リヴァックスコラム

第十一回 「下取回収の注意点」について

尾上 雅典氏

「下取回収」という言葉自体は多くの方がご存知と思いますが、その言葉が意味するところを正確に理解している人は、

意外にも行政職員の中でもほとんどいません。
「下取回収」は、法律の条文ではなく、役人が発出したに過ぎない「通知」でしかありませんので、法律的な根拠に基づく例外規定などではなく、単なる行政官の法律解釈でしかありません。
そのため、最低でも、「下取回収」の根拠となっている通知の内容については正しく把握しておきたいところです。

 「下取回収」に関するもっとも古い通知は、昭和54年11月26日付環整128号、環産42号の疑義解釈です。

問29 いわゆる下取り行為には収集運搬業の許可が必要か。
答 新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、収集運搬業の許可は不要である。
 通知の答の部分を細かく見ると、最初に「下取回収」が成立するための条件が並べられています。
①「新しい製品を販売する際」
②「商慣習として」
③「同種の製品で」
④「使用済みのもの」
⑤「無償で引き取り」
の5つですね。ここまでを「前半」としておきます。

 「前半」の5つの条件を満たしながら「収集運搬する」場合は、「収集運搬業の許可は不要」というのが、答の「後半」の結論となります。
 「前半」の部分で重要なポイントは、⑤の「無償で引き取り」です。
無償ということは、販売事業者は「廃棄物処理費」に相当する金銭を受領してはいけないということです。
販売事業者が「廃棄物処理費」を徴収したいのであれば、販売事業者は正々堂々と廃棄物処理業の許可を取得する必要があります。
しかしながら、商取引の一環である以上、販売事業者側が延々と無償回収に応じることができず、「廃棄物処理費」とは違う名目ながらも、実質的には「廃棄物処理費」に相当する金銭をユーザーから徴収しているケースがよく見受けられます。具体的には、ユーザーから「運送賃」や「回収ボックス費用」を徴収している事例などです。
このような場合は、「下取回収」の要件たる「無償で引き取り」には該当しないため、廃棄物処理業の無許可営業となるおそれもあります。
 また、「後半」では、「下取要件を満たした販売事業者等には収集運搬業の許可不要」と言っているだけですので、販売事業者が廃棄物の回収を委託した運送業者にまで、収集運搬業の許可不要とは言っていないことにも注意が必要です。
このため、物流網が発達した現代日本においては、下取回収通知はそのまま使うことができない内容となっています。
販売事業者以外の企業が廃棄物の回収を行う場合は、いくら販売事業者が無償で引き取りをしていたとしても、その回収を行う事業者には、収集運搬業の許可が必要となり、販売事業者との間で収集運搬委託契約を締結することも必要になるのです。

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