リヴァックスコラム
第55回 改正廃棄物処理法逐条で確認 その1
令和8年6月19日、ついに廃棄物処理法の改正案が可決・成立しました。
条文をざっと眺めたんですけど、
正直、どこから手をつければいいか分からなくなりました。国や自治体向けっぽい条文もありますけど、現場に直結しそうなところも多いですよね。
そこで、今回から何回かに分けて、改正法を逐条で追いかけたいと思います。
BUN先生、今日もどうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
こういうときは、やはり王道どおりに入るのが分かりやすいので、最初は第一条、目的条文からいきましょう。ここにすでに新しい用語が出てきますよ。
まずは条文をそのまま見てみよう。
第一条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物並びに要適正保管使用済金属・プラスチック物品及び要適正再生使用済金属・プラスチック物品の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
真ん中に、急に息が続かないようなフレーズが二つ入ってきましたね。
「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」と
「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」。
これは読み上げるのも一苦労です。
そうだね。なので、ここではこの二つをまとめて「要適金プラ」と呼ぶことにしましょう。
条文を引用するときはもちろん原文のままですが、説明部分では「要適金プラ」で統一します。その方が会議でも会話でも扱いやすいと思います。
助かります。原文はちゃんと押さえつつ、説明では「要適金プラ」。
それにしても、この要適金プラがよりによって第一条の目的にまで書き込まれた、というのは、相当重いですよね。
かなり重いです。第一条は、この法律全体のコンパスにあたる条文で、「この法律は何のためにあるのか」を一行で言っている場所です。そこに、従来からある「廃棄物」と並べる形で「要適金プラ」が入ってきた。
これは、「今後の解釈や運用では、廃棄物だけでなく要適金プラもきちんとコントロールしていきます」という強いメッセージだと読めます。
背景にあるのは、やっぱりスクラップヤードとか
使用済プラのヤードの問題ですよね。
「有価物だから廃棄物処理法の対象外」とされてきたゾーンで
火災や環境汚染、不法輸出が出ているあの領域。
その通り。平成30年から法律第17条の2で「有害使用済機器」の届出制度はやってきましたが、基本、「廃棄物か有価物か」という一本線だけで整理してきた結果、有価物と称されるスクラップや使用済プラが、長期にわたり山積みで放置されるような状況が広がったんだ。その一部が火災、粉じん、油の流出、海外への不適正輸出などを生んでいる。
そこで、有価物側にも別の「網」をかける必要がある、と判断されたわけだね。
その「網」の起点にあるのが、第一条のこの書きぶりです。
つまり、「うちは有価物だから廃棄物処理法とは関係ありませんよ」は、
これからどんどん言いづらくなっていく。目的の段階で、方向性がはっきり出たと。
そう意識しておくとよいと思うよ。
「生活環境」と「公衆衛生」はそのまま
一方で、条文の後ろの方にある「生活環境の保全及び公衆衛生の向上」というフレーズは、昔から見慣れた言葉ですよね。
そう、ここは改正前と変わっていないんだ。
廃棄物処理法のゴールは、
今も昔も「生活環境の保全」と「公衆衛生の向上」の二本柱。
今回、途中に要適金プラが差し込まれたけど、最終的に目指しているところは変わっていない、というメッセージでもあります。
ということは、ヤード規制や要適正保管・要適正再生の制度は、少なくとも建前としては「スクラップ業者を締め付けること」が目的ではない。あくまで、住民の生活環境と健康リスクを抑えるための手段として組み込まれた、という整理になりますね。
まさにそのとおり。
だから行政がヤードに指導するときも、「第一条の目的に照らして、こういう状態は問題です」と説明できる。事業者側からしても、「うちは有価物なので関係ない」というだけでは済まなくなってくる。
その枠組みが、第一条の一行に凝縮されているんだ。
第一条を実務でどう意識するか
目的条文だからさらっと読み飛ばしがちですけど、ここまで聞くと、第一条をちゃんと押さえておかないと後ろの条文の読み方もぶれそうですね。
実務目線で見るときのポイントを、あえて二つに絞るならどこでしょう。
一つめは、「廃棄物」と要適金プラが同じ列に並んでいる、ということ。
