リヴァックスコラム

第23回 規制改革通知について(その2)

長岡 文明氏

このシリーズも、残すところ、あと2回となってしまいました。
今回と次回は、第12回で一回取り上げたのですが(規制改革通知その1)、事項も多く、また世の中の需要も多い内容ですので、改めて取り上げたいと思います。

<規制改革通知とは?>
この「通知」は「規制改革通知」と呼んでいるのですが、小泉内閣の時に流行語にもなった「規制改革」を廃棄物処理法の分野にも広げていこうという趣旨です。
ただ、改めて言うまでもないことなのですが、法律を代表とするルール・規制は必要であるからこそみんなで承諾して作られたはずです。 その意

味からすれば、少なくとも成立した当初は、社会にとって有益だったか、一部の人達だけかもしれないが必要だったからこそできた規制な訳です。
もちろん時代が変わって、成立した時代とは周辺環境がずいぶんと違ってしまえば、 そのルールは変えて当然でしょう。 古くは織田信長がやった「楽市楽座」みたいな
もんですね。

でも、信長のちょっと前の時代、すなわち、室町時代以前は、この「市」や「座」は、社会を構成する必要な制度であり、便利、合理的(ごく一部の人達に取ってかもしれませんが)であったからこそ、大きな制度、仕組みとなっていた訳です。

<廃棄物処理法における規制改革通知とは>
では、廃棄物処理法においてはどうなのでしょうか?そもそも、廃棄物処理法がスタートしたのは、昭和45年です。たかだか、45年しかたっていません。世の中の法律には、まだまだ古い法律が存在しています。たとえば、BUNさんも以前担当したことがある「旅館業法」「興行場法」「公衆浴場法」などは、昭和22年頃に成立しています。(それ以前からある法令を大改正した)
また、同じ時期には「理容師法」「美容師法」も成立し、これらの法律は「ほとんどそのまま」の形で今日に続いています。ちなみに、皆さんは「理容師」と「美容師」の区別が付きますか?つい最近、若干の改正はあったのですが、理容師は、いわゆる「床屋さん」で、カミソリで顔を剃ることができますが、薬剤によるパーマネントをすることはできません。美容師は、いわゆる「パーマ屋さん」で、この逆です。美容師は顔を剃ることはできません。こんなルールを、70年近く継続しているんです。でも、世の中挙げて「法律改正してくれ。規制を緩和してくれ。」って動かないですよね。なぜでしょう?正直に言わせていただけば、「そのままだって、世の中、そんなに困らないでしょ」ってことなんでしょうね。
廃棄物処理法はたかだか45年です。よって、大規模不法投棄があり、世の中が困り果てて、それを防止するための法律改正なら、皆さんが賛同

するでしょうから、法律、政省令として成立しやすい。一方、「規制を緩和してくれ」というのは、いくら要望があったからと言って、その規制がやはり

今でも必要なものであれば、なかなか、法律、政省令の廃止・改正までは至らない。よって、法令の改正のないままで、「通知」という「運用」で対処しようということになる訳です。


ですから、この規制改革通知で取り上げたいくつかの課題は、「法令改正までしなくても」ということなので、どうしても「程度問題」の話となってしまいます。そこんとこよろしくです。

<本題へ>
前置きが長くなりました。第12回でも紹介していますが、改めて通知を見て、復習してみましょう。
平成17年3月に出された通知では、①コンテナの積替保管、②脱水施設、③分社化、④手元マイナスについて言及しています。
このうち、②脱水施設 (vol.12)と ④手元マイナス (コラム3)については以前取り上げましたので、今回は①コンテナの積替保管と③分社化について見ていきましょう。
なお、通知本文は次のアドレスで確認してみてください。
https://www.env.go.jp/hourei/11/000076.html

「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)において平成16年度中に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について(通知)

≪ 第一 貨物駅等における産業廃棄物の積替え・保管に係る解釈の明確化≫
産業廃棄物を収集運搬する時には許可が必要ですよね。そして、それを積み替える場合には、「積替保管」という行為が許可の範疇に含まれていないといけません。これは、紆余曲折あっての制度のようですが、まぁ、直接的には「積替保管」と称する場所において、「積みっぱなし」「保管しっぱなし」になって、大規模不法投棄に繋がっていった。「不適正処理は保管基準違反から始まる」と言われる位ですから、保管を認めるのか否かは大きなポイントな訳です。
しかし、これをバラ積みで大量に長期にわたり保管するならまだしも、コンテナに密閉して運ぶ位だったら、なにも積替保管の許可までは不要だろうって趣旨で要望が出された訳です。
もう一つ、一般的にコンテナを使用する時には許可を取りたくても、なかなか状況が許されないってケースが多いんです。
港でトラックから船に積み替える状況を思い浮かべて下さい。たいていの場合、トラックで陸送している人物Aと船で運ぶ人物Bは違うんです。
さらに、A以外のCさんやDさんも陸送してくるし、船だってBさんだけじゃなく、EさんやFさんも同じ港の同じ艀(はしけ)を使用する。
そうなると、廃棄物を運ぶコンテナ置き場は、複数の多くの人間が使用する。そうなると、「じゃ、その積替保管場所の所有権か独占的使用権があることを証する書類を添付しなさい」と言われてもまず無理ですよね。
ま、そこでこのような要望に繋がったのだと思います。
それで、環境省は、「次の条件に合うのならいいですよ」と回答した。これも正確には本文を見ていただければ一目瞭然なのですが、1つ「密封したコンテナ」2つ「コンテナが滞留しない」の2つの条件を出したんですね。
ところが前述の通り、この規制改革通知で取り上げる事案は、運用で対処するという、極めてグレーゾーンの世界なものですから、机上で考えて出した文章と、実際に現場で取り扱っている人たちとでは、その「ゾーン」の幅が違ったんでしょうね。
質問が相次いだ為、環境省はこの通知を発出した3ヶ月後に、改めて「Q&A」通知まで出したんです。

