リヴァックスコラム

第一回「食品廃棄物不正転売事件」について

尾上 雅典氏

2016年という年が始まって早々、産業廃棄物の排出事業者と処理業者の双方に大きな衝撃を与える「食品廃棄物の横流し事件」が発生しました。

2016年1月11日に、カレーチェーン店CoCo壱番屋が廃棄処分したはずのビーフカツが愛知県内のスーパーで販売されていることを、壱番屋のパート従業員が発見したため、壱番屋が経緯を調べたところ、壱番屋の処理委託先であった中間処理業者ダイコーが食品として転売したことを認めました。

1月13日付で壱番屋はその事実を公表し、翌日の1月14日付で新聞・テレビ等のマスメディアによって事件の内容が一斉に報じられることとなりました。

さらに、その後の行政・警察の調査進展に伴い、ダイコーの事業所から、壱番屋以外の食品関連事業者から出された食品廃棄物が大量に見つかったため、事件は一気に社会問題化しました。

ダイコー1社のみで、産業廃棄物処理業界全体に対する不信感を一気に醸成した感がありますが、行為者であるダイコーに対して適用される可能性のある刑事罰について考えてみましょう。

まず、「委託者から頼まれた産業廃棄物を処理せずにそのまま転売しているので、不法投棄になるのではないか」と考えた人が多いと思いますが、今回の事件では、食品廃棄物を捨てたり、大量に放置したりしたわけではありません。
また、当事者間の認識では、「取引価値のある食品」という共通理解があったために、あれだけ大量に横流しされたわけなので、転売を不法投棄と扱うのは困難です。

次に、「転売が再委託に該当するのではないか」について検討します。再委託の対象となる行為は、「産業廃棄物の収集若しくは運搬または処分(法第14条第16項)」とされているため、転売自体は、産業廃棄物の処理を他者に委託していることにはならないと考えられます。

確実に廃棄物処理法違反になりそうな行為は、「処理委託を受けたビーフカツの全量を堆肥化した」と、電子マニフェストによって虚偽の報告をしたことです。電子マニフェストによる虚偽報告は、廃棄物処理法第29条第12号の罰則の対象となり、「6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」の適用対象となっています。

また、ダイコーは中間処理場以外の場所に、食品廃棄物を保管するための倉庫やスペースを確保していたようなので、産業廃棄物の保管場所に関する無届変更にも該当する可能性もあります。
ダイコーは、食品廃棄物として位置付けられる「動植物性残さ」に関し、愛知県から「収集運搬業(積替え保管を含む)」の許可を取得していましたので、積替え保管行為の無許可変更(=開始)ではなく、無届変更(=届出をしないで保管場所を増設)に該当し、廃棄物処理法第30条第2号の「30万円以下の罰金」の適用対象となります。
もしも、ダイコーが積替え保管の許可を所持していない状態で、積替え保管行為の無許可変更(開始)をしていた場合は、廃棄物処理法第25条第3号の「5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、または併科」の適用対象となる可能性がありました。
「保管場所を勝手に設置する」という行為自体は同じですが、積替え保管許可を取得していたかどうかで、刑罰の重さが変わることになります。

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