リヴァックスコラム

第36回 重要通知「許可事務通知」で復習 その4

長岡 文明氏

みなさん、こんにちは。
ここのところ令和2年3月に発出された「許可事務通知」について見てきています。

今回はどういう話ですか?

前回までの「事業の範囲」ということから派生して、本来、産業廃棄物の正式な種類じゃ無いのに「石綿含有産業廃棄物」、「水銀使用製品産業廃棄物」が登場し、
その起源は平成7年の「自動車等破砕物」まで遡るってことでしたね。

そうそう、どうして「自動車等破砕物」を「含む」「除く」という文言が許可証に登場することになったのか、ってことからでした。

では、お願いします。

話は回りくどくなるけど、リヴさんは「安定5品目」って知っているかな。

廃棄物処理法に従事する人なら常識ですよ。
廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス陶磁器くず、がれき類の5品目でしょ。
安定型最終処分場で埋立処分可能な品目だよね。

(出典:JW振興センターテキスト)

正解。安定型最終処分場は管理型最終処分場と違って、遮水シートや水処理施設がない。
だから、汚水が出たり、腐っていたりする廃棄物は処分できない。性状的に安定している産業廃棄物しか埋め立てられないことから、「安定型最終処分場」という名称になっているんだ。

ところが、産業廃棄物としてはこの5品目なのに、安定型最終処分場では埋め立てられない産業廃棄物がある。それは知っているかな。

そんなマニアックな物までは知らないです。何ですか?

①鉛製の管又は板、
②廃プリント配線板、
③廃ブラウン管(側面部に限る)、
④廃石膏ボード、
⑤廃容器包装、
そして、⑥自動車等破砕物なんだ。
(条文の規定としては違う表現のものもあります)

これらは、産廃20種類で分類するなら何になるかな。

①鉛製の管又は板は、金属くず、
②廃プリント配線板は、廃プラスチック類と金属くず、
③廃ブラウン管(側面部に限る)は、ガラスくず、
④廃石膏ボードも、ガラス・陶磁器くずかぁ、
⑤廃容器包装は、大抵は廃プラスチック類、物によっては金属くずかな。
⑥自動車等破砕物はちょっとわからないです。

⑥自動車等破砕物の詳細は後で話すこととするけど、
廃プラスチック類、金属くず、ガラス・陶磁器くずでしょうね。

これらは安定5品目だから本来なら安定型最終処分場に埋め立ててよいものだよね。
なぜ、だめなの?

これらは一時に規定されたわけでは無いし理由もそれぞれではあるんだ。
まず、金属「鉛」なんだけど、現在の鉛の溶出基準が飽和溶解度だと超過してしまう。

飽和溶解度って、たしか、一定量の水に溶かすことのできる物質の限界量だったよね。
じゃあ、金属鉛を水の入ったコップに入れておくだけで基準値を超えちゃうってこと?

そうなんだ。
20年ほど前にWHO(世界保健機構)の基準が、それまでより何倍も厳しく改正されて、それに併せて国内の基準も改正された。だから、それまでは水道管も結構「鉛管」が使われていたけど、それだと蛇口から出てくる飲料水が基準を超過しちゃう。
それで、今は全部鋳鉄管なんかに入れ替えられたんだよ。
環境基準値は飲料基準と同じレベルなんだよ。

そうなんですね。
それで安定型最終処分場に鉛が入ってしまうと、雨や地下水に溶けて出てくる濃度で、浸透水基準を超過してしまう。だから、金属「鉛」は「金属くず」なのに安定型最終処分場に埋めてはならないってルールにしたんだね。

廃プリント配線板もこれと同じ理由。
廃プリント配線板には「ハンダ」が使われているものがあるらしい。
ハンダは鉛の合金だからね。

廃ブラウン管(側面部に限る)は?

今はテレビは液晶にほとんど代わってしまったけど、
昔のテレビの「ブラウン管」って見たことあるかな。

液晶テレビに代わって10年以上経つよね。もうわたしの実家にもブラウン管テレビは無いし、まだ子供だったので分解して見たことは無いよ。

ブラウン管の側面は分厚いガラスなんだけど、それは「鉛ガラス」と呼ばれる物で、ガラスだけど時々「鉛」や「水銀」が溶出する物があるらしいんだ。

へぇ、それで安定型最終処分場への埋立は禁止したのね。
廃石膏ボードは?

廃石膏ボードは表面の「紙」はもちろん安定型最終処分場には入れていけないんだけど、本体の「石膏」は水に触れると硫化水素を発生したりするときがある。それで浸出水処理施設が付いている管理型最終処分場で処分することにしたんだ。
もっとも、石膏ボードは、最近はリサイクルされることが多くなってきているけどね。

廃容器包装は?

