リヴァックスコラム

第54回 改正廃棄物処理法で何が変わるのか その3

長岡 文明氏

令和8年6月12日に参院本会議で「廃棄物処理法改正案」が可決、成立し、同月19日には官報にて公布もされました。
施行にはまだ時間がかかるようですが、前回に引き続き、今回の改正についてBUN先生にお聞きしていきます。

ヤード問題

最近「スクラップヤード規制のための廃棄物処理法改正」とよく聞くんですが、そもそもヤードってどんな場所を指すんですか?
お客様からも「うちの置き場ってヤード?」と聞かれることが増えていて…。

今回の改正案で環境省が念頭に置いている「スクラップヤード」は、使用済みの金属やプラスチックなどを屋外で大量に保管・選別・破砕している場所のこと。
リサイクル業者などが再生資源として扱っているケースが典型例だね。

「スクラップ屋さんの広い置き場」をイメージすれば近い感じでしょうか。

そうだね。ポイントは2つあります。

使用済みの金属・プラスチック等を扱うこと
屋外で継続的に保管・処理する事業であること

これまでこうしたヤードは、多くが「有価物を扱う場所」とされ、国の廃棄物処理法の直接の規制対象外だった。
ところが実際には、騒音・粉じん・水質汚濁・火災など、生活環境への影響が各地で問題になってきた。そこで、平成29年の改正で「有害使用済機器」制度をスタートさせたんだけど、これがどうも上手く機能しなかったようなんだ。

じゃ、一つ一つ整理しながら進めていこうか。

1.「ヤード」と「普通の一時保管」はどう違う?

お客様の工場でも、敷地の一角に金属くずをストックしているケースがあります。
こうした一時置き場も、全部ヤードだと見なされてしまうのでしょうか。

誤解されやすいところだけど、改正条項が主に対象としているのは、スクラップの保管・処理を「独立した事業」として行うヤードです。
排出事業者が自社から出たスクラップや廃棄物を、収集運搬までの短期間だけ保管する「一時保管」とは、本来の立て付けが違う。

ただし、量が多く、長期にわたって屋外で積み上がっていると、見た目にもリスクの構造的にもヤードに近づいてしまうことがあるんだ。
最終的にどう整理されるかは政省令次第だけど、「一時保管だから関係ない」と思い込まず、ヤード規制で問題視されているリスクを自社も持っていないか、一度見直しておく価値は大きいと思うよ。

整理すると、既存のお客様にお伝えしたいポイントはこうなりそうですね。

ヤードとは、使用済金属・プラスチック等を屋外で継続的に扱うスクラップ置き場・処理場のこと
これまでは「有価物だから法律の外側」だったが、環境トラブル多発で国が一律規制に踏み出した
自社敷地内の一時保管も、量や期間によってはヤードに近いリスクを持ち得る

その通り。次に、新たに出来た「ヤード許可制」の中身を、許可基準のイメージも含めて解説していこう。

2.「全国一律・許可制」でヤードはどう変わる?

「これからはヤードも廃棄物処理法の規制対象に」と伺いました。
具体的にどんな仕組みになるのでしょうか。

スクラップヤードについては「保管等を行う事業に対して、全国一律の許可制度を導入する」というのが大きな柱です。
すなわち、使用済み金属などを屋外で一定規模以上保管・処理するには、都道府県知事などの許可を受ける必要が出てくる。

これまでも一部は「有害使用済機器」として届出の対象でしたが、範囲を拡大して許可制にするというのは、かなり大きな改正ですね。

そうだね。さらに重要なのは、無許可で事業を行ったり、許可基準に反した保管を行ったりした場合、廃棄物処理法に基づく行政処分や罰則の対象になる点です。
報道でも「違反したリサイクル業者への罰則」という表現で取り上げられています。

許可制になるとき、ヤードにはどのような基準が求められるのでしょうか。

詳細は今後の政令・省令で詰められますが、これまでの審議会資料を見ると、少なくとも次のような観点が重視されるとみられます。

・飛散・流出防止
・金属片やプラスチックくずが周辺に飛ばないような囲い、舗装、排水設備の整備
・火災・爆発リスクの管理
・可燃物の混入管理、区画、消火設備の配置、発火性電池等の適切な分別
・騒音・振動・粉じん対策
・破砕機などの配置、作業時間帯の設定、抑制対策
・生活環境保全
・住宅地からの距離、景観上の配慮など地域の実情に応じた条件

今までの産廃中間処理施設と同じ発想をベースにしながら、スクラップ特有の火災や油流出などのリスクも織り込んでいく形ですね。

その理解で良いと思うよ。
加えて、この改正案は「資源の国内循環」も背景に持っていて、国内のスクラップを安全に扱いつつ、きちんと資源として活用していこうという狙いも含まれているんだ。

