リヴァックスコラム

第47回 「再資源高度化法本格施行」について聞いてみよう その1

長岡 文明氏

リヴァックスコラム愛読者の「むつご」さんからまたまた質問を受けましたので、
現在連載中の「許可事務通知」を中断して、取り上げたいと思います。

令和7年11月21日から再資源高度化法が全面的に施行されたと聞きました。
法律が出た時点での「概要」は、1年以上前のリヴァックスコラム(第25~31,33回) でも相当詳細に解説してもらった訳ですが、今回の全面施行で追加するような事項はありましたか?

はい。政省令が出てはじめて判ったことや、若干の「方針変更」的なところもあるようです。BUNさんが注目したいくつかの点を紹介していきたいと思います。

なお、法律自体は令和6年5月に公布され、改正が行われたわけではありません。
よって、リヴァックスコラム令和6年3月の第25回から9月の第31回で解説したことは「ほぼそのまま」ですので、これ以降の文章を読んでいただける方は、お手間ですが第25回以降のコラムに再度目を通していただけるとよろしいかと思われます。

ではいつものように、よろしくお願いします。

まずご紹介ですが、全面施行にあわせて、令和7年11月21日に国から「全面施行について」という環境省環境再生・資源循環局長名の通知が発出されていますので、詳細な公式見解をお知りになりたい方は是非、この通知をご覧ください。

具体的な条文に入る前に、BUNさんから見て今回、正式な政省令が出て一番注目した点はどんなところでしょう?

そうですね。環境省が法律案や公布直後に出していた「法律の概要」(旧)というリーフレットの中には「高度分離・回収事業計画の認定」の例示として、太陽光パネルと紙おむつが掲載されていたのですが、今回の大臣告示では太陽光パネル、リチウム電池、ニッケル電池の3つで、紙おむつは入っていません。
(参考までに、現在公開されている「法律の概要」(新)も紹介します。)

なにかあったんでしょうかねぇ。

まぁ、そういったことも含めて順次、推察、検討していきましょう。

なお、読者の皆さんは、
法律-政令-省令-大臣告示はこちらの環境省のページから見ることができます。

ここでちょっとアドバイスです。この法律には関連する省令が2つあります。
どちらも長いですが・・・

令和7年環境省令第22号
資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律施行規則」と

令和7年環境省令第1号
廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定める省令」です。

ここでは前者を「本則省令」、後者を「処分業者判断基準省令」とでもしておきましょう。

「処分業者判断基準省令」は令和7年2月1日から既に施行されていたんですね。
どんな内容ですか?

この省令は6条しかないのですが、この法律のキモとなるいくつかの点が規定されているので、関係箇所を紹介します。
条文はとりあえず飛ばして読み進めて、後から関係箇所を確認した方がいいかもしれません。

そうですね。じゃ、読者の皆さんは一旦「ジャンプ」していただき、<着地地点>から読み進めてくださいな。

<処分業者判断基準省令>

(再資源化の実施の目標の設定及び当該目標を達成するための措置に関する事項)

第五条 廃棄物処分業者は、その処分を行う廃棄物の数量に占める再資源化を実施する量の割合に関する目標を設定するものとする。

2 廃棄物処分業者は、前項の目標を設定するに当たっては、技術的かつ経済的に可能な範囲で、法第三条第二項第三号に掲げる目標を勘案して設定するよう努めるものとする。

3 廃棄物処分業者は、第一項の目標を達成するため、再資源化により得られる再生部品又は再生資源の供給量の安定化を図るための措置並びに同項の目標の達成状況に関する継続的な自己評価及び当該評価を踏まえた改善措置など計画的に取り組むための措置を講ずるものとする。

(その他再資源化事業等の高度化及び再資源化の実施の促進に関し必要な事項)

第六条 

1、2項 略

3 廃棄物処分業者は、前条第一項の目標の達成状況及び自らの再資源化の実施の状況を公表するものとする。


<着地地点>

まず、第五条を見てください。

どれどれ、「第五条 廃棄物処分業者は、その処分を行う廃棄物の数量に占める再資源化を実施する量の割合に関する目標を設定するものとする。」ね。
ここでいう「廃棄物処分業者」というのは、廃棄物処理法で私たちが普通に使っている「処分業者」とイコールなんですか?

