リヴァックスコラム

第13回 専ら再生通知を読む その1

長岡 文明氏

1.なぜ今回の通知は出されたのか?

今年2月3日に「専ら再生利用の目的となる廃棄物の取扱いについて」と言う通知が発出されたってことですが、法令改正などがあり以前からの取り扱いが変わったんですか?

いやいや、そういうことじゃなくて、
この通知にも書いてあるとおり「解釈の明確化を図る」ために通知したようだねぇ。

「解釈の明確化」ということは「不明確」な箇所があったってことですよね。
どんなところが「不明確」だったんだろう。

実はこの「専ら再生利用の目的となる廃棄物」と言う存在は
「不明確」な要因が山ほどあり、それが廃棄物処理法の根幹にも関わることなので
実務上の解釈と運用が大変なんですよ。

と、言うと?

2.「専ら再生」はなぜ、いつから「4品目」として運用されてきたか?

ちなみにリヴさんは「専ら再生利用の目的となる廃棄物」ってどんな物だと思っているの?

そりゃ、「古紙、くず鉄、空きビン類、古繊維」の4品目でしょう。
昔からよく「専ら再生4品目」って言うじゃないですか?

ほっほー。じゃ、その4品目って法令では第何条に規定されているの?

(心中)まったく、この忙しいときに。すぐ、「第何条」とか聞くんだから。
パワハラもいい加減にして欲しいよ。法令集を突きつけて、ギャフンと言わせてやるんだから。
もっとも、実際にギャフンって言った人を見たこと無いけど・・・・。

数分間法令集とにらめっこ

・・・あれぇ、条文には「4品目」なんて一言も出てこないよ。
でも、根拠としてはここだよね。さっきの通知にも書いてあるし。

普通の産業廃棄物の収集運搬業なら「第14条第1項ただし書」です。一般廃棄物や処分業なら各該当条文。

じゃ、代表して第14条第1項で確認してみよう。
今回のテーマには直接関係しないカッコ書きの部分は省略するね。

(産業廃棄物処理業)
第十四条 産業廃棄物(中略)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(中略)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

たしかに「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物・・・者については、この限りでない。」すなわち、「業許可は不要」と規定しているね。

でも、「4品目」なんて一言も出てこないよね。

まいりました。どうして4品目に限定しているのか教えてちょうだいな。

結論から言うと、
現在では令和2年3月30日発出の「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」の中に次の一文がある。

第1 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可について
15 その他
(1) 産業廃棄物の処理業者であっても、もっぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む。)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱っている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。

へぇ、確かにここで「古紙、くず鉄(古銅等を含む。)、あきびん類、古繊維」を明示してるね。

でも、変ですねぇ。
私が先輩から「専ら再生4品目」って教わったのはもっと前、平成の時代だったよ。

その記憶は正しいです。
さっきの通知は題名を省略して「許可事務通知」って呼んでいるんだけど、「許可事務通知」は関係する法令が改正される度に改訂されて発出されるんですよ。

で、この「専ら再生4品目」について最初に出されたのは次の通知。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について
昭和46年10月16日 環整第四三号各都道府県知事・各政令市市長宛 厚生省環境衛生局長通達 改正:昭和四九年三月二五日環整第三六号
2 産業廃棄物の処理業者であつても、もつぱら再生利用の目的となる産業廃棄物、すなわち、古紙、くず鉄(古銅等を含む)、あきびん類、古繊維を専門に取り扱つている既存の回収業者等は許可の対象とならないものであること。

昭和46年って廃棄物処理法が施行された年ですよね。
と言うことは、廃棄物処理法がスタートして、初めから半世紀に亘り「4品目」として扱われてきているってことですね。

あれ?でも、この時点でも言及しているのは産業廃棄物についてであって、一般廃棄物については言っていませんね。一般廃棄物については取り扱いが違うの?

3.通知行政の難しさ

いよいよ、「専ら再生」の難しさの要因に入っていくよ。

まずこの「4品目」ってことが令和の現在も半世紀前の昭和の時代でも「通知」による運用ということがある。
最初に紹介した令和5年の通知にも「本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言である」と書いてある。

どういうこと?

平成13年に地方分権の考え方を強く取り入れて、それまでは「機関委任事務」が「法定受託事務」、「固有事務」が「自治事務」と変わった。
産業廃棄物については都道府県の法定受託事務、一般廃棄物については市町村の自治事務だね。(注:一部違う条項もあります)

どう違うの?

国は法律を立案し制定する。でも、実際の運用は自治体に任せる分野も大きい。
ただ、その「任せ方」が違う。

法定受託事務事務は「事務を任せる」のであり最終的な責任は国が負う。一方、自治事務は「そもそもその業務はあなたの仕事」ということで、最終的な責任も市町村が負う。だから不服審査が出された時は、産業廃棄物について国(環境省)が受けてくれるんだけど、一般廃棄物についてはあくまでも市町村が受けなければならないんだ。

ふ~ん。よくわかんないけど、
一般廃棄物については国や都道府県は、「他人の仕事だから口出しできない」ってことだね。

そうだねぇ。そのため機関委任事務、固有事務の時代であった昭和の時代でも一般廃棄物については、公式には国はコメントしていないんだね。

4.一般廃棄物である「専ら再生」の取り扱いは?

でも、現実的には一般廃棄物でも「4品目」として扱ってきてますよね。いいんですか?

公式には「いいか、悪いかは市町村の判断」となる。
でも、多くの、というか大多数、まぁ、全部と言ってもいいと思うけど一般廃棄物も産業廃棄物と同じように「専ら再生」は「4品目」に限定として扱ってきているんだ。

それにはこれからお話ししますいくつかの要因があるんだけど、簡単に言えば「産業廃棄物とは違う扱いにする」というその市町村独自の理論構成が出来ない、というのが一番かな。

まぁ、そうよね。人口数千人の町村に「あなたの町は他の市町村とどうして違う扱いになるのですか?」と聞かれると答えに困るでしょうからね。どうしても「全国の他の市町村と同じ扱いです。専ら再生については、産業廃棄物の扱い、考え方と同じです。」としておくのが無難よね。

じゃ、他の要因も含めて、さらに「専ら再生」の難しさを解説してくださいな。

長くなったので、続きは次回としましょうか。

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