リヴァックスコラム

第53回 改正廃棄物処理法で何が変わるのか その2

長岡 文明氏

「災害廃棄物」

令和8年6月12日に参院本会議で「廃棄物処理法改正案」が可決、成立したようです。
同月19日には、官報にて公布もされました。
施行にはまだ時間がかかるようですが、前回に引き続き、今回の改正についてBUN先生にお聞きしていきます。

改正廃棄物処理法のニュースを見ていたら、
「ヤード規制」と「災害廃棄物対策の強化」がポイントと書いてありました。
ヤードは何となくイメージできるんですが、災害廃棄物の方は、正直ピンと来なくて…。

そう感じている担当者は多いね。
今回の改正案では、災害で一気に発生する大量のがれきや片付けごみを、もっと計画的に、広いエリアで協力しながら処理できるように、廃棄物処理法と関連制度を整理し直しているんだ。

今までも災害廃棄物のルールはありましたよね?
それでも、また見直す必要があったのはなぜでしょうか。

東日本大震災以降、災害廃棄物のルールは何度か整備されてきたけれど、近年は毎年のように大雨や台風で被害が出ているし、南海トラフなど大規模地震の想定もある。
そこで、「一つの自治体だけでは処理しきれない災害」が前提になりつつあって、平時から広域の連携や役割分担を、もっと法制度の上で明確にしておこうという流れになったんだ。

1. そもそも災害廃棄物とは

まず基本的なところから確認したいのですが、
「災害廃棄物」と普通のごみの違いは何ですか?

ざっくり言うと、「災害により一時的かつ大量に発生する廃棄物」だね。
倒壊した家屋のがれき、壊れた家具や家電、土砂と混じったごみ、自動車、場合によっては危険物を含むものもある。
これらを、通常のごみ処理施設だけで処理するのは難しいから、特別な計画や仕組みが必要になる。これが、廃棄物処理法上は「一般廃棄物」となることが大きな制度上の課題でもあるんだ。

災害廃棄物って一般廃棄物なんですか?

廃棄物処理法の第2条の「定義」で、産業廃棄物とは<事業活動に伴って・・・>とあるでしょ。
災害廃棄物は「災害」という「事業活動ではない」要因で発生することになるから産業廃棄物にはならない。よって、一般廃棄物って理屈なんだね。

大量に発生する倒壊した家屋のがれきが一般廃棄物となると、平常時の処理体制では対応が難しいってことは実感します。
ニュース映像を見ても、想像を超える量が一気に出ていますね。それを普通の焼却炉だけで何とかしようとしたら、とても追いつかなそうです。

その通り。だから、災害廃棄物の扱いについては、これまでも

・国の基本方針や対策指針
・都道府県、市町村の災害廃棄物処理計画

などを整えてきたけれど、今回の改正案では、これをさらに実効性のある形に見直そうとしている。

2. 改正案で強化されるポイント

今回の改正案で、災害廃棄物について特に強化されるのは、どんなところですか?

今回は、以下の三つに絞ってイメージをつかもう。

平時からの計画と指針の「つながり」の明確化
大規模災害時の広域連携と役割分担の整理
国による調査研究や技術開発の位置づけ強化

キーワードを見るだけでも、
「その場しのぎではなく、前もって備える」という方向ですね。

そう。災害廃棄物は、発災してから慌てて考えても間に合わない。
だから、

・通常の廃棄物処理計画
・災害対策の計画
・災害廃棄物対策指針

などを、国と自治体が「縦にも横にも」きちんと連携させることを、
法律の中でよりはっきりさせようとしているんだ。

今日のお話で、「災害廃棄物は、量も中身も普通のごみとは全く違う」という感覚がつかめてきました。
それに対して、改正案では

平時からの備えを制度として強化する
大規模災害を前提に、広域連携を明確にする

という方向なんですね。

その理解でばっちり。
次に、もう少し実務寄りに、「排出事業者として何を意識しておくと災害時に慌てずにすむか」を一緒に考えてみよう。

お願いします。
「うちは自治体じゃないから関係ない」と思っていたのですが、
事業者として備えられることもありそうだと感じ始めています。

3. 事業者は何をしておく?災害廃棄物と平時の備え

ここまでは制度の全体像を教えてもらいましたが、
次に「事業者として何ができるか」に絞って教えてください。
改正案をニュースで見ても、「自治体向けの話かな」と思ってスルーしがちで…。

確かに条文の多くは国や自治体の役割を定めているけれど、災害が起きたとき、実際に廃棄物を出すのは事業者でもある。
今回の改正案で強化される「災害廃棄物対策」は、間接的には事業系廃棄物の扱いにも影響してくるから、基本的な方向性を知っておく価値は大きいよ。

まず、「国や自治体は、どう変わろうとしているのか」を、
もう少し具体的に教えてもらえますか?