法律の第四条に次のように規定しているんだ。

「廃棄物処分業者(一般廃棄物処分業者(廃棄物処理法第七条第十二項に規定する一般廃棄物処分業者をいう。以下同じ。)及び産業廃棄物処分業者(廃棄物処理法第十四条第十二項に規定する産業廃棄物処分業者をいう。以下同じ。)並びに事業者であって自らその産業廃棄物(廃棄物処理法第二条第四項に規定する産業廃棄物をいう。以下同じ。)の処分を行うものをいい、埋立処分又は海洋投入処分(廃棄物処理法第十二条第五項に規定する海洋投入処分をいう。)を業として行う者を除く。」

ということなので、イコールじゃない。
廃棄物処理法で「業者」と言うのは「許可業者」であり、排出事業者は該当しないんだけど、ここでは排出事業者でも処分をしている人は含むことになるね。
また、「処分」は中間処理と最終処分なんだけど、ここでは最終処分は除かれる。

つまり、再資源高度化法でいう「廃棄物処分業者」は、「中間処理をやっている人」のことね。

そうだね。あと、もう一つ。「産業廃棄物処分業者」を規定したカッコ書きの条文には特別管理産業廃棄物処分業の条文は入っていない。

と言うことは、「普通の産業廃棄物、普通の一般廃棄物の中間処理をやっている人(会社)」となりますね。
で、この人達は「目標を設定するものとする。」ね。
なんか「するものとする。」って言い方は、奥歯に物が挟まったような表現ですよね。「してもいいし、しなくてもいい」ってこと?

この部分は後々判ってくるよ。それは置いておいて、なんの「目標」かな。

「処分を行う廃棄物の数量に占める再資源化を実施する量の割合に関する目標」、つまり、再資源化率、いわゆる「リサイクル率」ですね。
これってちょっと大変なことなんじゃないですか?だって今までは、処理基準はもちろん守ってきましたけど、リサイクル率まではあまり気にしてこなかったですから。

そうだねぇ。今までは、「廃棄物の処理」のルールは廃棄物処理法であり、廃棄物処理法では「適正処理」が基本だから、リサイクル率までは規定してきていないね。
ただ、今までも各種リサイクル法などでリサイクル率を規定しているものもある。

たとえば?

家電リサイクル法では、対象廃家電4品目のテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンそれぞれにリサイクル率を規定しています。

これが、今後は全ての廃棄物について、中間処理をやっている人全員に「目標」が設定されるってことですよね。その目標って「高い」の?「低い」の?

それは「これから」だね。世の中のあらゆる廃棄物に一律のリサイクル率を設定する訳にはいかない。そこで、第2項を確認しましょう。

2 廃棄物処分業者は、前項の目標を設定するに当たっては、技術的かつ経済的に可能な範囲で、法第三条第二項第三号に掲げる目標を勘案して設定するよう努めるものとする。

この「法第三条第二項第三号に掲げる目標」というのはなんですか?

関係箇所だけ抜粋して紹介するね。

(基本方針)

第三条 環境大臣は、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

三 処分を行う廃棄物の数量に占める再資源化を実施すべき量の割合に関する目標

と言うことは、国が基本方針の中でリサイクル率などを示すから、それを参考にして廃棄物処分業者はそれぞれ目標を決めればよい、となる訳ですね。
まだ、「処分業者判断基準省令」の途中ですけど、今回はここで一旦まとめていただけますか。

今回のまとめです。
1 再資源高度化法が令和7年11月21日から本格施行されました。
2 省令は「本則省令」と「処分業者判断基準省令」があります。
3 再資源高度化法では「廃棄物処分業者」には、「処分を行う廃棄物の数量に占める再資源化を実施する量の割合に関する目標」の設定が求められています。
4 「廃棄物処分業者」とは「一般廃棄物、産業廃棄物の中間処理を行う人」です。排出事業者の「自ら処理」も含みますが、特別管理産業廃棄物は含みません。
5 この「処分業者の目標」は国の「基本方針」で示される「再資源化に関する目標」を参考に設定します。

と、いったところかな。
まぁ、「努めるものとする。」なので努力目標だから、罰則の規定はないけどね。

いくら罰則はないと言っても、全ての「廃棄物の中間処理を行う人」が対象なんでしょう。
これは業界にとってもおおごとですよね。じゃ、続きは次回で!