リヴァックスコラム

第42回 重要通知「許可事務通知」で復習 その7

長岡 文明氏

みなさん、こんにちは。
当メルマガは、読者の皆さんからの質問やトピックな話題があれば随時取り上げていますが、シリーズとして廃棄物処理法の基礎知識の復習を兼ねて、令和2年3月に発出された「許可事務通知」について見てきています。今回はどういう話ですか?

前回は「第1 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業の許可について」の「3 施設に係る基準」をみましたね。今回は次の「4 経理的基礎」を見ていこうか。

どれどれ、「4 経理的基礎」・・・

いろんな書類が登場したわね。私も会社でちょっとだけ経理のお手伝いをしてるんだけど、これって株主総会の時に準備する書類よね。
どうしてこんな書類まで許可申請の時の審査の対象にしてるの?

「貧すれば鈍する」って諺(ことわざ)、知ってるかな。「貧乏になると性質や頭の働きまでも鈍くなる。また、貧乏するとどんな人でもさもしい心をもつようになる。」って意味なんだけど、この「経理的基礎」というのは、まさにそういうところから来ているんだ。
昭和の終わりから平成の中頃まで、全国で不法投棄や不適正処理が相次いだ。その原因として大きいのが、経営が上手く行かなくなって、夜逃げしたパターン。経営が順調なうちは適正に処理していた。ところが、借金が嵩んでくると排出事業者からは処理料金をいただいているのに処分業者までは運ばずに不法投棄をやらかす。中間処理業者も処理施設を稼働させなくなり施設の前に大量の未処理産廃が積み重なる。

なるほど。もし、資金に余裕があるなら多少保管量が増えたとしても、最悪、再委託したり、新たな搬入をストップするなりして対応は可能だけど、金が無いとそれも出来ずに自転車操業になり、いずれは大量保管、不法投棄に繋がるってことね。

そこで「健全経営」も処理業許可審査の対象にしたんだ。
ただ、この続きは「個人経営の時」とか「資金の調達」とか続くので、ここは飛ばして、こういった書類から、どのように審査するのかを見てみよう。

どれどれ。まずは「利益が計上できている」は判るわ~。儲かっているってことよね。次の「自己資本比率10%以上」というのは?

「資本」は借りている金も「資本」になるんだけど、これは当然、いずれは返済しなければならない金。自己資本はそもそも自分の金なので返済する必要が無い。したがって、自己資本比率が高い場合は、健全性が高いと言えるようだね。
これは、次の具体的な「留意点」の④にも登場するので、順次見てみようか。

①と②は、ほんとはあまり儲かっていないのに、儲かっているように見せかけるために、役員の給料を低くして利益を大きく見せたり、本来、必要な施設の維持管理費等を少なくしていたり、計上していなかったりしていないかを見ておけってこと。
③と④は、今度は逆にあまりに紋切り型に「自己資本比率10%未満だから許可しない」とならないような対応も必要ってことだね。

どれどれ。③は過去はマイナスでも最近は右肩上がりに伸びているって状態ね。④は主文と矛盾してるわね。主文では明確に「10%を超えていること」としておきながら、ここでは「10%を超えていない場合であっても」としている。
これじゃ、主文では明確に「10%を超えていること」とした意味がないんじゃない?

そうとばかりも言えないんだよ。まぁ、審査する方も「ランク」があってさ、「10%以上」なら、この要因では他の事項はあまり審査しなくとも大丈夫。でも、「10%未満」なら、次のステップの審査をするってとこかな。

なるほど。で、次のステップというのが「債務超過の状態」ではないかと、「持続的な経営の見込み又は経営の改善の見込み」があるかの審査になる訳ね。

そうだね。「少なくとも債務超過の状態でなく、かつ、・・・」だから、「債務超過」は、これはもう原則として許可はしない。

それは明解だけど「持続的な経営の見込み又は経営の改善の見込み」があるかの審査は難しいんじゃない?

そうだね。それで、次に繋がる訳だ。

⑤、⑥は設備投資の話なんかも出てきますね。将来を見据えて設備投資すれば、当然金は掛かるから自己資本比率は下がってくるわよね。
加えて他にもいろんな要素があることも書いているのね。でもこんないろんなこと、経営の専門的なことまで廃棄物処理業の許可を担当する担当者が審査できるんですか?スーパーマンじゃないんだから…。

そこで、⑧が登場する訳さ。経理的基礎を理由に不許可にするときは、廃棄物処理法担当部局だけでなく、経済部局の見解も聞いておきなさいとか、中小企業診断士の診断も参考にしなさいって書いてあるんだ。

なるほど。ここまでやれば万全ね。でも、「中小企業診断士の診断書」って申請者が診断士の先生に依頼して書いてもらうんですよね?診断士の先生も、お金出してくれる依頼主に都合の悪いことなんて書くかなぁ。

私も「これは見込み有りません。ダメです。」って診断書が添付されてきたっていうのは見たことがない。まぁ、そんな診断書を添付してきたら不許可になるのは明白だからね。微妙なレベルはあるけど。でも、中小企業診断士も「大丈夫」って診断した業者が1~2年の間に倒産した、なんてなると中小企業診断士としての信頼性も落ちるから、そんな極端に「盛った」診断書は出さないけどね。
審査する側もどうしても必要と判断すれば、行政が経費を出して診断して貰う場合もある。でもまぁ、そこまでやるケースはまれだね。

⑨もあるようだけど、これは後で出てくる「優良産廃処理業者」のことなので、改めてその時に解説して貰うことにしましょうか。じゃ、今回のまとめてくださいな。

産廃処理業の許可では「経理的基礎」も審査の対象。原則的には「自己資本比率10%以上」が求められる。
10%未満の時でも種々の要因を検討して許可される場合もある。
悩ましいケースでは経理、経営の専門家である中小企業診断士の診断も参考にするときもある。