それが、規制改革通知に関するQ&A集です。
この「通知」は平成25年に改正されていますが、このコンテナ運用についてはそのままですので、こちらでご覧下さい。

「<滞留しない>ってなんだ?鉄道だって、船だって、積み込むにはそれなりの時間がかかるんだぜ」ってなとこでしょうか。
これに対して環境省は質問の形で「積載する列車・積量等が予め決まっているコンテナを、積載する予定列車の到着ホームに置いて、数時間後に到着する列車への積み込を待っ状態は<滞留>あたらない」。
さらに、「船に積み込むため艀に置いてるときはどうだい?」って聞いたら、「コンテナの数が船舶に積み込める数を超えていなければ滞留にはあたらない。」 だって。
聞かなきゃよかったのにって思った人も多かったんじゃないでしょうか。規制を緩和してくれって要望なのに、詳細に聞いていけば、そりゃまた、段々細かい話になっちゃいますよね。

さて次が②脱水施設ですが、これは既に取り上げていますので、③分社化です。

≪ 第三 企業の分社化等に伴う雇用関係の変化に対応した廃棄物処理法上の取扱いの見直し≫
まぁ、これは「雇用関係が昔のように正社員だけじゃない」。特に分社化によって、法人格が違った場合はどうなんだ?この程度なら「自社処理」って認めてよ。といった趣旨の要望なんでしょうね。
実は、古い疑義応答に次のものがあるんです。
 

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の疑義について
昭和五二年一一月五日 環産第五九号、廃止:平成一二年一二月二八日

(子会社)
問5 事業者が産業廃棄物を処理する目的で子会社を設立して当該事業者が排出する産業廃棄物を処理する場合、当該子会社は処理業の許可が必要か。
答 子会社が事業者と別の独立した法人格を有するものであれば、子会社が事業者の専属の下請けであっても、他人の排出した産業廃棄物の処理を業として行うのであるから、処理業の許可が必要である。

(親会社の処理)
問41 親会社が子会社の産業廃棄物を無償で引き取り、自社の産業廃棄物と併せて処理する場合には、「事業者がその産業廃棄物を収集若しくは運搬又は処分する場合」に該当する
こととなり、いわゆる自己処理を行っていることとなるか。
答 独立した法人どうしであれば自己処理に該当せず、親会社には処理業の許可が必要である。

 


この疑義応答の趣旨から言えば、分社化で法人格が違ってしまったら、「やっぱり許可は必要だ。」となってしまうところではありますが、そこは政府挙げての「規制緩和」の流れですから、そう木で鼻をかむような運用でもいられない。
それで、このH17年の通知になったんでしょうね。
会社・法人と従業員・労働者の関係は、分社化でなくともとても難しいケースもありまして、たとえば「許可を取っている会社でアルバイトを雇った。」そのアルバイトの作業が、「無許可行為」になるのか?じゃ、派遣社員だったらどうなんだ。じゃ、トラックを待ってる人間をトラック付きでそのま働いてもらったらどうか?など。
そこで一般的には、「許可業者がやっている」というためには、その働いている人物が、その許可業者である会社の「支配管理監督権下にある」ということが言えるかどうか、といわれています。
まぁ、この分社化についての環境省の回答も、この概念をもとに書いているようにも思います。
この回答にも数ヶ月後のQAがあります。
「建物外で行われる場合「個別の指揮監督権」が確実に及ぶことがあるか?」という質問に対して、

「構外又は建物外で行われる場合には、 一般的には個別の指揮監督権が及ぶと認めることは難しい考えるが、実質的に構内又は建物内と同等の指揮監督権が及ぶ認められる客観的要素があば、本通知が適用可能である。御質問のケースについては、本通知趣旨を踏まえ都道府県等により個別具体的に判断されることなる。」
という、わかったような、わからないような。こんな状態で、聞かれたって都道府県だって困りますよね。
まぁ、そんなこんなで、おそらく、ほとんどの自治体では、この通知が発出された以降も「法人格が違えば、許可取ってやってね」と回答しているものと思います。
ちなみに、産業界の要望で、平成24年の「日本再生加速プログラム」の中で、「企業グループでの産業廃棄物の「自ら処理」の容認」というH17年「通知」と同じようなことを要望しているのですが、これに対して環境省は2014年3月に「困難である」と回答しています。
日本再生加速プログラム(14頁参照)
まぁ、環境省としては「許可制度があるんだから、許可取ってやってよ」ということなんだと思いますね。
次回は平成18年、20年の「規制改革通知」を見ていきましょう。

 

 

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

 

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