リヴァックスコラム

第10回 種々の欠格要件 その1

長岡 文明氏

今回と次回に亘り「欠格要件」の事件を紹介したいと思います。

欠格要件とは、「許可を取る資格がない」という意味で、廃棄物処理法ではまず第7条第5項第4号に登場します。

この第4号には、「イロハニホヘトチリヌ」と10人の人物が規定されていて、これが「基本」となります。

「基本となる」と書いたのは、この条項は一般廃棄物処理業の収集運搬業について規定した条文のため、一般廃棄物の処分業、産業廃棄物の収集運搬業、同処分業、特別管理産業廃棄物の収集運搬業、同処分業、さらには一般廃棄物処理施設の設置許可、産業廃棄物処理施設の設置許可、廃棄物の輸入許可、大臣認定等いろんなところに「準用」「読み替え」「みなし」等として登場するのです。

しかも、やっかいなことに、第7条第5項第4号を全く同じに準用している制度もあれば、別の条項は適用しなかったり、若干違う規定をしていたりするものですから、廃棄物処理法の中でも特段にわかりにくいのです。

そんな訳で、全てについて正確に解説することは「不可能」(BUNさん自身が自信が無い)なので、典型的で比較的わかりやすい事案について、紹介することにしたいと思います。

今回掲載の記事には、3つのパターンが掲載されています。

 

まず、最初のO社については、「会社(法人)の役員が禁固刑が確定」したというものです。

(記事には「禁固」とありますが、廃棄物処理法上は「禁錮」なので以降は「禁錮」と書きます。)

検討すべき要素はいくつかあって、1つめは「法人の役員」ということです。O社は法人として許可を取っていた訳ですが、こういう場合は許可を取っている法人そのものは言うに及ばず、法人の役員の資質も問われることになります。

 

次に「禁錮刑」ということで、記事ではどんな法律でどんな罪を犯したかは書かれていません。でも、廃棄物処理法上はこれで十分なんです。と言うのは、廃棄物処理法では、日本のあらゆる法律でも禁錮以上の刑に処せられる場合は、廃棄物処理法の欠格者になってしまうからです。

たとえば、道路交通法でも、公職選挙法でも、医師法でも、旅館業法でも違反して禁錮以上の刑に処せられた場合は、廃棄物処理法の欠格要件に該当し、許可は取り消されることになります。

ちなみに、刑法第9条で(刑の種類)として「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」と規定していることから、「禁錮以上の刑」とは、「死刑、懲役、禁錮」ということになります。

ちなみに、「執行猶予」という言葉もよく耳にすると思いますが、これは「刑の執行を猶予する」ということで、「無罪」ではありません。「本当は牢屋に入れなくちゃならないんだけど、ちょっと様子を見ててあげよう」ということで、有罪は有罪です。

たとえば、懲役6ヶ月、執行猶予1年と言ったときは、判決から1年間、新たに別の違反をしないで過ごすことが出来たら、懲役6ヶ月ということ自体なくなる(執行されなくなる)ということです。

このO社の事案では、法人の役員がなんらかの犯罪を犯し、禁錮刑が確定したと言うことなので、この確定した時点でこの人物(役員)が籍を置いていた法人の許可は取り消されることになります。

ここにもポイントがあり、もし、この役員が「刑が確定する前」に役員を辞任したとすると、オートマチック的には法人の許可は取り消されません。(取り消されるとしても「禁錮以上の刑」という理由ではなくなる。)だから、万一、廃棄物処理業許可を取っている会社の役員が法律違反をしたことが判ったときは、裁判結果を待たずに、直ちに法人の役員を辞任した方がよいと思います。

また、O社の事案では「禁錮刑」でしたが、これよりワンランク軽い「罰金刑」で欠格者になる場合があります。これが環境法令(+暴力団関係、傷害罪等の刑法)違反です。

環境法令とは廃棄物処理法の目的(「環境保全」)を同じくする浄化槽法、水質汚濁防止法、大気汚染防止法等の法律違反の場合です。

 

さて、次のB社は「破産」という理由で取消を受けています。破産は前述のO社とは異なり法律違反をした訳ではありません。経営が上手く行かなくなった結果の破産です。

なぜ、これが廃棄物処理法の欠格要件になっているかというと、次のような理屈です。

廃棄物処理法の許可には「経理的基礎」が求められます。このことでもわかるように、廃棄物の適正処理には、相応の「金」が必要です。金繰りに困ると、廃棄物は滞留し、いずれは大量保管、不適正処理に結びつく、というものです。そのため、「破産」は欠格要件の一つとして規定されています。

 

I社の取消は二段階です。

この会社は東京都と共に山梨県でも許可を取っていたことが記事から明らかです。(その他の県でも取っていたかも知れませんが、それはこの記事からはわかりません。以下、不明な点は推測です。)

まず、山梨県内のI社の敷地内(推測:おそらく、処理施設か積替保管施設があったものと思われます。)で、大量保管等(推測)の「処理基準違反」をやっていたと思われます。(「改善命令」というのは、「基準を守りなさい」という命令なのですが、この記事からは、どのような内容の改善命令であったかは不明です。)

そこで、山梨県は「処理基準に合わせなさい」という改善命令を発出しました。

ところが、I社はこの命令に従わなかったようです。そのため、命令違反を理由として、山梨県はI社の許可を取り消します。改善命令違反で処理業の許可取消を受けたことが、「欠格要件」となるのです。

そのため、東京都(山梨県以外の自治体)は、山梨県での許可取消によりI社が欠格要件に該当したとして、(どのような改善命令であったのか。どのような違反であったのか等は直接的には無関係。)I社の許可を取り消した、という事案です。

なかなか、ややこしいですね。

O社、法人役員の禁錮刑確定による取消。

B社、法人の破産による取消。

I社、他の自治体における取消による取消。

という事案を今回は取り上げてみました。

 

BUN(長岡)<(_ _)>(^-^)/

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