お客様に向けては、次の3点を押さえておくと分かりやすそうですね。

スクラップヤードは、今後「都道府県許可が必要な事業」に位置づけられる
許可にあたっては、飛散・流出・火災などの環境リスクへの対策が審査される
無許可・基準違反には拘禁刑等の罰則が適用される

うん、その通りだね。
次に、既存のお客様に特に関係が深い「スクラップ取引先との付き合い方」を、改正の観点から整理していこう。

そこはうちと取引があるお客様も気にされているところだと思うのですが、ヤードが許可制になることで、スクラップの売却先や買取条件にはどんな影響が出てきそうでしょうか。

改正案の施行時期は、公布から2年6か月以内の政令で定められる予定で、ある程度の移行期間が設けられる見込みです。
ただし、その間に「許可を取得して継続するヤード」と「撤退せざるを得ないヤード」が分かれてくることは十分考えられます。

となると、「単価がいいから」とだけ見て取引先を選んでいると、数年後に急に引き取り先がなくなるリスクもあり得ますね。

おっしゃる通り!今後は、価格だけでなく「許可制度への対応力」という軸で、取引先ヤードを見ていくことが重要になるんだ。

お客様から「まず何をしたらいい?」と聞かれたら、どんなアクションをおすすめしますか?

シンプルに、取引先ヤードに次の3点を確認することから始めるのが良いと思うよ。

受け手側の業者の拠点はヤード許可の対象になる見込みか
対象になる場合、いつ頃までに許可取得を目指しているのか
許可取得に向けて、どのような設備投資や運用改善を検討しているか

この3つを聞くだけでも、「中長期的に付き合える先かどうか」のイメージがかなり具体的になる。

そうですね。そのうえで、必要に応じて代替先の検討も始めておけば、施行期日が近づいてから慌てる必要はなさそうです。

なお、今までの「有害使用済機器の届出」もそうだったけど、正規に産業廃棄物、一般廃棄物処理業の許可を取得している会社(人物)は、今回新たに許可制になる「スクラップヤード」の許可を取得する必要はありません。
もちろん、保管の対象となる金属くずや廃プラスチック類の許可を持っていることが前提だけどね。

ちゃんとした許可を取得していれば改めての「ヤード許可」は不要ということですね。

そうだね。なお、これはBUNさん個人の考えではあるんだけど・・・
正規の産廃許可を取得していれば、当然、産業廃棄物である金属くずや廃プラスチック類は扱えるし、ヤード許可の対象である有価物である金属くずやプラスチックくずも扱える。
また、罰則も、産業廃棄物処理業許可もヤード許可もほぼ同じ。適用される「処理基準」もほぼ同じ。

こういう条件でリヴさんは産業廃棄物処理業の許可を取りますか?それともヤードの許可を取りますか?

規制はほぼ同じで扱える範囲が広いなら、当然産業廃棄物処理業の許可を取得しますよ。

そうなんです。これでご理解いただけると思いますが、今回の「ヤードの許可制」は「ヤードの許可をとってやってください」ではないんですよね。
「やるんだったら、正規に産業廃棄物処理業の許可を取ってやりなさい」、「それがやれないのなら、あなたはその業務を辞めなさい。撤退しなさい。」という制度だと考えた方がいいと思うんですよ。

「やらせる」ための制度ではなく「辞めさせる」ための制度ってことですか。
そう割り切った方が理解しやすいです。

3.「排出事業者責任」とのつながり

まぁ、そうはいっても新たな制度はスタートする訳なので、ヤード規制強化と「排出事業者責任」の関係について少し話してください。
廃棄物処理法はもともと「排出事業者責任」が重要と聞きますが、ヤード規制強化とも関係しますか?

強く関係するよ。有価物として扱っているスクラップであっても、実際には廃棄物と紙一重のものも多く、「どこでどう保管・処理されているか」を気にせずに出してしまうと、将来トラブルに巻き込まれる余地がある。
改正案は、ヤード側のルール整備を通じて、結果的に排出事業者の責任を果たしやすい環境を整えるものとも言えるね。

「買ってくれるから任せて終わり」ではなく、「どこに任せているかをお客様自身も把握しておく」ことが、これからはより大事になりそうですね。
お客様には、次のようにお伝えできそうです。

ヤード規制強化により、数年スパンでスクラップ取引先の再編が起きる可能性がある
今のうちに、主要な取引先ヤードの「許可取得の方針」を確認しておくと安心
排出事業者として、価格だけでなく「適正な保管・処理」を重視した先を選ぶことが、リスク管理につながる

端的にうまくまとめたと思うよ。

これから政省令が整備され、それにともなって施行通知等も発出されると思いますので、今後とも注目していきたいと思います。