リヴァックスコラム

第7回 処理業許可は6分類について

長岡 文明氏

今回の事案は、解説するほどのこともなく、当コラム読者の皆さまなら十分にご承知の条文だと思います。

第2回では、「事業範囲の無許可変更」によって、許可が取り消された事例を紹介しました。今回の2つの事案とはどう違うのでしょうか?

そうですね。今回の事案は、2つとも全くの「無許可」なんです。
と、いうのは、廃棄物処理法の処理業許可制度は、全部で6区分に分けられています。

  1. 一般廃棄物の収集運搬
  2. 一般廃棄物の処分
  3. (普通の)産業廃棄物の収集運搬
  4. (普通の)産業廃棄物の処分
  5. 特別管理産業廃棄物の収集運搬
  6. 特別管理産業廃棄物の処分

です。

この6業種は条文上は、「独立した許可」ということになるのです。

ですから、いくら産業廃棄物の収集運搬業の許可を持っていても、一般廃棄物を収集運搬すれば、「一般廃棄物収集運搬業無許可」となってしまう訳です。

記事の事案の一つ目は、産業廃棄物の許可(記事には出ていないが、おそらく収集運搬業の許可だと思われます。)は持っていたんだけど、一般廃棄物の許可は持っていなかった。
それにもかかわらず、一般廃棄物を扱ってしまった、という事例のようです。

記事の事案では、「一般家庭から排出された」ということで、一般廃棄物は明らかですが、ここで注意しなければならないのは、「事業系の一般廃棄物」です。これを読んでいる皆さんの多くは、会社にお勤めの方だと思いますが、皆さんの会社からも一般廃棄物は出ますよね?

復習しましょう。
産業廃棄物は法律と政令で20種類規定されていて、このうち廃プラスチック類や汚泥などは業種の指定がありません。だから、どんな事業所から出ても産業廃棄物となります。ところが、紙くずや動植物性残渣などは業種の指定がありましたよね。ですから、普通の事務所から排出される紙くずや休憩時間に飲んだお茶のお茶殻などは一般廃棄物ということになります。
したがって、こういった廃棄物を処理委託する場合は、一般廃棄物処理業者(または、一般廃棄物の場合は市町村)に委託しなければ、記事にあるような「一般廃棄物無許可」になってしまう訳です。

おっと、先走ってしまいましたね。いつものとおり「記事には登場しない登場人物」を確認しておきましょう。
そう、排出者ですね。

罰則を確認しましょう。一般廃棄物無許可行為者は、記事にもあるとおり第7条第1項違反、罰則は第25条、最高刑懲役5年です。では、この人物に一般廃棄物を処理委託した人はどのような罰則になると思いますか?

実は、これは二通りに分かれてしまうのです。

一つは事業系一般廃棄物の場合は、これは産業廃棄物を無許可業者に委託した場合と同様に罰則は第25条(第6号)で最高刑懲役5年なのですが、・・・
二つ目、一般人が生活系の一般廃棄物を無許可業者に委託した場合。これは罰則の規定がありません。まぁ、世の中の人間は必ず一般廃棄物を排出します。しかし、全ての日本人が、廃棄物処理法を知っているわけではなく、ましてや家庭のごみを出すときに、いちいち受け手の許可を確認させることは、ちょっと厳しすぎるってことなのかもしれません。

さて、記事の後半です。この事案は「特別管理産業廃棄物無許可」です。これも記事には記載していませんが、おそらくこの業者は「普通の」産業廃棄物の収集運搬業の許可は取得していたと思います。(許可を取り消されているのですから、取り消された許可は持っていたはず。見出しにも書いているし。)

前述の通り、普通の産業廃棄物の許可と特別管理産業廃棄物の許可は別物です。だから、これと反対のパターン、特別管理産業廃棄物の許可を持っていても、普通の産業廃棄物は扱えないとなりますので、ここも注意ですね。通常、他の法令なら、より取り扱いの難しい許可や免許を持っていたら、それより簡単な分野は、改めて許可や免許を取らなくても扱えるとしているものもあります。自動車の運転免許などはそうですね。タクシーを運転できる2種免許を持つ人は改めて普通車の1種免許を取る必要はありません。しかし、廃棄物処理法の許可は違います。十分に注意が必要です。

このことなどはご承知の方も大勢いらしたと思いますが、現実としてはなかなか対応が難しいケースもあります。
たとえば、「廃油」。特別管理産業廃棄物の廃油は、灯油、軽油、揮発油類とされていて、引火点が70度未満のものとして扱われています。ですから、「これは引火点が高い(70度以上)の燃えにくい普通の産業廃棄物の廃油だろう」と思って、排出したところ、引火点を測定したところ、60度だった、となるととたんに、あなた、特別管理産業廃棄物の許可持ってないでしょ。無許可だね、となってしまう訳ですね。

もちろん、排出者側も「無許可業者委託」となってしまって、罰則は、出し手も受け手も普通の産業廃棄物の場合と同様に、罰則25条となってしまいます。

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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