条文は「廃棄物並びに要適正保管使用済金属・プラスチック物品及び要適正再生使用済金属・プラスチック物品」と書いており、どちらも「適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等」の対象です。
現場での判断も、「廃棄物ですか、有価物ですか」という1本目の線に加えて、「有価物のうち、要適金プラに当たらないか」という2本目の線を引く必要が出てきます。
二つめは、「生活環境を清潔にすること」というフレーズ。
ここは、ヤードや保管場所の「見た目」とも直結します。散乱、粉じん、悪臭、油の染み出し、火災の危険など、住民から見て「これは清潔とは言えない」と感じる状態は、目的条文の観点からも問題にされやすくなる。
この感覚を頭に置いておくと、後で出てくる保管基準や施設基準の意味合いが、かなり分かりやすくなるよ。
第一条の段階で、すでにヤードのイメージが浮かんできますね。
スクラップの山とか、使用済みプラの山とか。
そう考えると、この一条は単なる「お飾り」じゃないですね。
そうだね。ここを一度きちんと読んでおくと、
以降の条文を読むときに、筋道が通りやすくなるよ。
新しい三つの定義
では、その要適金プラを支えている定義条文を見ていきます。第二条ですね。
はい。今回の改正で、第二条に新しく第七項から第九項が加わりました。
ここが要適金プラ制度の土台です。
まずは第七項から、原文を確認しよう。
七 この法律において「使用済金属・プラスチック物品」とは、使用を終了し、収集された物品で、その全部又は一部が金属又はプラスチックから成るもの(廃棄物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。
ポイントを三つに整理します。
一つめは、「使用を終了し、収集された物品」であること。まだ使っている製品や、新品の在庫は含まない。誰かが使い終わって、どこかに集められた段階からがスタートです。
二つめは、「全部又は一部が金属又はプラスチックから成るもの」という点です。鉄スクラップ、非鉄金属くず、廃電線、使用済みプラスチック、廃家電など、対象はかなり広く取り得ます。
三つめは、かっこ書きの「廃棄物並びに放射性物質及びこれによって汚染された物を除く」です。ここで、「法律上は廃棄物に当たるもの」は除外して、有価物サイドの世界を切り出しています。
なるほど。ざっくり言うと、
「有価物ゾーンにいる、金属かプラを含む使用済みのモノたち」に、
正式な名前を付けたのが第二条第七項、というイメージですね。
そうだね。この「使用済金属・プラスチック物品」が、
後で出てくる「要適正保管」と「要適正再生」の母集団になります。
次に、第八項です。
ここで「要適金プラ」の片方が出てきます。まずは条文です。
八 この法律において「要適正保管使用済金属・プラスチック物品」とは、使用済金属・プラスチック物品であつて、適正でない保管(譲渡のためのものに限る。)が行われた場合には人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な保管と生活環境の保全上同等の保管(譲渡のためのものに限る。)を要するものをいう。
キーワードは「保管」と「譲渡」です。条文をかみ砕くと、こうなります。
まず、ベースは第二条第七項の使用済金属・プラスチック物品。その中で、「適正でない保管」が行われると、人の健康や生活環境に被害を生じるおそれがあるものを抜き出しています。
そして、「だから廃棄物の保管と同じレベルの保管が必要ですよ」と言っている。
さらに、対象は「譲渡のための保管」に限る、と二度強調しています。
「譲渡のため」が二回出てくるのは、かなり意識的ですよね。
ターゲットが「流通の中継在庫」とはっきり分かります。
そうだね。スクラップヤードやストックヤードのように、「買い取って、売るまでの間ためている山」を念頭に置いた定義です。
一方で、工場構内で自家利用のために一時的に置いている鉄くずのようなものは、「譲渡のため」とまでは言えないケースもある。ここは、今後の運用で実態を見ながら判断されていくことになると思います。
イメージとしては、屋外でスクラップや使用済プラが山積みになっていて、火災や流出、飛散のリスクが高まっているような場所。
それを、「廃棄物じゃないから」と言って野放しにしないための概念が、第八項の「要適正保管」だと。
そうそう。保管の仕方そのもののリスクに着目した定義だと考えてください。
続いて、第九項です。こちらがもう一方の「要適金プラ」です。条文を見てみよう。