廃容器包装はその物の課題では無いんだけど、容器であった宿命として、入れていた物が付着している場合が多い。たとえば、マヨネーズの容器なら、中にマヨネーズが付着しているでしょ。その付着物が溶け出してきて地下水汚染に繋がってしまう。
だから、廃容器包装は原則禁止なんだけど、中味をきれいに洗って付着していない状態にすれば、安定型最終処分場で埋め立てることは可能。

例外の例外の例外みたいな規定ですね。
で、いよいよ、肝心の「自動車等破砕物」ってなんですか。

「自動車等破砕物」は、「シュレッダーダスト」とも呼ばれるんだ。
「シュレッダーダスト」と言っても、機密書類を細かく割いたものじゃないよ。

廃棄された自動車や家電などの工業製品を工業用シュレッダーで粉砕し、鉄などの再利用資源を回収した後に残る、ガラス・ゴム・樹脂などの破片のことです。
以前は、安定型処分場に埋め立てられてきましたが、水銀・鉛・PCB・カドミウムなど有害物質が溶出する事例もあり、それで、現在では安定型最終処分場に埋め立てることは禁止されているんだ。

その法令での規定を紹介しておこうか。
ただ、この条文も括弧書きや準用も多くて長いので簡潔要約型でね。

政令(産業廃棄物の収集、運搬、処分等の基準)
第六条 産業廃棄物の収集、運搬及び処分(再生を含む。)の基準は、次のとおりとする。
三 産業廃棄物の埋立処分に当たつては、次によること。
イ 次に掲げる産業廃棄物(以下「安定型産業廃棄物」という。)以外の産業廃棄物の埋立処分は、地中にある空間を利用する処分の方法により行つてはならないこと。
(1) 廃プラスチック類(自動車等破砕物(自動車(原動機付自転車を含む。)若しくは電気機械器具又はこれらのものの一部(環境大臣が指定するものを除く。)の破砕に伴つて生じたものをいう。以下同じ。)、廃プリント配線板(鉛を含むはんだが使用されているものに限る。以下同じ。)、廃容器包装(固形状又は液状の物の容器又は包装であつて不要物であるもの(別表第五の下欄に掲げる物質又は有機性の物質が混入し、又は付着しないように分別して排出され、かつ、保管、収集、運搬又は処分の際にこれらの物質が混入し、又は付着したことがないものを除く。)をいう。以下同じ。)及び水銀使用製品産業廃棄物であるものを除く。)
(3) 第二条第六号に掲げる廃棄物で事業活動に伴つて生じたもの(自動車等破砕物、廃プリント配線板、鉛蓄電池の電極であつて不要物であるもの、鉛製の管又は板であつて不要物であるもの、廃容器包装及び水銀使用製品産業廃棄物であるものを除く。)
(4) 第二条第七号に掲げる廃棄物で事業活動に伴つて生じたもの(自動車等破砕物、廃ブラウン管(側面部に限る。)、廃石膏こうボード、廃容器包装及び水銀使用製品産業廃棄物であるものを除く。)

簡略版と言っても長くてよくは読み切れないけど、
「自動車等破砕物」や「廃石膏こうボード」「水銀使用製品」は安定型最終処分場で埋め立ててはいけないってことはわかったよ。

これでようやく、本筋の話に戻るけど、「自動車等破砕物」「石綿含有産業廃棄物」、「水銀使用製品産業廃棄物」がなぜ特出しされているかは、
「処理基準」が他の産業廃棄物とは違う特別ルールがあるからだって理解したよね。

処理基準がポイントであり、産廃の種類ではないってことが判ってきたよ。

ここで、BUNさんの主張を再度述べておくよ。

許可証の「事業の範囲」に「自動車等破砕物」「石綿含有産業廃棄物」、「水銀使用製品産業廃棄物」を「含む」「含まない」の記載をするのなら、
「①鉛製の管又は板」、「②廃プリント配線板」、「③廃ブラウン管」、「⑤廃容器包装」についても、同じように「含む」「含まない」を記載しなければならなくなる。
これを徹底してやろうとすると、「処理基準」に規定している内容を全て「事業の範囲」の「産業廃棄物の種類」に記載しなければならなくなるってことなんだよ。

なるほど。
「産業廃棄物の種類」と「処理基準」は深く関係するものではあるけれど、
それを混同して、一部のものだけを「産業廃棄物の種類」として扱うことは
「産業廃棄物の種類」と「処理基準」を別立てで規定している趣旨がボケてくる。

そう。このことをBUNさんは「概念の整理が出来ていない」と言っているんだ。

わかった、わかった。わかったから、
「許可事務通知」も「第1の1」で、もう4回も続いたので、そろそろ次に行きましょう。

じゃ、今回の「まとめ」をしておくね。

  1. 産業廃棄物の正式な種類ではないが、「事業の範囲」に「石綿含有産業廃棄物」、「水銀使用製品産業廃棄物」、「自動車等破砕物」を「含む」「含まない」が登場する。
  2. これらは本来「処理基準」で課題になる「物」。
  3. これらの他に「安定5品目」ではあるが、安定型最終処分場で埋めたてられない産業廃棄物として「鉛製の管や板」、「廃プリント配線板」、「廃ブラウン管」、「廃容器包装」などがある。しかし、「通知」で「事業の範囲に記載せよ」としているものは限定的である。