リヴァックスコラム

第46回 重要通知「許可事務通知」で復習 その9

長岡 文明氏

みなさん、こんにちは。
当メルマガは、読者の皆さんからの質問やトピックな話題があれば随時取り上げていますが、シリーズとして廃棄物処理法の基礎知識の復習を兼ねて、令和2年3月に発出された「許可事務通知」について見てきています。
今回はどういう話ですか?

前回は「第1 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可について」の「5 欠格要件」の「(4)刑罰に関する欠格要件」までみましたね。

今回は次の「5 欠格要件」の「(5)おそれ条項」を見ていこうか。

なにを「怖がる」んですか?

「おそれ」は「怖がる」じゃなくて、「懸念」「心配される」「良くない可能性がある」って意味だね。
廃棄物処理法違反の典型的なものとして不法投棄がある。不法投棄が起きてしまうと、原状回復には多大な労力、経費、時間がかかる。
だから、起きる前に未然に防ぎたい。ましてや、他社の廃棄物を扱う人物は「やった」人物だけでなく、「やる可能性が高い」人物はあらかじめ許可を与えないようにしよう、という規定だね。

でもそれって、まだやっていないことで権利を制限されちゃう訳ですよね。
基本的人権の侵害にならないんですか?

そうだね。だから、この「おそれ条項」はとても繊細で厳密なんですよ。
じゃ、とりあえず見てみようか。

まずはここまでとしようか。

条文の引用が多くってよくわからないです…。

産廃の条文は、それより先に登場する一廃の条文を引っ張ってきているからね。
大本の一般廃棄物の規定の「法第7条第5項第4号チ」を紹介しておこう。

チ その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者

なるほど。「不正又は不誠実な行為をするおそれ」のある人物ね。

次に「法第7条第5項第4号イからトまで及び法第14条第5項第2号ロからへ」とあるけど、これは前回見てきた「明確に欠格要件に該当する」人物。

「破産」、「許可取消」、「拘禁(旧規定では禁錮)以上の刑」、「環境法令で罰金以上の刑」ですかね。

ここまで「普通の言葉」で著すと「明確な欠格要件には該当しないけど、不正な行為をする可能性の高い人物とは」ということになるね。

それが、特段の事情がない限り、具体的には次のような者って示しているのね。

そうだね。じゃ、具体的な事例を見ていこう。
①は何回も取消を受けた人物。まぁ、これは「相当程度の蓋然性」が高いよね。

1度だけでも許可取消を受けたことがある人ってそうはいないのに、2度も3度も取り消された実績があるっていうのは、さすがに許可は出したくないわね。これはわかります。②は?

「法」というのは廃棄物処理法、「浄化槽法、令第4条の6各号に掲げる法令」というのは、いわゆる環境法令等。他の法令違反なら拘禁(旧規定では禁錮)以上で欠格になるけど、この法令違反はワンランク厳しくて「罰金以上の刑」で欠格になる法令だね。
この法令で「法令に基づく処分に違反し、公訴を提起され、又は逮捕、勾留その他の強制の処分を受けている者」。たとえば、不法投棄して捕まっているんだけど、まだ裁判の途中なので「刑は確定していない」なんていう人物。

司法の世界では「刑が確定するまでは推定無罪」と言うらしいけど、これもさすがに、そんな人物に許可出したら世間からは非難受けそうよね。これも理解は出来るわ。

次の③は⑥⑦と一緒に後でみることにして④⑤がこれ。

④の「法第7条第5項第4号ニに掲げる法令」というのは、「罰金以上の刑」で欠格要件になる法律のこと。

「環境法令」+「刑法の粗暴犯」等でしたね。

そう。こういった悪質な法令違反を繰り返している人物。
⑤は、収集運搬業なら特に収集運搬に関わってくる「道路交通法」、処分業なら処理施設建設に関わってくる「開発行為」について規制している法令である「森林法」「都市計画法」「農地法」という具体的な法令を挙げて、「行政庁の指導等が累積」している人物としているね。

まぁ、どんな法律でも何回も違反して罰せられていたり、処罰まで行かなくても「行政庁の指導等が累積」している人物には、廃棄物処理業の許可は出して欲しくないわね。

次は飛ばした③と合わせて見てみよう。

これらは全部、暴力団関係ね。暴力団員そのものは当然だけど、暴力団員を利用している人物や資金提供している人物も欠格者に該当するとしているのね。

まぁ、現実的には廃棄物処理法担当部局でここまで許可申請の時に探知できるか、となると相当難しいんだけど、警察の協力も得ながら、社会悪である暴力団はこの業界から排除しようという意気込みが感じられるでしょ。
これについては次の(6)で具体的な事務手続きも念入りに記載しているんだ。

念入りですね。

かつて、暴力団が怖くて的確な審査がなされなかったことや、担当者が身の危険を感じるような事案もあったことも踏まえて、法令でも通知でも念入りに規定したんだね。
暴力団は前にも書いたけど、廃棄物処理法担当部局では詳細は分からない。そのため「破産」や「拘禁(旧規定では禁錮)以上の刑」のようなオートマチックな審査はできないんだ。そのため「おそれ条項」にしているんだね。

「おそれ条項」は他の欠格要件とどう違うんですか?

オートマチックな取消は弁明の機会、すなわち、相手側からの言い訳だね、これを許可する行政は与えなくてもいいんだけど、「おそれ条項」による取消では必ず弁明の機会を与えなければならない。万一にも間違っては大問題になるので、不利益処分を被る当事者から直に弁明を聞くんだ。

へぇ、人の権限を制限するって大変なことなんですね。
じゃ、今回のところ、まとめてくださいな。

欠格要件の一つに「おそれ条項」がある。これは「明確な欠格要件には該当しないけど、不正な行為をする可能性の高い人物とは」と言うこと。何回も法令違反を繰り返している人物や暴力団員などが該当してくる。ただ、この審査は特に慎重に行われている。