リヴァックスコラム

第2回 事業範囲の変更について

長岡 文明氏

先月号では、行政指導、行政処分、刑事処分、民事訴訟について書いてみました。
今月号からは、これについて、最近起きた事案を例に復習してみましょう。

最近起きた事案はコチラ↓

この事案の福岡の業者Aは「無許可で・・・許可取消」と言う見出しですね。

廃棄物処理法を知らない一般人にとっては、おかしな日本語です。
「どうして無許可の業者の許可を取り消せるんだ?」という根本的な疑問ですね。


(変更の許可等)
第十四条の二
産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業の範囲を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。(以下略)

見出しを見れば一目瞭然。「変更の許可」を受けていなかったんですね。

では、この「変更の許可」とは、どのような時に必要なのでしょう?そう、条文に書いていますね。「事業の範囲」を変更した時なのです。では、「事業の範囲」とはどのような事項なのでしょうか?

実は、この「事業の範囲」は条文では明確な規定が無く、通知により、「産業廃棄物の種類」「産業廃棄物の処理の方法」それに、収集運搬業については、「積替保管の有無」とされているのです。
ですので、「廃プラスチック類」の許可しか持っていない業者が「汚泥」も扱おうとする時は変更許可、「廃プラスチック類の破砕」の許可しか持っていない業者が「廃プラスチック類の焼却」も行おうする時は変更許可、そして収集運搬業者が「積替保管無し」から「有り」に変更する時は変更許可が必要となるのです。
ちなみに、変更許可に該当しない事項、たとえば、収集運搬車両や法人役員の変更等は「変更届」の対象となります。

よって、この業者Aは、産業廃棄物の収集運搬業の許可は持っていたけれど、「積替保管無し」の許可だった訳ですね。そして、変更許可を受けずに積替保管をやってしまった。

この行為が「無許可」となる訳です。さて、この「無許可変更」の罰則はどの程度でしょう?


第二十五条    次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
三   第七条の二第一項、第十四条の二第一項又は第十四条の五第一項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業を行つた者

前述の通り、この無許可変更違反は、最高刑懲役5年という廃棄物処理法では最も重い罰則が該当します。そして、この違反に対する妥当な行政処分は、平成23年3月の環境省からの通知によれば「許可取消」です。

ここまで、整理をしましょう。

正規の許可を所有していたのに、変更許可手続きをしていなかった。この行為は、廃棄物処理法罰則25条に該当する違反行為である。よって、許可権限者の福岡県は、標準的な行政処分の通知どおりに許可取消を行った。
もし、この事案で警察が動いていれば、検挙され、裁判になり、罰金や懲役刑という刑事処分の対象にもなり得る違反である、ということですね。
ちなみに、読者の多くの方は排出事業者の立場だと思いますが、この「無許可変更」の業者に委託している事業者にはどのような制裁があると思いますか?

当然、「排出者処理原則」がありますので、違反条文、それに対応する罰則もあります。


法律(事業者の処理)
第十二条
6  事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。

政令(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
第六条の二   法第十二条第六項 の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一   産業廃棄物の運搬にあつては、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であつて委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること。

法律第二十六条    次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一   第六条の二第七項、第七条第十四項、第十二条第六項、第十二条の二第六項、第十四条第十六項又は第十四条の四第十六項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の処理を他人に委託した者

このように、排出事業者は、「事業範囲」に含まれていない行為を業者に委託すれば、最高刑懲役3年という規定まである違反なんですね。

委託契約書には受託業者の許可証を添付することが、義務づけられています。「単に許可証がある」ではなく、是非、許可証の中の「事業の範囲」を確認した上で委託するようにしましょう。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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