処分方法としては、上記の管理型最終処分場での埋立処分か、有害物質の混入をあらかじめ抑制し、路盤材等として再生利用されています。
そのため、鉱さいが大量に不法投棄されるという事態はあまり起きなかったのですが、路盤材の需要が近年減少しているため、手っ取り早く(=不当に)利益を増やすことができる不法投棄に手を染めてしまったのかもしれません。
報道によると、鉱さいを汚泥と混合した上で不法投棄をしていたようです。
この業者の許可内容を調べてみると、「鉱さい」と「汚泥」の中間処理許可自体は所持しています。
ただし、その許可は、鉱さいは鉱さい単独で、汚泥は汚泥単独で個別に中間処理する許可ですので、鉱さいと汚泥を混合することは認められていませんでした。
具体的に言うと、汚泥と鉱さいの処理設備が異なり、汚泥は「薬剤固化」、鉱さいは「破砕」するという許可内容でした。
そのため、破砕後であったとしても、鉱さいを汚泥と混合し、薬剤固化をした時点で、中間処理業の無許可変更になります。
許可内容の詳細を見ると、破砕機は、「がれき」「ガラスくず」「鉱さい」の3種類を破砕する設備とのことですので、当初はアスファルトくず等を路盤材に加工するのが中心であったものの、徐々に利幅の大きい鉱さいの取扱いが増えていったものと考えられます。
さて、ここで問題になってくるのがマニフェストの記載方法ですが、鉱さいのリサイクル施設を持っている業者の場合、マニフェストD票(中間処理終了)の返送で終わり、E票(最終処分終了)の返送はなされないのが一般的となります。
排出事業者としては、「中間処理終了報告」で安堵をしていたところ、実は鉱さいは岡山県で不法投棄状態になっていたことが急に判明した形となります。
現実的なリスクとして、行為者が不法投棄物を撤去しない場合、契約書の不備等が見つかると、排出事業者に措置命令、すなわち不法投棄物の撤去が命じられることになります。
「契約書等に不備が無ければ良い」とも言えるのですが、よほど過去に産業廃棄物で懲りた経験をした企業でない限り、契約書の記載内容をそれほど意識しないことがほとんどです。
そのため、契約書の不備がそのまま放置され、不法投棄が発覚した時点で、措置命令の対象を免れることができないというのが、多くの企業がたどる結末です。
許可証を見る際は、許可品目とそれを処理する施設をつなぎ合わせてチェックすることが不可欠なのです。