リヴァックスコラム

第43回 重要通知「許可事務通知」で復習 その8

長岡 文明氏

みなさん、こんにちは。当メルマガは、読者の皆さんからの質問やトピックな話題があれば随時取り上げていますが、シリーズとして、廃棄物処理法の基礎知識の復習を兼ねて令和2年3月に発出された「許可事務通知」について見てきています。
今回はどういう話ですか?

前回は「第1 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可について」の
4 経理的基礎」をみましたね。今回は次の「5 欠格要件」を見ていこうか。

欠格要件って、今持ってる許可が取り消されるってやつよね。
「禁錮以上の刑に処せられた」とか「環境法令で罰金以上の刑に処せられた」とか「許可取り消しされて5年経っていない」とかでしょ。どれどれ・・・

そうだね。ただ、許可取消については、別の「行政処分指針(略称)」で詳細に通知しているので、ここではあくまでも許可申請があった時の審査の面を中心に書いているね。

許可申請時点での審査ってことだから、「取消」ではなく「不許可にしろ」って書いている訳ね。でも、更新許可の場合は取り消せとも書いてる。

そうだね。ここはちょっと複雑でテクニック的な要因が出てくる。
更新許可申請って、現在ある許可が有効な期間中に申請されるでしょ。

そうね。今の許可が切れちゃったら更新の意味が無くて、新しい許可が出るまで「無許可」の空白期間が発生しちゃうもの。令和7年10月に切れるんだったら、7月位には更新許可申請するんじゃない?

そうなると、現在の許可が有効な期間中に更新許可の審査をすることになり、その時に、たとえば一人の取締役の欠格が判明したとする。すると、その時点で現在の許可は「取り消さなくてはならない」状態になっていることになる。

その取締役が欠格者になった時点で、本来は法人も欠格になっているってことね。
でも、許可権限者がそれに気がつかないってあるの?

これはよくあるね。廃棄物処理法そのものに違反した、とか、大事件を起こして新聞沙汰になった、とか言うんだったらたいていは判るんだけど、他法令の禁錮刑、しかも執行猶予がついたりすると探知できないことは多い。
許可業者の取締役全員を廃棄物処理法の担当者が記憶している訳じゃないから、道路交通法違反とかで禁錮刑になったとしても把握のしようが無い。でも、新規はもちろん更新許可申請が提出されると関係機関に照会するから、役員一人一人の欠格が判明するんだ。

その結果、実は3年前から欠格者だった、とか判る訳ね。

業界紙にも取消の事案が掲載されるので調べてみると、新しい取締役を選任して登記したところ、その人物が欠格者で会社の許可が取り消されたなんて、お粗末な事案もあったようだよ。

新しい取締役を選任するときは十分に「身体検査」が必要なのね。
ところで、話は戻って、「更新許可の場合は取り消せ」と書いているのはなぜ?

10年ほど前の法律改正で更新許可申請がなされて、その審査が手間取ってしまって許可期限を過ぎてしまったときは、更新許可が出るまでは以前の許可は有効とするという運用になっているのは知ってる?

令和7年10月10日に期限が来る時に、8月中に更新申請したのに10月11日になっても許可か不許可かまだ決定していないって時ね。

そう。そのケースで更新許可が10月25日に出されたとしたら、10月11日から24日までは「無許可」ではなく、10日までの許可が有効とする運用だね。
このケースで無事に更新許可になればいいんだけど、たとえば、さっきの話のように取締役の禁錮以上の刑が判明して更新許可申請は「不許可」になるとする。すると、それまでの許可は既に10月10日に期限は切れているから「なにも、取り消ししなくてもいいんじゃないか」「許可が切れているんだから取消できないんじゃないか」という思いも出てくるかもしれない。でも、そんなケースでもそれまでの許可はちゃんと「取消」処分しなさいってことだね。

「期限が来て許可が終了」してしまうのと「取消」になるのではなにか違ってくるの?

これも「欠格要件」の一つになるね。
平成23年の改正で複雑になっているので詳細は別の機会にするけど「許可を取り消されて5年経たない者(会社)は欠格者」っていうのもあるでしょ。許可期限到来で失効したのなら、欠格ではないので翌日にも改めて許可申請ができる。
しかし、取り消されたのであれば欠格になり5年間許可は取れない。
(なお、取消の事由によっては欠格にならず申請できるケースもあります。)

これが「更新許可の場合においては、速やかに従前の許可の取消しを行うこと。法第14条第3項若しくは第8項又は第14条の4第3項若しくは第8項の規定に基づき許可の有効期間の満了後にその効力が継続する場合も、同様に従前の許可を取り消すこと。」って部分なのね。よく判らないけど、判ったことにして次に進みましょ。
「欠格要件該当の有無について関係行政機関に照会する場合にあっては、(6)に関する場合を除き、法第23条の5の規定に基づき行うものであること。 」っていうのはどういうことですか?

まず、「(6)に関する場合を除き」とあるけど、これは暴力団員かどうかということなんだけど、その人物が「正式な」暴力団員かどうかは、それを認定している警察以外は判らない。

最近は「半グレ」とかいう訳のわからない人物もいるものね。

暴力団は「社会の敵」として、いろんなところで制限を受ける。これはある意味、基本的人権の侵害にも繋がりかねない。そこで、暴力団の認定、暴力団員の認定はとても慎重らしい。

「親分から杯を貰った」とか「破門の回状が廻された」とかヤクザ映画では見たことあるけど…。

「代紋の着いた名刺を使った」とか「代紋を染めた提灯をトラックの前に付けていた」とか、相当、詳細に調査、捜査はやってのことらしいんだけど、真実はマル秘。結果の、「その人物は暴力団員である」とか「団員ではない」とかしか通知されない。

そうなるとこの照会、回答は認定している警察さんしか出来ないわね。
他の照会はどうなの?

たいていは役員個々人の本籍地の市町村かな。これについては次の(2)から(4)に詳しく記載している。許可申請する人とそれを審査する行政担当者以外はあまり関係ないと思うけど、「こんな照会、審査しているんだ」と知っていただくために掲載しておきますか。

そうね。関係ないなぁと思う読者の方は飛ばしていいのよ。

へぇ、欠格要件の審査って慎重にやってるんだね。

(2)は以前は「禁治産者」、「被後見人」等としてきた時代もあったんだけど、人権意識が高まり、他の分野でも見直しが行われてきていて、現在は「心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者」という表現、概念に変わってきている。
(3)は取消事由では最も多い「破産」。これは前回取り上げた「経理的基礎」がなくなる典型的な状態。
(4)「法令違反」。個人、法人、外国人それぞれ所管しているところが違うんだね。
次の「おそれ条項」については長くなるので、今回はこの辺までとしようか。

じゃあ今回のまとめ、お願いします。

「欠格要件」というのは、「許可を取る資格がない」ということです。
具体的な欠格要件として、「心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者」、「破産」、「許可取消」、「禁錮以上の刑」、「環境法令で罰金以上の刑」等があります。
更新許可申請時に欠格要件が判明した場合は、現在の許可は「取消」に、申請中の更新許可は「不許可」になります。
廃棄物処理法担当部局では申請者が欠格要件に該当しているかは判らないので、それぞれの部局に照会をし、その回答で審査に当たっています。