リヴァックスコラム

第2回 「0円回収通知」『家電に見る 廃棄物該当性の判断』

長岡 文明氏

前回から始まりました「BUNさんコラム」いかがだったでしょうか?

さて、今回は平成24年3月19日に発出された「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について(通知)」(以下、「0円回収通知」と記載します。)を取り上げてみましょう。


原文をまだお読みでない方は次のアドレスをご覧下さい。
http://www.env.go.jp/hourei/add/k038.pdf
(環境省ホームページへリンク)

まずは、この通知の概要を述べてみましょう。ただ、この通知の理論構成は、極めて屁理屈でありまして、下手に省略すると筋が通らなくなりますので、「概要」とはいうものの、結構長いので我慢してお付き合いください。

<通知概要>
そもそも、<物>が有価物か廃棄物かは<金>だけの問題ではなく、総合判断によるものです。
総合判断の要因としては、「物の性状」「排出の状況」「通常の取扱い形態」「取引価値の有無」「占有者の意志」という5つの要因が基本であり、<金>すなわち「取引価値の有無」は5つの要因の内の1つにすぎない。
さて、家電リサイクル法では、その対象としている家電4品目は、通常の廃棄物以上に厳しい基準をかけている。たとえば、一定比率以上のリサイクル率の達成とか、エアコン、冷蔵庫の冷媒であるフロンなどは回収し、破壊しなければならない、とかいった基準である。
その基準を守らなければ、当然、いろんな弊害が出ることが予想される。
よって、たとえ買い取られている場合であっても、下流側(買い取られて以降の処理の状態)で、不適正な処理が行われるようなら、本来、廃棄物として取り扱われることが妥当であろう。
買い取られた廃家電が、中古家電として、再び家電製品として流通するならまだしも、部品抜き取りのために、重機で壊したり、乱雑に積み重ねたり、野焼きなんかしているようなら、それは廃棄物とみなすよ。
しかも、それは「排出の時点」、つまり、排出者が回収する人物に渡す時点からだよ。

という通知です。
この通知が出された背景には、いくつかの問題点があったようです。
具体的には、不用品回収業者を巡る問題として
①消費者トラブル
②無許可営業
③不法投棄等の不適正処理
④不適正輸出未遂
⑤海外における不適正処理
⑥家電リサイクル法の責務の形骸化
が挙げられます。
長らく地方行政、廃棄物処理法の第一線にいたBUNさんとしては、無許可や不法投棄はすぐに思い浮かぶのですが、それだけではないようですね。

<背景>
まず、①消費者トラブルですが、これは②無許可営業と深く関わりますので、併せて説明してみましょう。
通常の廃棄物処理業は、<物>を引き取る時点で金が入ります。(インプットで収入)
通常の製造業・加工業・販売業は、<物>を手放すとき、すなわち販売するときに金が入ります。(アウトプットで収入)
リサイクルは廃棄物として<物>を引き取る時点で金が入り、<物>を手放すとき、すなわち販売するときも金が入ります。つまり、インプット、アウトプットの両方で収入があるダブルポケットの状態です。
しかし、「ダブルポケット」とはいうものの、現実的には廃棄物を原料として、第三者が購入してくれる高品質の「製品」に仕上げることは大変なことであり、往々にして、バージン資源を原料とする「単なる加工業」に負けてしまうこともしばしばです。
また、競争も厳しい世界です。つまり、インプットで収入があり、アウトプットでも収入があって、はじめて成立するような事業形態であるとも言える訳です。
超一流の家電メーカーや家電販売店が関与して、構築した家電リサイクル法の正規ルートでさえ、エアコンで約4000円、テレビで約2000円のリサイクル料金(インプット収入)をもらわなければ、なかなか成立しない事業な訳です。
こんな状況の中で、インプットで収入がない事業展開は相応に難しく、アナウンスでは「0円で回収」や逆に「200円で買いますよ」と言いながら、実際には年老いたご婦人から「200円では買い取るけど、二階からトラックに積み込んだ手間賃として7万円寄越せ。」などという悪徳業者も現れてしまいました。
「200円で買う」と言っていた行為が「7万円寄越せ」になってしまう、これが①の消費者トラブルということです。そして、実質的には70000-200=69800円は、処理料金と見なされることから、②の無許可営業となる訳です。
さらに、たとえ本当に200円で買い取った<物>であっても、そこからより付加価値の高い部品を抜き取れば、「抜け殻」はより価値が下がった「廃棄物」となってしまい、それを適正に処分するほどの儲けが出ないことから、往々にして「抜け殻を放置する」、すなわち③の「不法投棄等の不適正処理」となる訳です。

では、「人件費の高い日本であるから採算が合わないのだろう」となり、中国やフィリッピンに「輸出」する訳ですが、これもクローズアップ現代等のテレビでご覧になった方もいると思いますが、正規の処理ルートでは採算が合わず、結局のところ、スラム街で黒煙をもうもうと立ち上らせて野焼きをして、下から溶けて流れ出てくる金属を回収する、という状態になってしまう訳です。
この状態が④の「不適正輸出未遂」や⑤の「海外における不適正処理」ということです。
⑥の「家電リサイクル法の責務の形骸化」は、ちょっと回りくどくなります。
そもそも、家電リサイクル法はなぜ出来たか?