環境省の改正案概要を読むと、
災害廃棄物については、おおむね次のような方向性が示されている。

・平時からの計画、指針、体制の整備を一層進める
・大規模災害時の広域的な処理スキームを明確化する
・国が調査研究や技術開発を推進し、現場のノウハウを底上げする

これらは一見、自治体向けの話に見えるけれど、実際には

・どの処理施設が災害時の拠点になるのか
・仮置場や分別の考え方をどうするのか


といった点で、事業系廃棄物の動きにも関係してくる。

平時から「災害時の受け皿」を意識した施設整備が進むと、
企業側も「どこに出すことになるのか」をあらかじめイメージしやすくなりそうですね。

4. 事業者として意識したい三つの視点

次は事業者目線で、災害廃棄物に備えるときのポイントを教えてください。

とりあえず、次の三つかな。

①平時の廃棄物フローを「非常時にも使える形」で整理しておく
②自社施設の被災を想定した「一時保管・仮置き」の考え方を持つ
③自治体や委託先との情報連携の「窓口」を決めておく

なるほど…。それぞれ、順番に教えてください!

① 平時のフローを「見える化」しておく

一つ目は、平時の廃棄物の流れを、図や一覧で整理しておくこと。
改正案そのものは自治体の計画や国の技術開発をうたっているけれど、災害時には、その平時のフローがそのまま「最初の頼り先」になることが多い。

たとえば、
どの廃棄物を、どの委託先に、どのルートで出しているか
委託契約書やマニフェストの窓口は誰か

を整理しておけば、災害発生直後に連絡すべき相手がすぐ分かる。

確かに、平時から「誰に頼っているか」を見える化しておかないと、
非常時に担当者が不在だったときに混乱しそうです。

② 一時保管・仮置きの考え方を持つ

二つ目の「一時保管・仮置き」は、
今回のもう一つの改正事項の「ヤード」の話ともつながりそうですね。

そうだね。今回の改正案では、スクラップヤードの許可制導入と同時に、災害時の処理体制も強化していく方向が示されている。
平時の保管と災害時の仮置きは別物だけれど、「安全な置き方・分け方」という意味では共通点がある。

事業者としては、次のようなイメージを持っておくといいと思うよ。

被災した場合、自社敷地内のどこを一時仮置きの候補にするか
危険物や有害物を含むものは、他の廃棄物と混ぜない工夫ができるか
水害や土砂災害が想定される地域なら、流出リスクのある場所を避けられるか

「災害時だから、とにかく端に寄せておけばいい」ではなく、
事前に大まかなゾーニングを考えておくイメージですね。

そう。自治体側も、改正案を踏まえて仮置場や処理フローの検討を進めていくだろうから、企業としても自社内でできる整理をしておくと、連携がスムーズになる。

③ 情報連携の「窓口」を決めておく

三つ目の「窓口」というのは、具体的にはどんなイメージですか?

災害時には、

・自治体からの要請
・処理業者からの連絡
・本社と拠点のやり取り

が、一気に発生する。
改正案で国や自治体の役割が整理されたとしても、企業側の連絡体制がバラバラだと情報が錯綜してしまう。

だから、平時から

災害時には誰が自治体との窓口になるのか
誰が処理業者との調整窓口になるのか

を決めておき、その人が「平時の廃棄物フロー」と「災害時の連絡先」の両方を把握している状態を目指したい。

BCP(事業継続計画)の中で、ライフラインや人の安否だけでなく、
「廃棄物・環境対応」の担当もはっきり決めておくイメージですね。

5. 事業者としてのスタンス

今日の話を聞いて、
「災害廃棄物対策は自治体だけの仕事ではない」という感覚が持てました。
改正廃棄物処理法の方向性としては

災害廃棄物を前提にした計画と指針を強化する
広域連携と技術開発で処理能力を底上げする
その上に、事業者側の平時の備えを乗せていく

というイメージで捉えておけば良さそうですね。

その理解でいいと思うよ。
制度面での大きな枠組みづくりは国と自治体の役割だけれど、その中で自社の廃棄物がどう動くのかをイメージしておくことが、災害時の混乱を減らす一歩になる。

まずは、
・平時の廃棄物フローの見える化
・一時保管のゾーニング案づくり
・災害時の連絡窓口の整理

あたりから、社内で話してみようと思います。

とても良いスタートだね。
改正案の正式な成立や、自治体の計画改定の動きも追いながら、
少しずつアップデートしていきましょう。