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「遺族らの力になりたい」震災経験 県内初の遺品整理士に<産経新聞2012年1月14日>

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東日本大震災をきっかけに昨年創設された民間資格「遺品整理士」に、西宮市の屋宜明彦さん(32)が認定された。宝塚市内で中学3年のときに阪神大震災を経験し、避難所で寄り添い、支え合って暮らした地域の人たちとの絆が今も心に残る。
「故人や遺族の思いをくんで整理することで、少しでも供養になれば」。
震災から17年を迎え、”支える側”として肉親の死と向き合う人に寄り添い続ける。

「遺品整理士認定協会」(北海道千歳市)によると東日本大震災後、被災地の仮設住宅での孤立死が増え、不当に高額な請求や不適切な処理をする業者が出てきた。こうしたトラブルを防ごうと、昨年11月に資格を創設。作業手順や心構え、廃棄物処理法などを問う筆記試験があり、現在は11人が認定されている。

屋宜さんは平成7年1月、宝塚市内の自宅で被災。付近でガス管が破裂し、2週間ほど避難所で生活した。地域の人たちの結束は固く、1人で避難してきたお年寄りに支援物資を渡したり、倒壊した高齢者の家のがれき処理を手伝ったりと支え合っていたことが強く印象に残っている。

平成13年に西宮市内の廃棄物処理会社に就職。20年から粗大ごみ収集にかかわり、遺品の家具などを引き取る仕事を受け持った。「きちんと遺品を整理したくても廃棄や供養の方法が分からない」という遺族の声に「力になりたい」との思いを強め、22年に新設された遺品整理の専門部署を希望した。

その後、たくさんの遺族にかかわってきた。父の死後約2週間気付かず、悔やんでいた男性が子供のころの剣道着や竹刀を発見し、「おやじが残していてくれた」と喜ぶ姿や、妻を亡くした男性が「妻の金はいらない。集めていたぬいぐるみはすべて残しておいてほしい」と語った言葉・・・。

「物語のない人間なんていない。整理中に涙が出そうになることもあります」。遺族に「思い出チェックシート」を渡して残したいものを話し合う。遺族が語る故人の思い出には必ず耳を傾けるのがポリシーだ。

東日本大震災後に創設された遺品整理士の資格は、上司の勧めで県内で初めて取得した。被災地で増えている孤立死に心を痛めつつ、プロ意識を持って近畿2府4県で月に約20件、遺品を整理する。資格を持ったことで依頼者の信頼が厚くなったと実感している。

「本来なら遺族がすべき役割で私たちの出番はない方がいい」。それでも年々希薄化していくコミュニティーの中で、遺品で人と人との絆をつなぐ仕事に誇りを感じている。

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