廃棄物の処理責任は、排出者にあり、製品の製造者・販売者には無い、というのが原則的な概念、理念になります。
たとえば、お百姓さんが大根を作って、八百屋さんで販売した。それを購入して定食屋さんが、お客に飯を提供したが、葉っぱの部分が不要になり廃棄する。
この時、廃棄物となる「大根の葉っぱ」は誰に処理責任
があるのか?さすがに、そもそも大根を生産したのはお百姓さんなんだから、お百姓さんが葉っぱを処理する責任がある、とはなりませんね。当然、その製品(大根)の利便を享受した定食屋さんが廃棄物の排出者として処理責任を負うべきでしょう。
これが昭和の時代から続く、「排出者処理の原則」ですが、時代が発展してきて、そうとばかりも言っていられない状況になってきました。その典型が家電製品です。家電製品も廃棄される時点で、もっとも責任を負うべき存在は、その家電製品の利便を享受した消費者、つまり、排出者であることには変わりはありません。しかし、現実的には、廃棄物となった家電を消費者が適正に処理する知識や技術を持っているかというと、けしてそうではありません。そういった知識や技術を持っているのは生産者な訳です。むしろ、排出者が、適正に処理しようと思っても、処理できないような状態に生産者はしてしまった、とも言える訳です。
そこで、このような「廃製品」に関しては、生産者、販売者にも一定の責任を持ってもらおう、という概念・理念が「拡大生産者責任」と言われるものです。
この拡大生産者責任の考えに基づいて、家電メーカーは相当の負担をして、家電リサイクル工場を整備し、家電販売店は廃家電の引き取りを行うというシステム(体制)を構築したのが、家電リサイクル法という訳です。
家電リサイクル法がスタートして、当初は順調に正規ルートで回収されていました。ところがここ数年は、前述の非正規ルートである「0円回収」が幅を利かせてきて、今やそのシェアは3割にも達していると言われています。
こうなると、多額の出資をして、崇高な理念の下に、地球に優しいリサイクルを目指した「家電リサイクル法」の正規ルートは崩壊の危機に立たされます。
そりゃそうですよね。片方は、リサイクル料金として4000円支払わなければならない、一方、片方は200円とはいえ買い取ってくれる。皆さんは、どっちのルートを選びますか?そして、「200円とはいえ買い取った物を不法投棄はしないだろう」と思いますよね。単純に考えれば、人件費とガソリン代をつぎ込んで、さらに200円で買い取った<物>を投げ捨てるはずはないってなりますものね。
そんな訳で、あっという間の数年で⑥の「家電リサイクル法の責務の形骸化」の危機が訪れてしまったということです。
本来は、家電リサイクル法を改正し、自動車リサイクル法第121条と同様に「製品としての用途を廃したものは廃棄物とみなす」という「みなし規定」を制定するのが正攻法だと思うのですが、法令改正はそれなりに大変な手続きとなりますし、環境省としては、通知でも十分に対応は可能であると判断したんでしょうね。

<0円回収通知のポイント>
さて、復習を兼ねながら、この通知の重大さについて、確認していきましょう。

この通知をBUNさんは前述の通り「0円回収通知」と呼んでいます。なぜ、こんな風に呼んでいるか、この点がこの通知のポイントと言ってもいいでしょう。
皆さんは、「ただで持って行ってくれる<物>」、すなわち「0円取り引き」ですね、そういう<物>は、廃棄物だと思いますか?有価物だと思いますか?
もし、廃棄物であれば、委託契約書やマニフェストは必要ですし、当然、廃棄物許可業者に委託しなければ法律違反になってしまいますが、これが「廃棄物ではない」となれば、とたんにこういった規制から逃れることができます。
だから、「物が有価物か?廃棄物か?」はとても大きなことになってきます。
このコラムの多くの読者の方は既にご存じのことと思いますが、「物が有価物か廃棄物かは総合的に判断しなければわからない」、いわゆる「総合判断説」が定説となっています。
だから、単純に「売れればいいんだ」「買ってもらえば廃棄物処理法の適用はない」というものではない、ということは理屈の上ではご存じだとは思うのですが、そうは言っても、  普通、人が金を出して買っていってくれた物まで廃棄物だとは思っていないですよね。

ところが、この「0円回収通知」では、まさに「0円、無料は言うに及ばず、たとえ、100円、200円で買い取れられている場合であっても、廃棄物処理法を適用する」と明言しているんです。
ただし、この通知で言明しているのは、通知の正式名称の通り「使用済家電製品」、すなわち、家電リサイクル法の対象となる、テレビ、洗濯機、エアコン、冷蔵庫の4種の家電についてです。
ちなみに、通称「家電リサイクル法」と呼んでいますが、この対象となる<物>は、「家庭で使用された電化製品」ではなく、「家庭向けに製造された電化製品」が対象になります。たとえば、ラーメン屋さんで使用された冷蔵庫や事務所で使用されたテレビなども、それが「家庭向けに製造された電化製品」であれば、家電リサイクル法の対象となり、したがって、これらは「産業廃棄物たる廃家電」ということになります。
つまり、こういう状態で、「0円回収業者」に引き渡す行為は、引取側は「無許可」、引き渡す側は「無許可業者委託」となり、どちらも廃棄物処理法第25条、最高刑懲役5年の罰則が規定されている行為だってことです。
廃棄物処理法に長らく付き合ってきたBUNさんとしても、この通知は驚天動地といってもいいほどの「大きな」通知だと感じています。この通知を根拠に摘発するのは難しいのではないかと思っていました。
しかし、平成25年4月に岐阜県で最初の逮捕者が出て、5月には罰金ではありましたが、刑が確定したようです。
廃棄物かどうかの原則論の総合判断説では、単に「売れれば有価物」とはなりません。
現時点では、まだまだ廃家電に限定した運用のようではありますが、今後、不適正事案では、この「通知」の理論構成が広く使われていくかもしれません。
今後の動向にも注目していきたいものです。

皆様のリクエストに添えるようがんばってみますので、是非、ご感想をお寄せくださいね。
BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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