リヴァックスコラム

第3回 名義貸しについて

長岡 文明氏

今回取り上げる違反事例は、これです。(下の記事)

この記事は親切に根拠条文まで掲載していますので、難しいことは無いと思われた方もいるかもしれません。
いつも言っていることですが、こういった違反(記事)を見たときは、「登場人物は他に居ないか」を考えてみると「面白い(不謹慎かも知れませんが、適当な表現が見つからなかったので)」んです。

まず、記事に掲載されている「自己の名義をもって、他人に行わせた」人物、この違反は「名義貸し」です。この違反は、第14条の3の3です。

では、この人物から「名義を借りて」行った人物も居るはずですよね。その人物は法律違反はしていないと思いますか?
普通に考えれば、当然、違反していますよね。それはなにか?「無許可」そのものです。

だってそうでしょ。もし、自分で許可を持っていたら、他人の名義なんか借りる必要は無いですよね。許可を持っていないから、許可業者の名義を借りた。よって、借りた人物は無許可そのものです。産業廃棄物の収集運搬無許可は、第14条第1項違反。罰則は第25条、最高刑懲役5年です。ちなみに、名義を貸した違反も罰則は第25条です。

ついでですので、「名義貸し」に似た違反を紹介しましょう。

「再委託」です。
再委託と名義貸しの違いは何かと言いますと、名義貸しは借りた人物が許可を持っていなかったわけですが、再委託は一次受託者も二次受託者も許可を持っています。
ですから、「無許可」にはなりません。しかし、このコラムの読者の方々は、ご存じだと思いますが、産業廃棄物の処理は「原則再委託禁止」です。
一次受託者がお客さんである排出事業者から処理の委託を受けた場合は、原則、受託者である一次受託者が実際に収集運搬や中間処理をしなければなりません。

しかし、たとえば、急に車両が故障したとか、運転手さんがインフルエンザに罹ったとかで処理ができなくなってしまうこともあり得ます。そういった場合は、正規の「再委託手続き」を行えば、再委託は合法です。ただし、当然ながら、二次受託者も許可を持っていなければなりません。ですので、この再委託手続きをやらなかった場合は、「再委託基準違反」となります。第14条第16項違反です。

再委託違反の特徴は、一次受託者も二次受託者も許可を持っているということです。

似て非なるケースを、もう一つ紹介しましょう。

一次受託者は許可を持っていないが、二次受託者、すなわち、実際に産業廃棄物を収集運搬したり中間処理、最終処分をする業者は許可を持っているというパターンです。

廃棄物業界以外では、時折見られるケースで、たとえば、駅から観光地を経由して旅館に客を送迎する時など、旅館側としては「わかりました。うちで送り迎えいたします」と請け負います。しかし、旅館はタクシー免許は持っていません。実際に客を乗車させて送迎するのはタクシー会社です。
産業廃棄物処理でも、平成9年の改正までは、産業廃棄物処理業の許可を持っていない会社が、産業廃棄物の処理を受託はしたが、実際に産業廃棄物の処理(収集運搬や中間・最終処分)を行う会社が許可を持っている場合は、罪にはならなかったんですね。

この行為を通称、「ブローカー行為」と言っています。
このブローカー行為が幾重にもなってしまうと、「中抜き(途中で手数料と称して金を抜く)」が多くなり、実際に産業廃棄物を処理する許可業者の手元にはあまり金が入らず、そのため不適正処理に繋がったという事案が頻発しました。
そこで、現在では、実際の産業廃棄物の処理は行わないとしても「我が社で産業廃棄物を処理してやるよ」と請けるためには、許可が必要と規定したんですね。第14条第15項違反です。

ブローカー行為の特徴、一次受託者は許可を持っていない。二次受託者(実行行為者)は許可を持っている。

ややこしいですね。ちょっと整理しながら復習してみましょう。

「名義貸し」→ 一次受託者は許可業者、二次受託者(実行行為者)は無許可業者。
「再委託違反」→ 一次受託者、二次受託者ともに許可業者。手続きの不備。
「ブローカー行為」→ 一次受託者は無許可業者、二次受託者は許可業者。

となります。

ちなみに、排出事業者の方も、上のような状況を承知で委託、産業廃棄物を引き渡しした場合は、「無許可業者委託」「委託基準違反」を問われる場合もありますので、産業廃棄物を実際に引き渡すとき、委託契約書を締結するときなどは注意する必要がありますね。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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