九 この法律において「要適正再生使用済金属・プラスチック物品」とは、使用済金属・プラスチック物品であって、適正でない再生及び当該再生のために行う保管が行われた場合には人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な再生及び保管と生活環境の保全上同等の再生及び当該再生のために行う保管を要するものをいう。
こちらは、「再生」と「そのための保管」がセットで出てきます。ベースはやはり第二条第七項の使用済金属・プラスチック物品。
その中で、「適正でない再生」や、その再生のために行う保管が行われると危ないものを切り出して、「廃棄物の再生と同じレベルの管理が必要だ」と位置づけています。
典型的には、破砕や選別の工程で粉じんや騒音、有害物質の飛散が起こりやすいスクラップ類がイメージしやすいと思います。
最近だと、リチウムイオン電池を含む機器の取り扱いなども強く意識されていると考えられるね。
整理すると、
第八項が「置き方のリスク」、
第九項が「壊し方と、壊す前後の置き方のリスク」。
そんな感じで頭に入れておくと理解しやすいですね。
とても良い整理だと思います。
定義条文を三段階で見る
ここまで聞くと、第二条第七〜第九項は、
三段階の構造だと見た方がスッキリしますね。
その通り。
第一段階が第二条第七項の「使用済金属・プラスチック物品」。つまり、「廃棄物ではない側にいる、金属・プラ系の使用済み」です。
第二段階が第二条第八項の「要適正保管」。その中でも、譲渡のための保管を誤ると危ないものです。
第三段階が第二条第九項の「要適正再生」。こちらは再生工程とそのための保管を誤ると危ないものです。
頭の中で「大きな丸の中に二つの丸が入っている図」を
イメージしてもらえると、かなり整理がしやすいと思うよ。
はい。大きな円が第七項で、
その中に「保管リスク」と「再生リスク」の二つの円が入っている感じですね。
これで、「要適金プラ」の土台はだいぶ見えてきました。
要適金プラヤード規制の入口
では、定義が分かったところで、実際に規制がかかる条文に進みたいです。
ヤード規制の本体は、どこから入るとよいでしょうか。
今回の改正で、「第四章の二 要適正保管使用済金属・プラスチック物品及び要適正再生使用済金属・プラスチック物品」という章が新しくできた。
その最初の条文が第二十四条の七です。
ここが、いわゆる「要適金プラ保管業」の許可制度の入口になります。
第四章の二ということは、
一般廃棄物と産業廃棄物の条文群とは、章からして別枠になったわけですね。
「ついでに産廃処理業の条文に1項足しました」というレベルではないと。
そうだね。要適金プラについて、「保管」と「再生」をワンセットにした新しい制度パッケージを作りました、というメッセージです。
そのうち、まず「譲渡のための保管」に関する入口を定めているのが第二十四条の七です。
第二十四条の七の骨格をざっくり押さえる
第二十四条の七は、細かく見ると第一項から第九項まであります。
今回は逐条に入る前に、骨格だけ押さえておこうか。
大きく三つの柱に分けてイメージしてください。
一つめの柱は、「要適正保管使用済金属・プラスチック物品の保管を業として行うためには、都道府県知事等の許可が必要だ」と定める部分。
ここが、いわゆる「要適金プラ保管業」の許可制そのものです。
対象行為は、第二条第八項で見た「譲渡のための保管」が基本になります。
二つめの柱は、「許可を与えるための基準」を定める部分。
事業計画が妥当かどうか。保管施設の構造や設備が基準に適合しているか。経理的基礎や技術的能力があるか。役員などに欠格事由がないか。こういった点を、産業廃棄物処理業の許可基準とよく似た枠組みでチェックすることになります。
三つめの柱は、「許可を受けた保管業者が守るべきルール」を定める部分。
政令や省令で定める保管基準に従う義務。保管量の上限。帳簿の備付け、記載、保存の義務。こうした実務的なルールが、第二十四条の七を起点として整えられていきます。
整理すると、第一条の目的で
「要適金プラも含めて生活環境と公衆衛生を守ります」と方向を出して、
第二条第七〜第九項で「どんな物を対象にするのか」を定義して、
第二十四条の七で「それを業として保管するなら、許可と基準と帳簿がセットですよ」と入口を作った。
こういう三段階の構図ですね。
そうだね。この三段階が、要適金プラヤード規制の「背骨」だと考えてください。
この背骨を頭に入れておけば、次回以降、第二十四条の七を項目ごとに読んでいくときにも筋が通りやすくなるよ。
ありがとうございます。
排出事業者の立場から見ると、
「どこまで確認しておけば筋が通るのか」も気になるので、
その辺りも教えてもらえるとうれしいです。
承知しました!次回、第二十四条の七逐条編で詳しく見ていきましょう。