リヴァックスコラム

第12回 積替保管

長岡 文明氏

 

今回取り上げた事案は、「積替保管」です。 収集運搬業において、積替保管は「事業の範囲」に該当します。 この「事業の範囲」というのは、「産業廃棄物の種類」と「産業廃棄物の処理の方法」、そして、収集運搬の場合は、この「積替保管の有無」が該当します。 この「事業の範囲」を逸脱してしまうと、いわゆる「無許可変更」となります。 具体的な例を示しましょう。 廃プラスチック類の収集運搬の許可を持っていても、汚泥の収集運搬は出来ません。 汚泥の焼却の許可を持っていても、汚泥の脱水はできませんね。 収集運搬の許可を持っていても、その許可が「積替保管を含まない」という許可の場合は、積替保管はできない、ということです。 これが出来るようにするには、「変更届」ではなく、「変更許可」になるのです。 そのため、産業廃棄物の種類を間違った、処理の方法を間違った、積替保管無しの許可で積替保管を行った場合は、「無許可変更」となるのです。 無許可変更は、廃棄物処理法の中では最も思い罰則である第25条に該当しますから、不法投棄や全くの無許可と同じ罰となります。

 

さて、この「積替保管」ですが、どのような行為でしょうか? たとえば、産業廃棄物は排出者Aから排出され、処分業者Zに搬入されるとしましょう。 ところが、Aに繋がる道路が狭くて、軽トラしか入れないとします。一方、AからZまでの距離が200キロも離れているとします。 軽トラで200キロ運搬するのは、とても効率が悪い。そこで、軽トラで集めた産業廃棄物を近くのストックヤードに一旦ためて、20トントレーラーに積み替えてZまで運ぶとします。 このストックヤードのことを積替保管場所といい、ここで降ろして、積み替える行為を積替保管と言います。 前述の通り、広域的に産業廃棄物を扱っている業者にとっては必須の行為でしょうし、それ自体は悪い行為ではありません。 しかし、以前、「積替保管」と称して、ストックヤードに山積みし、そのまま雲隠れする、大量に保管し、不法投棄となるという悪質事案が頻発しました。 そこで、積替保管の行為を「事業の範囲」という許可の対象として、厳しく規制してきた経緯があります。

 

この事案からは離れますが、この積替保管、許可さえ取ればいくらでも保管できるか、というとそうではありません。 積替保管には「処理基準」が適用されます。 ちなみに、「保管基準」という「基準」は、産業廃棄物の発生場所に適用される基準であり、一旦、発生場所から持ち出された場合は、「処理基準」となり、「保管基準」ではなくなります。 その趣旨としては、「一旦持ち出した限りは、いずれは適正に処分されなければならない。その途中で保管しているということは、収集運搬の一過程なのだ」ということなのです。 ですので、一旦持ち出された以降は、「保管基準」ではなく、処理基準の中の収集運搬基準が適用されるのです。 この「積替保管」の場合、最大保管量は「搬出量の7日分」と規定されています。 さらに、「搬出量の7日分」とは、この規定が出来た時の施行通知により、「前月の搬出実績の7日分」としています。すなわち、前月に300トン持ち出していれば、翌月は300÷30×7=70トンは保管可能ですが、30トンしか持ち出してないときは7トンしか保管できないことになります。 と、言うことは前月の搬出が全くなかった場合は、翌月保管してよい量は計算上は0トンとなります。 現実には、これほど厳密には運用していないと思いますが、要は、「置きっぱなしはいけないよ」ということですね。 なお、保管量に関しては、この「搬出量の7日分」の他に、ハード的な制限も受けます。 保管できる倉庫や保管場所が無かったら物理的に保管できませんね。 そこで、屋内に保管する場合は、倉庫の容量。屋外に保管する場合は「積み上げ勾配」等の制限も受けることになります。

 

積替え保管でもう一つ注意しなければならないのは、「政令市」です。政令市とは廃棄物処理法第24条の2を受けて政令第27条で規定している「市」のことです。 この政令市のエリアで積替保管を行う場合は、収集運搬の許可自体、県知事の許可ではなく、政令市長の許可が必要となります。 今回の事案は糸島市で行われた違反であり、糸島市は政令市にはなっていませんから、福岡県の所管です。よって、福岡県知事が行政処分を行っています。 許可業者は自社が積替保管の許可を有しているのか、有している場合は、許可になっている場所はどこなのかを認識しておく必要があります。 排出者も、この積替保管行為は委託契約書の法定事項の一つになっていますから、自分が委託した産業廃棄物が違法に保管されたりしていないかも常に注意しておく必要があるということですね。

 

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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